BiSやBiSHのアイドルプロデューサーの渡辺淳之介が手掛ける「ネグレクト アダルト ペイシェンツ(NEGLECT ADULT PATiENTS以下、ネグレクト)」は、東京・渋谷ヒカリエで2022年春夏のファッションショーを行った。ステージ中央には、天井に向けて照らされたグリーンのスポットライトに、巨大スピーカーの数々が積み上げられていた。今季も「ネグレクト」らしいエンターテインメント性の強い演出を予感させた。
音楽界の巨匠たちをKISS風にアレンジ
ファーストルックは、渡辺デザイナー率いるWACK所属グループのASPから、モグ・ライアンがジョーカー風メイクで登場。ブランドロゴ付きのパーカとボーダーのハイソックスというカジュアルなスタイルだ。ほかにもBiSHのアユニ・Dとリンリンもモデルとして登場した。渡辺デザイナーは、「今シーズンは“ベーシック コレクション(BASiC COLLECTiON)”をテーマに、“自分が本来作りたかったであろう洋服を作りたかった”」と話す。その言葉通り、自身のルーツである音楽の要素をコレクションにたっぷり盛り込んだ。ブリティッシュパンク風のチェックのアイテムや、グランジ風のラフなスタイルなどが連続する中、特に目を引いたのが音楽家のバッハやモーツァルト、ショパンらをKISS風にアレンジしたグラフィックで、思わず笑みがこぼれた。「自分の中のルーツであるクラシック音楽に影響を受けて、音楽家のバンドTがあればという発想から製作に至った」。それぞれの名を“バッ葉(バッハ)”“猛津 アルト(モーツァルト)”“初版(ショパン)”と漢字で表現して、「ネグレクト」流に巨匠たちにオマージュを捧げた。
ナイン・インチ・ネイルズのMVから着想
ブランドロゴを配したアイテムの数々も際立った。ロックバンドのナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)のロゴ風に仕上げた“NAP”の文字がまばらに付いたスエットやTシャツをはじめ、定番のトラックスーツはレッドとネイビーの新色で登場。「時代的にロゴが入っていた方が売れるじゃないですか?(笑)。何を着ているのかが誰でもわかるように意識してロゴは付けた」。
「ネグレクト」はクリエイションだけでなく、エンタメ性の強い演出も特徴だ。「演出を考える際、ロックバンドのナイン・インチ・ネイルズのMVが頭の中でずっと流れていた。当初は本物の牢獄や檻を作ることも考えたけど、グリーンのスポットライトを檻に見立てて表現しようと決めた。本当は檻の中でモデルを歩かせたかったが、演出家から『さすがに服が見えなくなってしまう』ということもあり断念した」。またブランドおなじみの“麺食い“は、今回もBiSHのアユニ・Dがカップ焼きそばを食べる演出だった。「原点回帰でカップ焼きそばにした」という。
「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」でリアルのショーにこだわった理由については、「音楽のライブ配信や無観客ショーを行う中で、やっぱりリアルには勝てないという思いが強かった。とにかくお客さんを入れて見てもらいたかった」と話した。