ファッション
連載 コレクション日記

「みんな大好きなスカイブルー」を使って共感度アップのブランドは? 地球の裏側からNYコレ鑑賞記Vol.2

マイケル・コース コレクション

・リアルショーをライブ配信
・全62ルック

 「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」は、ブランド設立40周年のアニバーサリー・イヤーの真っ最中でランウエイショーを開催。記念すべき年がコロナと重なってしまい若干(とっても?)かわいそうな気もしますが、アニバーサリーとコロナは共に「自分らしさ」を見つめ直す良い契機になったことが伺えます。ブランドの原点であり、ニューヨークという街から生まれるファッションの本質とも言える、実用的なシンプリシティに回帰しました。事前のオンライン・カンファレンスで「みんな肌を見せて良いんだ!そして、世界中の女性が(肌を見せる)勇気を持ち始めているように感じるんだ」とこだわっていたブラトップを多用し、フレアからペンシルまでバリエーション豊かなスカートと合わせたり、ジャケットのインナーに忍ばせたり。ブランドの代名詞とも言えるカシミヤのニットでも、クロップド丈のカーディガンとブラトップのアンサンブルを提案です。

 カラーパレットも極めてシンプルです。ブラック&ホワイト、それにヌードが基調で、ギンガムチェックやフローラルプリントも白黒です。そこに差し込むのは、淡いベビーピンクと、スカイブルー。ともに起毛したカシミヤニットにのせると、ニットが本当に柔らかそうに見えます。スカイブルーについては、「ロンドンでもミラノでも、もちろんニューヨークでも、みんなが待ち望み、誰もが大好きな色」とマイケル。確かに、青空が嫌いな人っていませんよね。コロナ前から目立ち始めた社会の分断と向き合い、デザイナーは最近、愛や希望、家族、故郷など、「どれだけ志向が多様化しても、皆が価値を置くモノ」に傾倒していますが、青空も、そんなモノの代表格ですね。

 例年と違うのは、イブニングのバリエーションです。ブラックを基調とした ハイウエストのドレスは、後半のおよそ半数を占めました。「来年の春夏は、もうちょっと良い時代になっていると信じて」、パーティーやウエディングにぴったりのスタイルを打ち出したかったと語ります。シンプルに回帰した今シーズンでも、イブニングだけはスパンコールが盛りだくさん。そして多くのモデルが手にしたカゴバッグには、花が入っていました。じんわりします。

アナ スイ

・リアルショーをライブ配信
・全28ルック

 振り返ればちょうど1年前、「コロナが人の気持ちを大きく変え、結果、ファッションも様変わりした」ことを僕に強烈な形で教えてくれたのは「アナ スイ(ANNA SUI)」でした。皆さん、「アナ スイ」って、どんなイメージですか?黒や紫に彩られたゴスの世界を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?それが1年前は、明るいカラーバレットと温もりに溢れる素材を多用し、メイクではダークアイから決別!!ゴスロリの世界から距離を置きました。聞けばコロナとBLM運動の激化で“おうち時間”が長くなったアナは、家族と一緒にアップルパイを作るなどの時間の価値を再認識。テーブルクロス風のコットンや壁紙を思わせる小花柄など、ゴスと決別し、キッチンに溢れる素材や色柄を使ったピースフルなコレクションを見せてくれました。

 そんなアナは今シーズン、一体、何を考えたのでしょう?彼女は、「具体的な場所じゃなくて良いの。でも私たちは今、みんな、南国のリゾートに出かけたいハズ」と話します。今年もいきなり共感です。この夏も、海、行けなかったもんなぁ~(涙)。結果生まれたのは、「究極にファンタジーなリゾート」!!“どピンク”に始まり、ネオンカラーのグリーンへと流れ、白を挟みながらも、最後はピンク×グリーンが入り混じるという、まるでディズニーランドにあるハワイの鳥が歌い出すアトラクション「魅惑のチキルーム」のようなコレクションです。ま、まぶしい!

 「アナ スイ」らしさは、余白さえあれば柄を詰め込んじゃうくらいの圧倒的なモチーフ使いで健在。米「WWD」の記事には、サンダルの「テバ(TEVA)」からソックスの「アツギ(ATSUGI)」、ジュエリーの「エリクソン ビーモン(ERICKSON BEAMON)」まで、さまざまなコラボパートナーの記載もありました。カテゴリーを超えて1つの「アナ スイ」スタイルを作り出そうとする意気込みは、「ディスカウントストア以外なら販路として考えたい」とファミマでマスクを販売し即完売したジャパン社のビジョンとも共鳴するなぁ、なんて考えました。

ロダルテ

・リアルショーを開催、SNSでルック発表
・全74ルック

 さて、本日のラストは「ロダルテ(RODARTE)」。ローラ&ケイト・マレヴィ(Laura & Kate Mulleavy)姉妹によるブランドは、実用性が際立つニューヨーク・コレクションの中ではコンセプチュアルな存在でした。

 ところが、やっぱり今シーズンは、布の動きが印象的なリラックスムード。生地を手繰り寄せ、ドレープを刻み、レースと切り替え、バイアスカットの袖や裾を取り付けるなど、布の動きを意識しています。屋外のショー会場には、ちょうど良いカンジに、いやちょっぴり強すぎるくらいの風が吹き、ドレープやプリーツが揺らめきます。ただ中盤のボレロを重ね着したようなジャケットなどは、ちょっぴりコンセプチュアルすぎてトゥー・マッチなスタイルだったかな?肩口から垂れ下がった生地を捻って裾とドッキングさせたドレスも、たまたま風が吹き荒れて大きく膨らんでしまったせいもあり、「歩きづらそうね(苦笑)」と思えてしまいました。

 圧巻は、フィナーレでした。淡いラベンダーからオフ白まで、淡いカラーパレットのグラデーションで見せるチュニック丈のワンピースのオンパレードです。ワンピースには、縫製がほとんどありません。微細なパターンと色の差異で、後半36ルックのドレスを構成したのです。このカラーパレットは、全米各地の自然の風景にインスピレーションを得たものと言います。装飾は、華奢なゴールドのネックレス1本だけ。そのシンプリシティは、古代ギリシアの女神を彷彿とさせます。

 きっと「ロダルテ」の22年春夏は、これがメーンになるでしょうね(笑)。となると、前半はちょっと冗長だったのかも?全28ルックと型数を絞り込んだ「アナ スイ」の後に見てしまったせいか、「もう少し精査したら、サンプルの数も減ったのになぁ」なんて考えてしまうのでした。

 ウィズ・コロナ生活が始まって早1年半。この間、ファッション・ウイークは必然的にデジタル開催を強いられましたが、「SNSでバズらない」や「バイヤーやメディアが、新しいブランドを探せない」などの課題が露わになりました。そのせいか(!?)、2022年春夏シーズンは「ガマンできない!」と言わんばかりにリアルショーを再開するブランドが続々。この記事にある通り、ニューヨークでは、ほとんどのブランドが何らかの形でリアルイベントを再開します。でも、日本にいる私たちは、未だかつてのような取材が再開できません。そしてブランドのいくつかは、「どうせ日本から人は来ない」と割り切り、現地在住の日本メディアの関係者さえ門前払いだそうです(泣)。「このままでは、イカン!!」。そう思い「WWDJAPAN」は、地球の真裏にある日本から引き続き情報発信。リアルショーの再開に伴いデジタル取材は難しくなりそうですが、ブランドのオウンドメディアやSNS、YouTube、そして米「WWD」の記事を見ながら、ウィズ・コロナ&アフター・コロナのファッションウィークの片鱗を探します。

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