インスタグラムで12万以上のフォロワーを抱える小松友結子(@yuyukmt)のアパレルブランド「ビビィ(BIBIY.)」が今、SNS世代の女性を中心に注目を集めている。運営はブランドマネジメントなどを行うグルグルで、2019年7月にインスタグラムとEC専業でスタートした。アイテムはブラウスからスカート、バッグやアクセサリーなどトータルでそろえ、価格帯はドレス約7000円〜1万1000円、アウター1万2000円〜2万円と値ごろで、新商品を発売すれば即完売することも多い。20年に伊勢丹新宿本店とうめだ阪急本店でポップアップを開くと、それぞれ1週間前後の期間で1000万円を超える売り上げを記録した。「ファッションについて素人の私が作っているブランドだからこそ、共感を得ている」と語る彼女の言葉から、人気の秘訣を探る。
ルールは気にせず
ファッションを楽しむ
“フェミニンだけれど強い女性”
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ブランド名の「ビビィ」は小松による造語だ。「同じ文字が並ぶ響きがクセになる感じがした。顧客に『ビビィ』にやみつきになってほしいという思いとも重なった」。コンセプトは、“フェミニンだけれど強い女性”。服はフェミニンで甘い雰囲気でも、着る人は凜とした強さがあるという、ギャップのある女性像を目指す。日常に取り入れやすいフェミニンな要素を盛り込んだ、“ストリート・フェミニン”をベースにデザインしている。
またもう一つ大事にしているメッセージが、“Girls just wanted to have fun(私たちはただ楽しみたいだけである)”だ。着る服を誰かに左右されるのではなく、その日の気分で選んだ服をそのままの気持ちで着れば、自分だけのコーディネートになるという考えだ。「好きなものを好きなように着てファッションを楽しんでほしい」というメッセージには多くのファンが共感し、この言葉が刻まれたトートバッグやTシャツなどは、ブランドのアイコンアイテムとなっている。
現在フォロワー数7万を超える「ビビィ」公式インスタグラムも小松自身が運営している。モードな雰囲気と、フェミニンなスタイルがマッチした世界観が人気だ。ビジュアルの撮影方法にも“フェミニンだけれど強い女性”を表現するこだわりがある。フェミニンな服を甘いムードで撮影するのではなく、モデルの表情やポージング、写真の構図などでリアルな感情が伝わることを意識し、フォロワーの共感を集める。
2021-22年秋冬の注目は、
生地作りから挑戦した
キルティングアイテム
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ブランドスタート当初からシーズンテーマは設けず、小松自身がその時々の感性に正直に向き合い、デザインで表現し続けている。21-22年秋冬シーズンの注目は、キルティング素材にドットの刺しゅうを施したアイテムだ。生地作りからチャレンジしたアイテムで、ペプラム、スカート、ショルダーバッグの3型をそろえる。ペプラムは裾の長さを前後で微妙に変化させて大人っぽさを意識するなど、初めて複数の女性像をイメージしながらデザインしたといい、「幅広い年齢層に着てもらえると思う」と自信を見せた。
ほかにも、生地の切り替えで丸みを出し、着やせ効果も意識したファーコートや、ネックラインをフリル風に仕立てたシャギーニット、女性らしいウエストラインを描くビンテージライクなフラワーカーディガン、高い伸縮性にこだわったボーダーニット、小松が甘い気分だったときに作ったフリルのコットンブラウス、リボンでサイズを調整できるエコバッグなど、豊富なバリエーションのアイテムがラインアップする。
“見ていて飽きない点が、
ファン獲得につながっている”
WWD:ブランドのターゲットは?
小松友結子(以下、小松):ブランドとしてターゲットは設けていないが、顧客は20代前半の女性が多い。もう少し上の世代を意識しようと考えたこともあるが、私たちが無理して背伸びしていては、「ビビィ」の良さは伝わらないと気づいた。私たちが提案しているアイテムは、年代を問わず多くの方がかわいいと思ってくれている。長期的な視点で、伝え方や発信する場を選びながら、1着ずつ丁寧に作っている気持ちを届けていけば、より多くの人を引き付けられるはず。
WWD:新商品が即完売することも多いが、ブランドの強みをどう分析する?
小松:見ていて飽きない点が、ファン獲得につながっているように感じる。“ストリート・フェミニン”をベースにしているが、基本はそのアイテムを好きなように着てほしいというスタンス。ビジュアルの撮影も自由で、柄オン柄のスタイリングや、シンプルな空間で服を映えさせるなど、アイテムの個性に合わせているからかわいいポイントが毎回違う。また私自身ファッションは好きだけれど、専門的に学んだわけではないので、昔のトレンドについて詳しくないのも大きい。過去の流行に引っ張られることなく、ただ素直に「こういうものがあったらいいな」という感覚でもの作りができている。もしかすると、流行を意識しなかった結果、それが巡り巡ってトレンドの先取りになるというチャンスもあるかもしれない。それに「ビビィ」を好むフォロワーは、私にとって同じ趣味や好みを持った友達のような感覚。そんな距離感の近い友達がブランドを立ち上げたから応援しようという気持ちや、ファッションの素人がもがきながら作ったものだからこそ、たくさんの人が共感できる部分があるのかもしれない。
WWD:デザインのインスピレーション源は?
小松:私の場合はテーマやコンセプトを決めて作るというよりは、「このアイテムは、こんなスタイリングで、こういう場所で着たい。持っている服とどう合わせるか」といったアイデアがクリアに浮かび、それを具現化している。
WWD:値ごろな価格帯にこだわる理由は?
小松:大量生産ではないので価格を抑えるのは正直難しいが、良質なアイテムを手に取りやすい価格で購入できる場を設けたいという思いがあった。この価格帯を実現するために、デザインにおける優先順位を決め、守りたい部分と妥協する部分を分けてどんどん削り落として作っている。最初は削り落とすことに葛藤もあったが、立ち上げから2年がたって、広い視点で自分のブランドを見られるようになった。妥協しても100点満点以上のものを作れている手応えがあるのは、この2年間での成長だと思う。
WWD:今後の展望は?
小松:海外アイテムもセレクトするプラットフォームになりたい。「ビビィ」を通じてファッションがさらに好きになった顧客の、次のステージがそこだと考えている。私自身も海外ブランドに興味はあるものの、海外サイトは全て英語表記で分かりづらかったり、送料で断念してしまったりすることが多かった。「ビビィ」は海外のアイテムとも相性がいいし、自社サイトでそれらを扱うことで、顧客のファッションの幅を広げる役割を担いたい。それがブランドの成長にもつながると信じている。
日程:10月13日〜19日
時間:10:00〜20:00
場所:阪急うめだ本店3階
住所:大阪府大阪市北区角田町8-7
日程:11月3日〜9日
時間:10:00〜20:00
場所:伊勢丹新宿店本館2階 TOKYOクローゼット内
住所:東京都新宿区新宿3丁目14-1