ファッション

「ファーと同じ」 「ネクストダイヤモンド ニューヨーク」社長に聞くこれからのダイヤモンドの選択肢

 ジュエリーブランド「ネクストダイヤモンド ニューヨーク(NEXT DIAMOND NEW YORK以下、ネクストダイヤモンド)」が日本に上陸した。ラボグロウンダイヤモンド(以下、ラボグロウン)と日本で常設店舗は初のダイヤモンドより輝くといわれるモアサナイトに特化したジュエリーを販売するブランドだ。8月末、松屋銀座本店(以下、松屋)1階にショップおよび公式ECサイトをオープン。同ブランドを率いるのは米ニューヨークを拠点に、さまざまなジュエリーブランドを運営している二宮美生ネクストダイヤモンド ニューヨーク社長だ。上陸に伴い来日した二宮社長に、ブランドをはじめラボグロウンとモアサナイトについて聞いた。

WWD:「ネクストダイヤモンド」を立ち上げたきっかけは?

二宮美生ネクストダイヤモンド ニューヨーク社長(以下、二宮):ジュエリー業界における新しい価値観を提供したいと思った。日本でエンゲージメントリングに使用される平均的な天然の大きさは0.3カラット、アメリカでは1カラット以上だ。天然より価格の安いラボグロウン、ラボグロウンよりも手に取りやすいモアサナイトを扱うことで、予算とエシカルという観点で消費者に選択肢を与え、若年層のブライダル需要や第二のエンゲージメントリング世代(アメリカで再婚が多い年代)といわれる50〜60代の女性のニーズに応えたい。

WWD:ラボグロウンとは、具体的にどのようなものか?

二宮:天然と全く同じ組成で、「ネクストダイヤモンド」が扱うものの主な製法は、CVD(CHEMICAL VAPORDEPOSITION)と呼ばれる化学気相蒸着法とHPHT(HIGH PRESSURE AND HIGH TEMPERATURE)と呼ばれる高温高圧法の2種類が主流。アメリカやインド、中国などで製造されており、約5年前から市場で出回り始めた。

WWD:扱うラボグロウンのグレード(4C)や価格、調達方法などは?鑑定書は付くか?

二宮:カラーは、無色〜ほぼ無色のD〜H、クラリティーはIF〜VS(ベリー・スライトリー・インクルーデッド)以上、カットはエクセレントかベリー・グッド、カラットは1〜7カラット。価格は天然の価格相場である週刊ラパポルト・ダイヤモンド・レポートと連動しており、天然の3分1程度。調達はインドやアメリカのメーカーから。インドはカッティングの技術が優れており独自のカットなどもできる。中国にもメーカーがたくさんあるが、小ぶりのものを製造しているメーカーが多いため扱わない。鑑定書は国際宝石学会(IGI)、または米国宝石学会(GIA)のものが付く。

WWD:デザインや製造はどこで行うか?

二宮:デザインはニューヨークで、360度どこから見ても美しいデザインにしている。製造は、アメリカ、日本、中国。日本の工房と提携してアフターサービスを提供する。

WWD:ラボグロウンの1カラットのリングの税込価格は?

二宮:プラチナ四つ爪リングが39万6000円から。地金はプラチナ以外に、ピンク・イエロー18金から選べる。

ラボグロウンより価格の低いモアサナイト

WWD:モアサナイトとは?

二宮:1893年に米アリゾナ州で発見された隕石の中の鉱物で、地球上でほぼ天然のものは存在しない。研究が進められ、1998年に米企業のチャールズ&コルバード(CHARLS & COLVARD)が開発に成功し特許を取得し製造を始めた。今は特許が切れてチャールズ&コルバード社以外でも製造されている。化学組成は、炭化ケイ素で硬度は天然・ラボグロウンに次いで高く、光の屈折率や分散度は、天然・ラボグロウンよりも高い。だから、欧米では天然やラボグロウンの代替としてエンゲージメントリングなどに使用されている。価格はラボグロウンよりも安い。

WWD:グレードや1カラットの税込価格は?

二宮:モアサナイトはダイヤモンドとは違うが「ネクストダイヤモンド」の基準でグレードを付けている。カラーはD〜F、クラリティーはVVS(ベリーベリー・スライトリー・インクルーデッド)、カットはエクセレントでラウンドブリリアントの場合はH&C(ハート&キューピッド)が確認できる。「ネクストダイヤモンド」の保証書が付き、1カラット、プラチナ四つ爪リングが19万2500円〜。

WWD:エンゲージメントリングの納品方法は?それ以外の商材はあるか?

二宮:受注してから納期は1〜2ヶ月程度。エンゲージメントリング以外にも、ファッションジュエリーも販売するが、それらは在庫を持つ。

消費者の価値観により市場が分散化

WWD:天然、ラボグロウン、モアサナイトのすみ分けをどのように考えるか?

二宮:天然とラボグロウンは、全く同じ組成で鑑定士が見ても見分けがつかない。天然は1gを採掘するのに1トンの土砂を掘り起こしている。一方、ラボグロウンは人と地球に優しい。ダイヤモンドにこだわる人は、天然かラボグロウンのどちらかを選択するだろう。モアサナイトはダイヤモンドではないが虹色の強い輝きがあり、ラボグロウンより安価。予算でこちらを選ぶ人もいるはずだ。消費者それぞれの価値観で、天然、ラボグロウン、モアサナイトを選べばいいと思う。ただ、正しい知識に基づいて選ぶことが大切だ。

WWD:「ネクストダイヤモンド」の戦略は?

二宮:アメリカ市場では約3年間でラボグロウンがメジャーになった。日本でもそのような動きが出てくると思っている。「ネクストダイヤモンド」を通して日本のジュエリー業界を変革したい。ECをメーンにLINE接客など気軽に相談できるサービスを提供したい。いろいろな企業とコラボレーションしながら、ラボグロウンの市場を作っていくつもりだ。ラボグロウンやモアサナイトがどのようなものかという啓蒙活動も行っていく。多様性が求められる時代だからこそ、異なる価値を提供するのは大切なこと。5年後にエンゲージメントリング市場でトップを目指したい。そのうち、日本でも「エンゲージメントリングの石は、何にした?」というような会話が当たり前になってほしい。

WWD:現在のラボグロウンの製造状況は?

二宮:DやIFを作れる技術はあり進化しているのは確実だ。大きさは、7〜8カラットまで。大きくなれば、その分内包物も増えるので、課題もある。

WWD:現在のラボグロウンの大きな市場は?

二宮:アメリカと中国だ。

WWD:今後のラボグロウン市場をどのように分析するか?

二宮:金の市場の成長率は、ここ数年では毎年15〜20%。ラボグロウンに関しては、2015年に約1億5000万円の市場規模だったのが20年には1050億円を超え、約700倍に成長した。ある意味、天然はリアルファーと同じようなものだと思う。今では、エコファーが主流。だから、エシカルな考えを持つ消費者が増えるにつれ、あえてラボグロウンを選ぶ層が増加するはずだ。これからは、消費者の価値観によって、天然、ラボグロウン、モアサナイトそれぞれの市場に需要が分散すると思う。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

アパレル業界“裏方”の進化に迫る 「OEM・ODM特集」

アパレルは、彼らをなくして語れないー。そう言い切れるほど、企画・生産において重要な働きをするのがOEM(相手先ブランドの生産)とODM(相手先ブランドの企画・生産)の事業者たちです。繊維商社が巨大プレーヤーとして君臨しながら、中小の専門企業も独自の存在価値を発揮し、生き残っています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。