2022年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」が5日に閉幕しました。「WWDJAPAN DIGITAL」は、読者投票で日記No.1ブランドを決める“T-1グランプリ”を開催!編集部が選んだ全20の候補から、あなたが思うベストブランドに投票してください!ノミネートブランドの確認と、投票フォームには以下からアクセス!
ノミネートブランド
1
/
20
「カラー(KOLOR)」
今季リアルショーのトリを飾った「カラー」に圧倒されました。招待状に書かれた集合場所は京急線品川駅の改札口だったので、駅構内でショーをするのかと思いきや、ランウエイは車内!貸切電車は蒲田駅に進み、到着した駅のプラットホームからモデルが乗り込む形でショーがスタートしました。電車や駅という日常の景色が舞台となって、非日常化するところが心地よい。服は6月にパリメンズで発表したもので、大胆なミックス感、ベーシックカラーとビビットカラーの掛け合わせに“らしさ”が強く出ています。海外コレクションも歩く一流モデルたちがまとって、颯爽と駆け抜ける姿がとてもかっこよかったです。ショー後には、ダイアの関係で40分ほど車内で待機することになったのですが、ゲストにはいなり寿司やポテチ、水出し緑茶、アイスキャンディーが提供されました。リアルならではの特別感とおもてなしを楽しませていただきました。約160人の学生も招待し、彼らには貴重な体験になったはずです。個人的に降車前の「『カラー』2022年春夏コレクションにご乗車ありがとうございました」という駅員さんのアナウンスに感激でした(笑)。緊急事態宣言下の開催となった東コレでしたが、この1週間は一球入魂のクリエイションに向き合うことができてとても楽しかったです。感染対策を万全にしながらも、スケールの大きいショーで締めくくってくれた「カラー」に拍手。(リポーター大杉)
「コンダクター(EL CONDUCTORH)」
デジタル発表が浸透して数シーズン。2〜3分で洋服を見せる映像も多い中、20分の超大作が届きました。「せっかくデジタルでやるんなら、ストーリーのある短編映画に挑戦したい」という長嶺信太郎デザイナーの強い意思で実現したもので、俳優の唐田えりか、吉村界人らが出演し、監督は小林達夫という本気っぷり。ジンの編集者が憧れのバンドを取材し、大事なものに気づかされるストーリーがめちゃくちゃ面白いし、音楽やストリートとのつながりが強いブランドの世界観ともマッチしています。ウエアは、スカルと十字架を散りばめた透け感のあるボウシャツや炎のようなペイントを施したセットアップスタイルなど、センシュアルなひねりを加えたロックテイスト。映画だから同じウエアが何回出てきても違和感はないし、ぶっちゃけショーより記憶に残りました。世界観を作り込み、洋服を効果的に見せられるのは、デジタル最大の強みですね。(デジタル担当・美濃島)
「ジュンアシダ(JUN ASHIDA)」
今シーズンのテーマは“Another Dimension-時空を超えて”。100台以上の4Kカメラを使って洋服をスキャンし、バーチャルショーに挑戦しました。驚くほど精巧なジャングル柄のテキスタイルのセットアップや、スパンコールのようなキラキラ素材を全面に散りばめたワンピースなど、クチュールの技術を駆使したゴージャスなリゾートスタイルが目白押しです。さらに故・芦田淳デザイナーが手掛けたアーカイブをアレンジしたカクテルドレスやイブニングドレスも登場。新しい表現に挑戦しつつ、ブランドの普遍性も両立するクリエイションに脱帽です。(デジタル担当・美濃島)
PHOTO:KO TSUCHIYA
「スリュー(SREU)」
古着やデッドストックアイテムのリメイクを中心とした一点モノのブランド。植木沙織デザイナーが1着ずつ素材を選んでおり、愛情を感じるモノ作りが魅力です。私のお気に入りのルックは、ロングヘアが美しいメンズモデルのKEITAが着用していた、パールを施したジャケットとショートパンツのセットアップ。「ミキモト(MIKIMOTO)」と「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCON)」のコラボが火付け役となり、メンズに向けたパールネックレスがブームになりつつありましたが、装飾でも素敵ですね。甘すぎず、程よくぬけ感もあり、洗練された印象。またデザインスタジオ「アントレース(UNTRACE)」とのコラボレーションも発表し、今後も楽しみです。(リポーター大杉)
