ビジネス
連載 齊藤孝浩の業界のミカタ

これからのデジタル投資をどう考えるべきか?【齊藤孝浩のファッション業界のミカタVol.28】

有料会員限定記事

 発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回はグローバル大手企業のEC化率と投資先のシフトについて解説します。(この記事は「WWDJAPAN」2021年8月16日号からの抜粋です)

 コロナ禍でECでの購買が増えましたので、グローバル大手企業のEC化率の変化を表にまとめてみました。

 もともとEC化率が高く、半分がクリック&コレクト(店頭受け取り)だったネクストの比率が49%から65%に伸びている一方で、プライマーク(PRIMARK)はゼロ。すごいですね。改めて確認しましたが、いまだに通販をやっていません。以前から「うちはやらない」と幹部が宣言していましたが、コロナ禍で大打撃を受けてもやはりやらないんです。理由はしまむらと一緒になるのですが、単価が安い商品を扱っていると、採算が取りづらいからです。詳細は2020年9月14日号に詳しいですが、運賃を含めた出荷1件あたりの最低限のコストがそれなりの金額になるので、ある程度の出荷1件当たりの粗利額がないと利益が全く残らない、下手をすれば赤字ということにもなり得ます。そして、お客さまも送料を払ってまで単価が安い商品を通販で買いたいとは思わないですよね。ですから、低価格のところは無理に宅配を前提とした通販はやらない方がいいんです。しまむらもECを始めたものの、すごく微々たる数字に甘んじています。そしてこの十数億円の金額ですら9割が店舗受け取りです。いかに低単価のものが宅配に乗りにくいかということだと思います。

 インディテックス(INDITEX)とH&M、ギャップ(GAP)、アメリカンイーグル(AMERICAN EAGLE)などは伸びています。例えばインディテックスであれば、EC化率が32%になりましたが、オンライン売上高が前年比77%増で、ストアの方は同44%減。だからこういう高い数字になっているわけです。H&Mも同様です。店舗は7掛け。だからEC化率が28%にまで上がっています。ギャップも一緒で、店舗は6掛け。オンライン売上高が同54%増だからEC化率が45%になっています。店舗の売上高が元に戻ったら、おのずとEC化率は下がることになるでしょう。コロナ禍で一気に加速しましたが、基本的に今後もEC化率は上がっていく傾向にあると考えています。

この続きを読むには…
残り2161⽂字, 画像3枚
この記事は、有料会員限定記事です。
紙版を定期購読中の方も閲覧することができます。
定期購読についてはこちらからご確認ください。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

リーダーたちに聞く「最強のファッション ✕ DX」

「WWDJAPAN」11月18日号の特集は、毎年恒例の「DX特集」です。今回はDXの先進企業&キーパーソンたちに「リテール」「サプライチェーン」「AI」そして「中国」の4つのテーマで迫ります。「シーイン」「TEMU」などメガ越境EC企業の台頭する一方、1992年には世界一だった日本企業の競争力は直近では38位にまで後退。その理由は生産性の低さです。DXは多くの日本企業の経営者にとって待ったなしの課…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。