コロナ禍で海外旅行や外食が制限されていることを受け、富裕層の消費が百貨店の特選(ラグジュアリーブランド)や宝飾品に向かっている。昨年に続き2021年も、4月25日から東京都や大阪府などで百貨店に休業要請が出された。その際、要請から外れる“生活必需品”の線引きをどこにするかが争点となり、小池百合子東京都知事が「(特選などの)高級衣料品は“生活必需品”には当てはまらない」と牽制。5月半ばから徐々に営業を再開していた都内百貨店特選売り場は再度休業を強いられ、“豪奢品”とされた宝飾売り場はさらに休業が長引いた。しかし、蓋を開けてみれば、21年1〜6月の特選・宝飾の売り上げにはあまり大きな影響は出ていない。むしろ、コロナ禍前の19年同期実績と「同等」や、「19年を超えた」といった声も上がっている。
もちろん、免税売上比率が非常に高かった銀座地区などの百貨店はそうもいかないが、落ち込みの激しい婦人服や紳士服などの百貨店の他カテゴリーに比べれば、特選・宝飾の高額品カテゴリーはかなり好調だ。免税売り上げの落ち込みを、株高に支えられた国内富裕層が補っている。例えば、各社が外商顧客向けに行っているホテル催事では、1000万円超えのハイジュエリーが売れている。「各地で行ったハイジュエリーの催事は予算比30〜40%増の着地で、90%増ということもあった。催事では負けることがない」(大丸松坂屋百貨店)。感染拡大防止のため、催事に招待できる人数は減っているが、その分客のニーズに合わせた事前準備がしっかり行えるようになり、決定率や客単価が上がっているのだという。
富裕層の旺盛な消費を引き出しているのが、デジタルツールも活用した1対1の接客だ。昨春の休業以降、ラグジュアリーブランドも百貨店側もラインワークスやZoomでの接客、自社オリジナルのリモート決済手段などを続々導入しており、その精度が高まっている。「昨年は手探りだったが、今年はわれわれもお客さまも休業中のコミュニケーション手法が分かっていた。休業中にデジタルツールで接客していたことで、営業再開後の消費が盛り上がった」(阪急うめだ本店)、「今後再び休業要請が出たとしても、販売手段はある」(大丸松坂屋百貨店)と、各社から頼もしい声が聞こえてくる。
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