資生堂は、スキンケア領域をコア事業とする “スキンビューティーカンパニー”への転換を加速している。今年に入りヘアケア「ツバキ(TSUBAKI)」などを扱う日用品事業や「ドルチェ&ガッバーナ ビューティ(DOLCE&GABBANA BEAUTY)」「ベアミネラル」などのメイクブランドの売却が続き、抜本的な経営改革が進む。
同社は目標に掲げていた2020年に売上高1兆円を3年前倒しで達成し、右肩上がりで成長してきた。しかしコロナ禍による打撃は多くの企業同様に大きく、舵取り変更を余儀なくされた。これまでのビューティに関連する全方位でのアプローチから、プレステージのスキンビューティ領域を中核事業とする中期計画「WIN2023」を策定。20年上期(1〜6月期)決算発表の際に、自社開発やオープンイノベーション、戦略的M&Aを推進し、ジャパニーズビューティや、クリーンやナチュラル、メンタル・ウエルネスカテゴリーなどを含むスキンビューティ領域を強化することを示した。
それを体現した一例が、20年8月に美容機器メーカーのヤーマンと設立した合弁会社エフェクティムだ。今年3月からエイジングケアブランド「エフェクティム(EFFECTIM )」の本格展開を開始。美容機器と化粧品を融合した製品を打ち出し、現在日本と中国をメイン市場としてブランド価値を高めている。また7月にはデジタル領域で多くの支援実績を持つアクセンチュアとデジタルマーケティング業務とデジタル・IT関連業務を提供する合弁会社、資生堂インタラクティブビューティーを設立。顧客一人一人に合わせたパーソナライズされたサービスを生涯にわたりデジタル、リアル問わずにシームレスに提供するのが狙いだ。
10月1日には米国発のD2Cスキンケアブランド「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」の日本展開をスタート。同ブランドは19年11月に資生堂が8億4500万ドル(約895億円)で買収したクリーンビューティをけん引するブランドで、三越伊勢丹のコスメEC「ミーコ(MEECO)」などで販売するという。
ブランドのポートフォリオの見直しも推進。1月にヘアケアブランド「ツバキ」やスキンケアブランド「専科(SENKA)」などをそろえる日用品事業を1600億円で売却することを発表した。7月に資生堂や投資ファンドのCVCキャピタルパートナーズが出資した新会社ファイントゥデイ資生堂が始動している。
4月には「ドルチェ&ガッバーナ ビューティ(DOLCE&GABBANA BEAUTY)」とのフランスを除く市場で、ライセンス契約を12月末で終了することを発表。米国市場を中心に低迷が続き、今春から売却の噂が流れていた「ベアミネラル(BAREMINERALS)」「ローラ メルシエ(LAURA MERCIER)」「バクサム(BUXOM)」は、8月に米投資ファンドのアドベント・インターナショナルに7億ドル(約770億円)で売却した。
魚谷雅彦資生堂社長兼CEO が20年上期決算発表時に「23年に収益の完全復活を目指し、不退転の決意で臨む」と語っていたが、事業構造の改革の成果が表れはじめ21年上期決算は売上高が21.5%増、収益も改善する。通期では売上高1兆円を再び達成する見込みで、“スキンビューティカンパニー”として成長を遂げていく。