グラフィックTシャツのグラニフ(GRANIPH)は、成長戦略をスタートする。商品をアパレルに加え、服飾雑貨や生活雑貨などにも広げ、店舗面積も従来の3倍に拡大し、スクラップ&ビルドで年20〜30店舗を出店する。EC化率も50%に引き上げ、5年後の2026年には売上高を現在の3倍の300億円に引き上げる。村田昭彦社長は「グラニフの最大の強みは、多彩なアーティストやクリエイター、キャラクターなどとのコラボレーションで生まれるグラフィック。一方で商品はノンエージ、ノンセックスの広がりがあり、顧客からの支持も高い。アパレル以外にも、販売する商品カテゴリーを広げることで企業価値を最大化する」と語った。2〜3年内の上場に向け、その準備にも入った。
9月8日には、東京・原宿の旗艦店店をリニューアルオープンする。60坪強(約200平方メートル)の店舗には、従来の主力アイテムであるTシャツやパーカーなどのアパレルに加え、スニーカーやマグカップ、スマホケース、クッションなど雑貨を加え、450アイテムを販売する。雑貨も商品単価は2000〜3000円が中心になり、アパレルとほぼ同じ。現在商品構成でほぼ100%を占めるアパレル製品の割合を5年後には50%に下げ、服飾雑貨や生活雑貨といった非アパレルの50%上乗せを目指す同社の象徴的な店舗になる。村田社長は「この1〜2年をかけてサプライチェーンも含めたビジネスモデル全体を変えていく。これまでは売り減らすやり方だったが、今後は原型となるTシャツのボディをストックし、売れた分だけをプリントして追加していくやり方に変える。短ければ1〜2週間、長くても4〜5週間で追加生産する。Tシャツのボディも一度に大量に発注すればコストダウンにつながるし、セールもやらなくても良くなる。販売するアイテム全体の7〜8割を追加生産型に切り替え、早ければ来春からはセールも止めたい」という。ECで試験的に先行販売したグラフィックスニーカーは1500足がすぐに完売したが、「プリントできる工場が少なかったが、試行錯誤して量産体制を整え、リニューアルオープン後は、定番アイテムとして販売体制が整った。今後拡充する雑貨でもこうした追加発注型のビジネスモデルで展開する」という。
同社の直近の店舗数は124店舗(8月1日時点)。店舗は郊外の大型ショッピングモールや都心のファッションビル、路面店などさまざまだが、従来は15〜20坪(50〜70平方メートル)と小型店が中心だった。雑貨アイテムの拡充に伴い、今後は小型店をクローズし、年間20〜30店舗のペースで45〜60坪(150〜200平方メートル)の店舗を積極的に出店する。45〜60坪という店舗サイズは、ファッションブランドの標準サイズと重なる。「デベロッパーからは多くのお声がけをいただいており、今年度でも20店舗の出店はほぼ固まっている。大きいところだと90坪弱(約300平方メートル)の案件もある」という。
5年後の売上高300億円に対して、利益はEBITDA(償却前利益)で20%台を目指す。「自社ECサイトは10月にリニューアルオープンする。まずはUI/UX部分を使いやすく変えるが、2〜3年をかけてEC部門を内製化していく。ECのシステムも、店舗在庫をフル活用して店舗から消費者に発注できるような独自のシステムをフルスクラッチで開発し、リアルとECが融合したOMOを追求する」という。
グラニフは2020年1月に三菱商事などが出資する投資ファンド丸の内キャピタルが買収し、オーナーになっている。村田社長は「社長就任から1年強が経ったが、いまだに顧客ロイヤルティの高さに驚くことが多い。グラニフの場合、例えば顧客同士で着ている商品がかぶっても、ネガティブにならず、『あ、それ好きなんですね』みたいに、逆にコミュニケーションが始まる。そんなブランドは稀有だと思う。この時代に5年で3倍というと野心的にも見えるかもしれないが、潜在的なパワーはそれ以上だ」と語った。