ファッション

「フォトコピュー」竹内美彩の仕事と素材へのこだわり

 「フォトコピュー(PHOTOCOPIEU)」は、立体的なパターンと、天然素材の優しい素材使いが魅力のウィメンズブランドだ。次のシーズンの制作に奮闘するデザイナーの竹内美彩のアトリエを訪れて、服作りや素材選びのこだわりなどを聞いた。

モノに溢れている世の中で
唯一無二の服を生み出したい

 ファッションの世界に憧れ、小学生の頃から「デザイナーになりたい」と文集に書いていたという竹内。専門学校を卒業後は大手アパレル企業に就職し、企画デザイナーとして勤務した。「メーカーでは一通りの基礎を学ぶことができた。ただ大量生産を前提にしたモノ作りに矛盾を感じることがあり、今は急いで作るのではなく、1着ずつしっかり時間をかけて作りたいと思うようになった」という。

 4年間の社会人経験を経てパリへ留学。「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」などパリコレに参加する一流メゾンでも下積みをした。ブランドのルーツは、パリで働いていたときに自分で着るためのドレスを仕立てたことがきっかけだった。「日本では男性社会を感じることが多かったが、フランスの女性たちは強く、男性とも対等に働いている印象だった。日本人女性は小柄で幼く見えがち。私も強くありたいとワークウエアをベースにした黒いドレスを自作した」と振り返る。そうした背景で服作りでは、自身がフィッティングモデルとなることが多い。制作段階の服を試着しながら、調整していく。

 竹内がモノ作りをする上で意識していることは、「世の中にない、唯一無二のものを作る」こと。「ものが溢れている世の中で、同じものは必要とされない。私は独自のものを生み出さなければ存在する価値がないと思う」と断言する。

天然素材のやさしさを
引き立てる
相性のよいベンベルグ

 竹内には、天然素材へのこだわりがある。肌触りのよいシルクやコットンなどがメインにしながらも、旭化成が世界で唯一生産するキュプラ繊維「ベンベルグ(Bemberg)」も愛用している。「ベンベルグ」は綿糸としては使用されないコットンの種の周りに生える産毛(コットンリンター)を独自の技術で精製・溶解し生まれ変わらせた再生セルロース繊維。ジャカード織りのオリジナルファブリックや裏地としても使用するが、特に「フォトコピュー」ではスカートやワンピースの裾のフィニッシング始末として使用するパイピングとしても欠かせない存在になっている。「しなやかで薄く、 どの素材よりもシルクになじみやすいのも気に入っている」と竹内。

 また「ベンベルグ」は複数の国際的なサステナビリティの認証などを取得しており、注目されている。「日本にはたくさんの素晴らしい素材があふれている。『フォトコピュー』でも上質な素材を使いながら、長く着てもらえるような日常着を意識している」という。

洋服を通して
女性の社会進出を後押し

 竹内は「着る人の内面を表現したい」という思いを洋服に込めている。「小柄で、童顔でも芯があり、強い精神性を持つ女性ための服がないと思った。その中身と見た目のギャップがある人に向けて服をお届けしたい」と。また「日本とパリで働いたことで、女性の社会的な立場の格差に気が付くことがあった。洋服を通して、少しでも女性の社会進出を後押しできるように発信していきたい」。

 さらに竹内は将来、財団を立ち上げて母子家庭で育った子どもや恵まれない環境にいる女の子たちを支援するという夢を持つ。「私自身も母子家庭で育ったことで、経済的な理由から選択肢が制限されていると感じることがあった。いつか財団を持つことでそのような環境にいる子たちを支援したい」と語った。

MOVIE DIRECTION:NORICHIKA INOUE
MOVIE & PHOTO:SHINJI YAGI
MOVIE PRODUCE:RYO MURAMATSU
TEXT:MAMI OSUGI
問い合わせ先
旭化成 パフォーマンスプロダクツ事業本部
ベンベルグ事業部 ベンベルグ第一営業部
06-7636-3360