良品計画は東京・新宿の2店舗、「MUJI 新宿」「無印良品 新宿」を、9月10日にリニューアルオープンする。両店舗は徒歩1〜2分の距離にありながら従来は取り扱い商品に重複もあったが、リニューアルによってそれぞれの役割を改めて明確にし、差別化。「MUJI 新宿」は地区の課題や社会問題などにコミットする店舗、「無印良品 新宿」は新宿の客の日常に寄り添う店舗として打ち出す。新宿区役所や同地区の他の小売業などとも連携し、コロナ禍以降客足が減っている新宿の街の活性化を目指す。
同社は“個店経営”を掲げ、新潟・直江津などの店舗で地域社会と連携しながら、地域課題を解決していくような店のあり方を目指している。「今後は“個店経営”の店舗を全国100店体制にし、地域に溶け込む『無印良品』へと大きく舵を切っていく」と、永原拓生執行役員営業本部長は話す。今回リニューアルする新宿もその一つだ。
具体的には、今年2月ごろから新宿区役所とやり取りを開始。「区役所の方からは、ゴミの問題やリユースなどが課題としてあがった」と永戸順也MUJI 新宿店長。また、伊勢丹新宿本店や近隣の飲食店などとも街の活性化のために意見交換を進めているという。「海外観光客が減り、空き店舗も増えている。地域の商店や小売業と連携しながら、まずは(地域の清掃など)日々の小さなボランティア活動からスタートし、コロナが収束したら、例えば歩行者天国のような大きな街イベントも行っていきたい」(永戸店長)といったイメージを描く。オープン後の初の週末である9月11、12日には、店舗そばの屋外スペースで早速イベントを実施する予定だ(今回は他社は参加せず、自社のみでのイベント)。
「MUJI 新宿」店頭でも、ゴミ削減などの課題に対する発信を行っていく。店の顔である1階は、「無印良品」が回収した自社の中古衣料品を再販する「ReMUJI」プロジェクトの売り場。これまでも、回収した衣料を藍などの染料で染めた“染めなおした服”を一部店舗では販売してきたが、このタイミングで一律2900円から1990円に値下げした。また今回から、染料が入りづらい化学繊維などの服を洗って再販する “洗いなおした服”(一律990円)と、痛みがひどい服を何着か組み合わせてリメークした“つながる服”(一律3990円)も導入。“染め直した服”、“洗い直した服”、“つながる服”は、オープン時にそれぞれ3000着、2000着、200着をストックしている。
「つながる市」売り場を地下1階と中地下階に常設導入しているのも、新生「MUJI 新宿」の注目ポイントの一つ。同売り場は店頭展示品や物流過程で傷がついた商品などを値引きして販売するもので、これまでは期間限定の催事を一部店舗で行ってきた。大型家具や食器、衣料品などを、傷の度合いなどによって割り引いている。
2階は良品計画が運営するデザイン家具「イデー(IDEE)」の「無印良品」内として最大の売り場がメイン。古書のコーナーもあり、直江津店などでも協業している長野・上田のネット古書店、バリューブックスと組み、古紙回収へと回されてしまう古書を一律300円で販売する。「MUJI 新宿」ではアートやデザイン関連の古書をセレクトしており、立派な図録などを豊富にそろえている。他フロアにも古書コーナーは設けている。
“地域のインフラ”として自動販売機も設置
一方の「無印良品 新宿」は、“地域のインフラ”として、弁当などの食品や化粧水、靴下、生活雑貨に照準を絞って品ぞろえを強化した。目玉は店外に5台設置した自動販売機の「MUJIPOCKET」。飲料だけでなくマスクや化粧水、折り畳み傘、歯ブラシなども24時間買えるようにする。「開店は11時だが、このあたりは近隣の店舗への通勤で朝の通行量が非常に多い。自販機によりそういった方もストレスなく商品を買えるようにする」(白濱賢 無印良品 新宿店長)。
これまで、両店を買い回る客は全体の1%以下だったというが、差別化を進めたことで今後は相互送客も意識していく。その一環として、フロアマップには両店を記載している。