PHOTO:SEIGO ISHIZAKA
「セイヴソン(SEIVSON)」
東京コレクション初参加で台湾人デザイナーのヅゥチン・シン(Tzu Chin Shen)が2017年に立ち上げたウィメンズブランド。コロナ禍でデザイナーの来日が叶わなかったため、本番は遠隔で指示を出しながらショーを実現させたそう。リアルショーを実現することも簡単ではなくなった今、生で見られる喜びを改めて感じるとともに、見る側の責任も増しているなと気が引き締まりました。コレクションは近未来の世界で潜入捜査する“名もなき秘密捜査官”をテーマに、コロナ禍で必需品となったマスクの代わりになる目出し帽を数体のモデルが着用。そのほかプリーツワンピースとトレンチコートを合わせたボリュームのあるアウターや、至るところをカットアウトしたインナーなどが斬新で面白かったです。フィナーレでは、台湾にコロナワクチンを無償提供した日本に対する感謝と東コレに参加できた喜びを「THANK YOU JAPAN WE ARE FROM TAIWAN」のメッセージにしてTシャツに乗せました。僕のお気に入りはシャープなシルエットから裾にかけてボリュームが出る、膝上から切り替えしたレギンスパンツ。来年の夏はこれでスナップされたい!(現場担当・大澤)
「ディーベック(D-VEC)」
長らく「はっ水や防水・防風のアーバンウエア以外に、もう1つアイデンティティが欲しいなぁ」と思っていたけれど、「ニッポン」の要素が加わり独自性が備わってきました。真っ白なシャツドレスなどにブロッキングしたマリンブルーの生地には、大海原の穏やかな波模様を描いた青海波(せいがいは)モチーフ。何より「ニッポン」の漁師や釣り人のスタイル、水産合羽や“釣ジャン”をタウンウエアに昇華‼︎ウエイトベルト風のボディバッグなど、アクセサリーも工夫していて、フィッシングの「ダイワ(DAIWA)」から生まれたアパレルブランドらしさ、が出てきました!(編集長・村上)
「ナオキトミヅカ(NAOKI TOMIZUKA)」
「リロト」立ち上げメンバーでもある富塚尚樹デザイナーが2020年にスタート。東コレ参加は2回目です。今季は、得意とするフリルとギャザーのドレスをオールグリーンで制作しました。グリーンバックを使った合成技術“クロマキー”に着目し、「着る人の思い出を風景として落とし込む」ためのドレスだそう。斬新なアイデアはもちろん、襟に見立てたフリルや、テープのように縦方向にあしらったフリル、メリハリを生む腰のカットアウトなど、ドレス自体がかわいいから説明抜きでも惹かれます。映像では、実際に服の一部に街の風景を合成!「洋服でもこんなにきれいに映るのか」と感心しちゃいました。(デジタル担当・美濃島)
PHOTO:SEIGO ISHIZAKA
「ノブユキマツイ(NOBUYUKI MATSUI)」
テーラリングに定評のある同ブランド。ここ数シーズンはリラックスしたテーラードがトレンドの中、硬さのあるジャケットとコートが連続する攻めの姿勢です。でもインナーにレースを忍ばせたり、淡いストライプのショーツを合わせたりと、絶妙な足し引きで柔らかさを加えます。特にこのロングコートのレイヤードスタイルは、今日の真似したいルックナンバーワン。無造作ヘアも抜け感があっていいです。ちなみにウィメンズモデルも登場しますが、あくまでメンズとしての提案だそう。(デジタル担当・美濃島)
PHOTO:KO TSUCHIYA
「ネグレクトアダルトペイシェンツ(NEGLECT ADULT PATIENTS)」
1日中PCとにらめっこして「そろそろ疲れたな」と思っていたら、ゴリゴリの音楽に乗って「ネグレクトアダルトペイシェンツ」のショーが開幕。トラックスーツやロゴフーディーなど「アンチ アダルト」を掲げる同ブランドらしいアイテムが続く中、有名音楽家の肖像画をキッス風メイクでオマージュしたアイテムがチラホラ。顔の下には “初版(ショパン)”“米藤 勉(ベートーヴェン)”“猛津 アルト(モーツァルト)”と日本人風の名前が書かれていて「芸が細かい」と爆笑しました。現場の熱量を伝えづらいデジタルで、視聴者を笑わせるってすごい。BiSHによる恒例の“麺食い”演出もバッチリ決まっていました。気になる方は動画もチェックして!(デジタル担当・美濃島)
「ハイク(HYKE)」
