デザイナーの岡﨑龍之祐は、1995年に広島に生まれた25歳。クリエイターの支援と育成のための奨学金制度「クマ財団」の4期生。今季は藝大在学時代から最新作までの23作を「000」コレクションと題して披露した。暗闇の中を囲うようにライトを配置したシンプルな会場に、人種や性別もバラバラのモデルたちが、有機的な形をした、巨大でカラフルなドレスをまとって次々に登場した。
衣服に込められた平和と祈り
岡﨑のルーツは、生まれ育った広島にある。平和教育を受けてきたことから、幼少期から平和についての考えや、祈りの行為に向き合い、その精神性に関心を持ってきたという。初期の作品である、広島に贈られる折り鶴の再生紙を織り上げてできたドレスが象徴している。
今季のショーで目立ったのは、左右対称で立体的な縄文土器をイメージした“JOMONJOMON”シリーズだ。自然の脅威を感じながら、自然の恩恵を願うという土器に込められた人々の思いからインスパイアされた。素材は、伸縮性のあるリブ素材の軽量ニット。ボーンを入れており、歩くたびに弾むように揺れ動く。花びらをまとうようなドレスなどは、自然崇拝から着想した“Nature’s Contours”シリーズ。植物や昆虫、動物などをカラフルな色使いで感じさせる。自由でプレイフルなクリエイションの裏にある、“祈り”を中心にしたスピリチュアルなテーマは、先の見えない混沌とした現在の状況下に響くものがあった。
デザインの可能性に挑戦する
未来を担うデザイナー
昨今はサステナブルであることが重要視され、“いかに環境にいい物作りができるのか”“売れるものだけを作る”ということに関心が集まっている。それは未来を考えると大事なことだが、個性とクリエイションが伴わなければそれこそが持続可能ではない。「リュウノスケオカザキ」の服は着て、消費することが目的ではない。1着数十万円とする1点モノのアートであり、コレクションピースだ。ファッション産業が進化を続けるためには、人々に感動を与えられるデザインの可能性にチャレンジするデザイナーの存在が必要だ。岡﨑龍之祐がその担い手であることが、このショーで証明されただろう。