トランクルームに代わる新たな収納サービスとして存在感を高めているのが、サマリー(東京、山本憲資社長)が寺田倉庫との協業で運営する「サマリーポケット」だ。アプリで段ボールを取り寄せ、荷物を詰めて送るだけ。そんな手軽さと、月額数百円から始められるリーズナブルな価格設定が、首都圏のマンションやアパートに住む20〜30代の若者のニーズを捉えている。(この記事は「WWDJAPAN」2021年9月6日号からの抜粋です)
首都圏では高額な家賃などから、収入の少ない若者ほど生活空間が手狭になりやすい傾向がある。その解決策の一つが個人用のトランクルーム。だが、荷物の出し入れにかかる「労力」と、月額数千〜数万円という「料金」も若者にとってはネックになる。
この2つのハードルを解決したのが「サマリーポケット」のサービスだ。預ける荷物は段ボール1個(月額275円〜)から始めることができ、段ボールの取り寄せから集荷、取り出しまでスマホアプリで完結する。利用者は関東の1都3県の若者が中心で、洋服などがかさばる30代の女性が多い。
保管ユーザー数は毎年3倍増
「資産」が次のビジネスチャンス
2015年のローンチから、順調な成長を続けており、19年春にはテレビCMでユーザー獲得をさらに加速させた。ボックスを預けているユーザー数は毎年平均約3倍のペースで伸び続けている。
預けた物がスマホアプリで一目でチェックできる視認性やオプションも魅力だ。取り出しは洋服や本など1点ごとに可能で、クリーニングや「ヤフオク!」への代理出品(いずれも有料)ができる。これらきめ細かなサービスは、預かり品の単品管理が前提となる。倉庫に届いた段ボールは、スタッフが開封して中身を1点ずつ撮影し、デジタルIDをひもづけることで管理・識別する。また、運営会社のサマリーはモノの紹介・共有に特化したSNS「サマリー」を別事業として展開しており、ここで培ったアプリのUI・UX構築、視認性の高い画像の表示などのノウハウも生かしている。
「サマリーポケット」の解約率は非常に低い。その要因の一つが、「ユーザー目線でのサービス改良」(サマリーマーケティング担当)を続けてきたこと。これまで「小型の生活家電を預けたい」という声を元にラージサイズの段ボールを追加。取り出した荷物を宅配ボックスで受け取りたいというニーズに応え、レギュラーボックスのサイズにも修正を加えた。ヤマト運輸と提携している物流面では、自社オペレーションの最適化も進め、「(取り出し品の)当日配送に対応したり、より大型の生活用品も預かれるようにしたりしていく」。
ヘビーユーザーも増えており、「数百という段ボールを預けている方、大切なコレクションを託してくださっている方もいる」。今後は美術品など、資産価値の高い物を適切な環境下で保管する上位プランの追加を検討。さらに「サマリーポケット」を、ユーザー間で資産を売買するプラットフォームとして機能させるなど、「収納を起点とするさまざまな事業展開」を思い描く。