中国のICCFファッショングループの高級婦人服「アイシクル(ICICLE)」が、日本1号店を阪急うめだ本店の6階に1日オープンした。日本の百貨店に中国のアパレルブランドが出店する事例がいくつか出始めており、今年2月には銀座松屋本店の紳士服売り場に広州発の「ダンノン」が開店して話題になった。中国で高感度な女性に支持されてきた「アイシクル」とは一体どんなブランドなのか。
中国国内で276店舗 (2021年4月末時点)を展開する「アイシクル」は、上海の東華大学でファッション学科の教鞭をとっていた葉寿增(イエ・ショウザン)氏と夫人の陶暁馬(タオ・シャオマー)氏が1997年に設立した。
2013年には、パリにデザインセンター「アイシクル パリ モード」を開設し、パリと上海の2拠点でデザイン活動をスタートした。日本法人アイシクルジャパンの小倉一憲氏は「中国の伝統的技術やブランド哲学にパリのデザイン的感性を融合させることが、グローバル展開するうえで不可欠だった」と話す。
19年9月には、パリ8区のジョルジュサンク通りに海外1号店となる旗艦店をオープン。今年は海外2店目の阪急うめだ本店に続き、パリのフォーブルサントノーレ通りとギャラリー・ラファイエットにも出店する。
日本進出計画に着手したのは約1年半前。準備をスタートしたものの、コロナ禍により日本での店舗開設準備が困難になり、ワールドのプラットフォーム事業推進室に支援を求めた。今年6月、アイシクル パリ モードが全額出資するアイシクルジャパンを設立。「物流からバックオフィス業務、販売員の手配まで、ワールドのサポートで日本1号店のオープンにこぎつけた」(小倉氏)。
97年の創設当初からサスティナブルなブランドを目指してきた。ブランド哲学として“メイド・イン・アース”を掲げ、自然との共存を追求する。カシミヤ、シルクを中心にウール、コットン、リネンなど上質な天然素材を使用。植物由来の染料で染めるか無染色のままで自然な色合いと手ざわりを表現する。生産は主に中国国内にある自社工場で行い、地球環境に配慮したモノ作りにこだわっている。
「中国ではものごとをサークルで考えることが多く、すべてのものがつながっているという考え方がある。『アイシクル』も長く着てもらいたいという思いから、エコロジーやサステナブルな考え方が根底にある」(小倉氏)という。
商品はウィメンズ、メンズ、服飾雑貨のほか、陶磁器などライフスタイル雑貨で構成する。無駄のないタイムレスなデザインをキーワードに、快適性とエシカルを重視したラグジャリーで温かみのある“ナチュラル・ラグジュアリー”を提案する。
パリ発信でメッセージ性のある「パリスライン」をはじめ、ビジネス、キャリアに対応した「フォーマルライン」、クラシックなアイテムの「ベーシックライン」、デニムなどカジュアルアイテムを展開する「ヤングライン」、機能素材を使用した「トラベルライン」、ブランドコンセプトを体現し、100%天然素材を使った「アースライン」の6つのラインを展開。アースラインからシーズンテーマに合うアイテムをピックアップした「ナチュラルウエイコレクション」も毎シーズン打ち出す。日本市場では当面、アッパー層をターゲットにウィメンズのベーシックとトラベル、アースラインと服飾雑貨で売り場を作る。日本での価格帯はコート16万〜64万円、ジャケット10万〜18万円、スカート6万〜16万円、ニット3万〜14万円。
今秋冬は“アース シェルター“をテーマにベージュ、アイボリー、ブラウンなどのアースカラーのコートやニット、ドレス、アクセサリーが揃う。無染色のカシミヤ100%のセーターやマキシコートのほか、ニュージーランド産ブラックシープのメリノウールを使ったベルテッドダウンコート、無染色カシミヤとウール混のフーデッドニットなどに前面に出す。
中国では今年4月に寧波市に開業した寧波阪急にも出店した。ライブコマースや売り場でのイベントにも力を入れ、国内ブランドの中ではトップクラスの売り上げを誇る。一方、日本では今後、都心百貨店やファッションビルに3年間で5店舗程度出店する計画だ。「ブランドの理念をどんな形で日本人に訴求していけばいいのか見極めつつ、市場に根付かせていきたい」としている。