発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回はグローバル大手企業のEC化率と投資先のシフトについて解説します。(この記事は「WWDJAPAN」2021年8月16日号からの抜粋です)
コロナ禍でECでの購買が増えましたので、グローバル大手企業のEC化率の変化を表にまとめてみました。
もともとEC化率が高く、半分がクリック&コレクト(店頭受け取り)だったネクストの比率が49%から65%に伸びている一方で、プライマーク(PRIMARK)はゼロ。すごいですね。改めて確認しましたが、いまだに通販をやっていません。以前から「うちはやらない」と幹部が宣言していましたが、コロナ禍で大打撃を受けてもやはりやらないんです。理由はしまむらと一緒になるのですが、単価が安い商品を扱っていると、採算が取りづらいからです。詳細は2020年9月14日号に詳しいですが、運賃を含めた出荷1件あたりの最低限のコストがそれなりの金額になるので、ある程度の出荷1件当たりの粗利額がないと利益が全く残らない、下手をすれば赤字ということにもなり得ます。そして、お客さまも送料を払ってまで単価が安い商品を通販で買いたいとは思わないですよね。ですから、低価格のところは無理に宅配を前提とした通販はやらない方がいいんです。しまむらもECを始めたものの、すごく微々たる数字に甘んじています。そしてこの十数億円の金額ですら9割が店舗受け取りです。いかに低単価のものが宅配に乗りにくいかということだと思います。
インディテックス(INDITEX)とH&M、ギャップ(GAP)、アメリカンイーグル(AMERICAN EAGLE)などは伸びています。例えばインディテックスであれば、EC化率が32%になりましたが、オンライン売上高が前年比77%増で、ストアの方は同44%減。だからこういう高い数字になっているわけです。H&Mも同様です。店舗は7掛け。だからEC化率が28%にまで上がっています。ギャップも一緒で、店舗は6掛け。オンライン売上高が同54%増だからEC化率が45%になっています。店舗の売上高が元に戻ったら、おのずとEC化率は下がることになるでしょう。コロナ禍で一気に加速しましたが、基本的に今後もEC化率は上がっていく傾向にあると考えています。
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