マスク着用に伴い、汗蒸れや肌荒れに悩む人が増えている。これまでも汗で化粧が崩れるなどマイナス要素が多かったが、実は汗をかくことはメリットも多い。今回は「汗」に注目して、コロナ禍のスキンケアを再思考する。
秋葉原スキンクリニック院長であり日本皮膚科学会認定皮膚科専門医の堀内祐紀氏は「去年の緊急事態宣言以降、皮膚科を受診する方が増えている。肌のバリア機能が落ちた状態に、マスクによる摩擦が加わり痒み、ただれ、ニキビに悩む人が多い。マスクによる皮膚炎の主な原因の一つは、蒸れ。マスク内の湿度が上がると角質がふやける。これは、お風呂に長く入るとかかとの角質など摩擦で除去しやすくなるのと同じ。皮膚がふやけた状態は些細なことがすべて刺激になり、トラブルにつながる」と話す。
医療用医薬品の研究開発、製造販売を行うマルホの調査によると、実に82%の女性が汗をかくのは「嫌だ」と否定的な回答をしている。主に、ベタベタする、ニオイが気になる、化粧が崩れるといった理由が挙げられる(実施期間:2021年5月、敏感肌女性5800人対象。汗に関する意識調査より)。
汗をかくことはポジティブなこと
堀内医師は「汗をかくことは、肌にとても良いことだ。汗をかくことをネガティブに感じている人も多いようだが、皮膚科医としては汗をポジティブにとらえている。汗には、アミノ酸、尿素、乳酸など天然保湿因子が含まれている。皮膚のバリア機能サポートに関与していて、汗をかくことで肌の潤いを保つというメリットもある。例えるならば、自らを潤す化粧水を身にまとっているような状態だ。また、あまり知られていないが汗には皮膚表面の悪い菌を除菌する作用もある。汗は匂いの原因と思われているが逆で、しっかりと汗をかくことでニオイの元を流し落とす作用もある」という。汗をかいたあとのアフターケアも重要だ。
「夏場は寝ている間もかなり汗をかく。汗をかいて放置しておくと痒みになる場合もあるので、朝にシャワーで軽く流すといい。外出先でシャワーを浴びられないときは水で湿らせたタオルやハンカチで拭き取るといい。汗をかいて肌がチクチク、ムズムズするのは、肌のバリア機能が下がっている証拠だ。その場合は特に汗をきれいに流し落とす、拭き取ることに注力してほしい」。
マスク内の肌をガーゼタオルで拭き取る
では、外出時、マスクの中に汗をかいたときはどうだろう。マスクの中をハンカチで拭うだけで良いのだろうか?「可能であれば、少し水で流してあげると、雑菌が取れやすい。水で流せないなら柔らかいガーゼタオルで拭き取りを。ゴシゴシ拭くのは、肌への摩擦になってしまうので良くない」。
また、冷房のきいた部屋で過ごし汗をかかない習慣を続けるとベタベタした質の悪い汗をかきやすいという。一年中、サラサラした「いい汗」をかくためには、汗を分泌する汗腺(かんせん)を鍛えることも大切。「いい汗を出すために、腹筋、背筋、尻周りの筋肉を鍛えるといい。筋トレほどハードなトレーニングでなくとも、姿勢を正しくするだけでも筋肉は鍛えられ代謝は良くなる。他には、水分補給。水分が体を巡ることがとても重要なので、喉が渇く前の水分補給を心がけて欲しい。また、毎日10分ほどでも入浴する習慣をつけるといい」と話す。「肌は体の一部。美しい肌をキープしたいのなら、体の内側を健康に保つことを意識して欲しい」。
肌をこすらず洗顔とスキンケアを
マルホで商品企画開発を担当する化粧品事業部の遠藤直子氏は「べたつきやかゆみを引き起こすこともあるので、汗と上手に付き合う必要がある」と話す。さらに「敏感肌も大人ニキビも、実は肌トラブルの原因は同じ。肌のバリア&保湿機能が低下し、肌の潤いレベルが低下する。結果ターンオーバーが乱れて、バリア&保湿機能が低下するという負のスパイラルに陥ってしまっている場合が多い」ともいう。
同社が展開する敏感肌向けスキンケアブランド「イニクス(INIKS)」では、洗浄、保湿、UVケアのシンプルなスキンケアを提案している。特に“クリーミィ フォーム”(100g、税込2420円)は泡立てネットを使わずに、弾力のあるモコモコ泡が作れると評判でリピーターも多い。「洗顔で心がけてほしいのは手指ではなく、たっぷりの泡を肌に転がすようにして洗うこと。髪の生え際、フェイスラインには洗い残りが多いので、洗い流しでは特に気をつけて欲しい。洗顔後もタオルでゴシゴシ拭くのではなく、肌にやさしく当てて水を吸い取るイメージで行うといい。保湿に際しては、水分と油分の両方を補う保湿ケアが効果的。肌になじませた後、優しくハンドプレスを。手のひらの温もりにより化粧品が肌になじみやすくなる」とアドバイスする。