今季も抜群に素敵だったのですが、同時にブランドとしての底力も感じました。今季の東コレは1月半ほど時期が前倒しになり、参加を断念するウィメンズブランドも多かったのですが、「ハイク」がちゃんと今回の東コレにも間に合わせてきたのに驚きました。同ブランドのように、素材開発にもこっていて規模の大きいブランドが、発表時期を1月半もずらすことは容易ではないはずなので、まずそこに敬意を表します。撮影はレールを使った本格的なドリー撮影!高さやアングルも変わってルックが見られるのが面白い。特に目立ったプロップを用意するわけではなく、シンプルな演出ではありますが、毎回ちゃんと既視感が出ないように撮影技法をガラッと変えるところも素晴らしい。服は袖コンシャスと、ポップなピーコックカラーも新鮮でした。「ポーター(PORTER)」とのコラボレーションも披露。ブランドらしいミリタリーのヘルメットバッグは、斜めがけにできるタイプやトートタイプなど、洗練されていて実用的。即完必至になりそうですね。また継続している「チャコリ(CHACOLI)」とは巾着バッグが新登場し、これまたかわいかったです。(リポーター大杉)
「ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)」
テーマは「マインドセット・レボリューション」。「自分で定めた自分の限界、無難で定番の安心感 そんなパターンから抜け出して、新しい風に乗ってみる」。そんな言葉を84歳のヒロコ先生から聞いた瞬間、ワクチン接種でグロッキーだった僕も「副反応どころじゃな〜い!」と元気になりました(笑)。言葉通り、風に乗れそうなボリュームシルエット。そしてメンズモデルも登場のジェンダーレスなアートシャツ‼︎鮮やかなカラーパレットにも、心が洗われました!(編集長・村上)
「フェイス エージェー(FACE A-J)」
「フェイス エージェー」は、日本とアフリカのクリエイティブ産業をつなぐプロジェクト。今回はアフリカのニットブランド「マコサ アフリカ(MAXHOSA AFRICA)」と「東京ニット(TOKYO KNIT)」のコラボレーションを発表しました。女性の勇敢さや強さから着想したコレクションは、コサ族の伝統的なビーズワークの繊細な柄や、派手好きな僕も驚くパワフルなカラーリング。日本人の感覚ではなかなか作れないデザインにひかれました。特にコサ族の人物の肖像画をプリントしたカーディガンやプリーツスカートは元気が出そうで、一度着てみたい!(現場担当・大澤)
「ペイデフェ(PAYS DES FEES)」
アヴァンギャルドでガーリーなクリエイションが特徴の「ペイデフェ」は、ブランド独特の世界観に心が洗われました。朝藤りむデザイナーは「ファッション業界では、強い服や表現を求められがちだが、レースやプリーツの存在を改めて表明したかった」と話すように、プリーツを多用したコレクションが多数。なかでもカッティングされたミニスカートに両面プリントのプリーツスカートのドッキングが素晴らしかった。そのほか小説家の稲垣足穂の物語をアニメーション化した絵本を服に付けたスペシャルピースが圧巻。(現場担当・大澤)
PHOTO:KO TSUCHIYA
「ベッドフォード(BED J.W. FORD)」
久しぶりに東コレに戻ってきた「ベッドフォード」が、雨上がりの夕暮れの八芳園でロマンチックなショーを見せてくれました。席に着くと、コレクションのテキスタイルで作られた造花が配られて、キュン。ショーでは、透け感のあるグラデーションのコートや、ラメ糸の入ったジャカードのジャケットなどがライトに照らされて輝き、とても美しかったです。女性モデルが着こなすシャツのルックも上品でハンサム。葉っぱや花などの自然のモチーフも、秋に近付く自然を見渡せるロケーションにぴったりでした。naomi tokyo parisの生演奏にもうっとり…。ブランドの印象に強くある儚さを体感でき、リアルで発表する利点が最大限に生かされていたショーでした。(リポーター大杉)
PHOTO:SEIGO ISHIZAKA
「ホワイトマウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING)」
9年ぶりとなる東京でのショーを無観客で生配信。都会の喧騒を忘れられる新宿御苑を舞台に、本来ゲストが座るはずだった60脚のウッドチェアを道に並べてランウエイを作った。ブラックやカーキを中心に、メッシュ、機能素材などを用いた、軽快で都会的なブランドらしいアウトドアウエアをそろえた。フィナーレでは、15年間のコレクション発表の場が記載されたTシャツをモデル全員が着用して再登場した。(リポーター大杉)
PHOTO:SEIGO ISHIZAKA
「ミカゲ シン(MIKAGE SHIN)」
昨シーズンはスカート男子のルックが超かっこよくて、今季もファーストルックから大ぶりのイヤリングにプリーツスカート&スラックスという振り切りっぷり。「エレガンスに男女の境はない!」という姿勢をひしひしと感じます。デザイナーが手描きした田園のグラフィックでスーツ地のシャツを切り替えたり、大理石のグラフィックをドレープのきれいなワンピースにあしらったりと、“都会と田園”というテーマの表現手法もおもしろかった。音楽と照明の緊張感ある演出も洋服を際立たせてましたし、リアルショーで見たかったな(泣)。(デジタル担当・美濃島)
PHOTO:SEIGO ISHIZAKA
「ヨシオ クボ(YOSHIO KUBO)」
東京のファッション・ウイークへの参加は5年ぶり。海外での発表経験を経て、リアルとデジタルという垣根を超えて、あらゆる表現方法にどん欲に挑んでいる姿がかっこいいなと思っています。今シーズンは僧兵を意味する“ウォーリアー・モンク”をコンセプトに掲げ、日本のミリタリーを独自に解釈しました。相手を威かくするためのオーバーサイズや、竹で迷彩を作った“バンブーカモフラージュ”柄、かつて僧兵たちが興じていた将棋の駒をモチーフに使うなど、和を深く掘り下げたスタイルが連続。実はショー前の展示会で服自体は見ていたのですが、やはり人が着て歩くと別物です。ブランドが得意とするパターンワークを、結んだりひねったりするスタイリングでアピールし、どういう構造なのかと改めて気になり身を乗り出してしまいました。そしてリアルならではの驚きは、自分のスマホでは見ない日はないTikTok発のスターモデル、大平修蔵さんを生で見られたこと。実在していたんだ!と服とは全然関係ないところでも感動しました。(副編集長・大塚)
「ユーシーエフ(UCF)」
上田安子服飾専門学校のトップクリエイター学科の3年生、総勢13人が手掛けたコレクション。開幕4日目までに、計10ブランド以上のプロデザイナーのコレクションを見てきた僕は、正直甘く見ていました。今季は兵庫県の播州織や群馬県の桐生ジャカード、愛知県の有松鳴海絞り形状加工などをしたオリジナル素材に、大胆なカッティングやドレープ、アシンメトリー加工を施したり、数パターンの着こなしが楽しめる変形型シルエットにしたり。ブラックとホワイトのカラーが、より素材の良さとシルエットを際立たせます。学生たちのレベルの高さに唖然としました。すみませんでした。ほとんどの学生は今後、パリ・コレクションを目指し活動していくそう。日本の未来に乾杯です。(現場担当・大澤)
PHOTO:KO TSUCHIYA
「リュウノスケオカザキ(RYUNOSUKEOKAZAKI)」
広島生まれ、25歳の新星デザイナーのデビューショー。東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻を修了したばかりですが、文化庁の支援を受けて東コレ初参加でランウエイショーに挑みました。左右対称で立体的な縄文土器をイメージした“JOMONJOMON”シリーズは、自然の脅威を感じながら、自然の恩恵を願うという土器に込められた人々の思いからインスパイアされたもの。リブ素材の軽量ニットにボーンを入れた、圧倒的な造形美のアート作品です。 “祈り”を中心にしたスピリチュアルなテーマで、先の見えない混沌とした現在の状況下に響くものがありました。(リポーター大杉)
「レインメーカー(RAINMAKER)」
正直、ダークホースでした。リアルのショーが復活している中で、映像でここまで印象に残るとは。しかも、国立京都国際会館のきれいなロケーションやカメラワークといった水谷太郎さんの演出もさることながら、服がめちゃくちゃ強い。「レインメーカー」って、数年前まで和の伝統を継承する“ザ・男服”な印象でしたが、最近は硬さが取れてとってもしなやかで軽快。でも根底にある深みや骨太感は残っているという、まさに“進化”という言葉がぴったりのクリエイションを見せてくれました。玄人っぽい色使いは好みが分かれそうですが、アーティストと協業したテキスタイルや強めのディテールはキャッチーなので、スタイリングが楽しそうです(副編集長・大塚)