ファッション
連載 コレクション日記

アバターに着せ替え&ユーチューバーGenjiが解説の「N. ハリ」に新時代の到来を痛感 地球の裏側からNYコレ鑑賞記 Vol.3

「トム ブラウン」

・ムービーをSNSなどで公開
・全65ルック

 「トム ブラウン(THOM BROWNE)」がニューヨーク・コレクションにカムバック。パートナーでメトロポリタン美術館の首席キュレーターを務めるアンドリュー・ボルトン(Andrew Bolton)監修の展覧会「In America:A Fashion Lexicon」のお祝いを兼ねているそうです。ちなみに「Lexicon」とは「辞典」という意味。東京・六本木の国立新美術館で開かれていた「ファッション イン ジャパン」を思い出します。今は、自国の歴史を見つめ直す良い機会なのかもしれませんね。

 コレクションの舞台は、庭園でした。ウエストは絞り反対にお尻は大きく膨らんだ、まるで近世の貴婦人のような体型のモデル2人が「トム ブラウン」らしいシャツにネクタイ、ジレ、そしてジャケットという重ね着を模したトロンプルイユ(だまし絵)のワンピース姿で、スーツ地やシルクで作った花々を縫い付けたケープ姿のモデルの合間を歩き回ります。ケープ姿のモデルは一人一人、それを脱ぎ捨ててランウエイをウォーキング。スーツ地だし肩口はスーツ同様の仕立てなので「トム ブラウン」とすぐに理解できますが、驚くほどシンプルなスタイルです。これまでの「トム ブラウン」と言えば、まるで“劇場”のようなストーリーで、彼の頭の中を最大限にデフォルメした“衣装”を見せてくれていた印象ですが、今シーズンは、このコレクションが普通に店頭に並んでいてもおかしくありません。いくつかのトップスは、片方が半袖、もう片方が長袖でしたが、それは美術館が所蔵している古代の彫刻などにインスピレーションを得たのかな?

 もう一つの大きなグループ、グレーのシンプルなセットアップとコントラストを描くカラフルなドレスは、チュールを幾重にも重ねたものでした。よく見ると美術館の彫刻のように、男性の裸体や、その上に被せた「ヴィオネ(VIONNET)」風のドレスのような柄が見えます。これは、チュールにプリントしたのではなく、チュールを幾重にも重ねて描いたものだそう。「ホント!?」と思ってしまうくらい、圧巻の手仕事。でも、女性をコルセットから解放した「ヴィオネ」のようにシンプルです。彼は常々ジェンダーを超越していますが、今回はグレーのトップス&スカートのルックも、カラフルなドレスのスタイルも、男女の区別なく楽しんでいます。

「アリス アンド オリビア」

・ルック写真を世界に配信
・全33ルック

 僕にとってのニューヨーク・コレクションの楽しみの1つは、この「アリス アンド オリビア(ALICE + OLIVIA)」でした。理由は、わかりやすくて“ギャルい”から(笑)。見た瞬間に理解できる“ど直球”のクリエイションと、それゆえのキャッチーな分かりやすさを楽しみながら半年後のお買い物計画を思案するNYガールズに揉まれ、大混雑のプレゼンテーションに決死の覚悟で乗り込むのは、もはやスポーツのようで楽しかったのです(今、あんなに大混雑のプレゼンテーションを開催したら、間違いなく怒られちゃうでしょうねw)。そんな本能に忠実な「アリス アンド オリビア」は今シーズンも、とってもわかりやすく、見た瞬間、元気になれました。

 赤!オレンジ!黄色!緑!そして青!白と黒も入れちゃえ!

 はい、これでコレクションの半分は、説明が終了です(笑)。70年代のレトログラマーなスタイルを、原色一色で、肌も見せながら、もちろんスタイルは抜群によく見えるように工夫しながら楽しんじゃおうよ!というムードに溢れたドレス(スリットが深い!)、ジャケット&スカート(どちらも超マイクロ丈!!)、そして胸元がバックリ開いたドレス(プリーツ多め!!!)がてんこ盛り。「高揚するファッションって、こういうコトだよね?」と改めて感じるのです。虹色、そしてスマイルマークのロングスカートが続き、フィナーレは、花の刺しゅうがまさに百花繚乱でした。

 フレアなハイウエストパンツは、エコフレンドリーな素材仕立て。レザーのスカートは、ビーガンだそう。楽しさを犠牲にすることなく、サステナブルに取り組もうとする心意気も素敵でした。

「N. ハリウッド コンパイル」

・アプリ&YouTubeで配信!?
・全17ルック

 本日のラストは、「N. ハリウッド(N. HOOLYWOOD)」のボーダーレスライン“コンパイル”。専用アプリを開発し、デジタル上でアバターに最新コレクションを着せ替えられちゃう実験的な試みに挑戦です。アプリを立ち上げると現れるのは、(ちょっと人が少ないけれどw)ニューヨークの街並みと裸の男性のアバター。その男性に、2022年春夏の17ルックを自由に着せ替えられるのです。

 最新コレクションをまとったアバターは、画面を操作すると、360度上から下までいろんなアングルから確認できるほか、フードや袖、襟などは、色や柄が変更できます。ってコトは、本物の22年春夏コレクションにも、同じような色違いや柄違いがあるのかな(笑)?

 アプリだけで最新コレクションを理解するのは、正直なかなか難しいところです。逆をいえば、「トップスは大きくて、ボトムスはスリムなのかな~?」とか「ドロップショルダーのアイテム、多め?」とか「ジャケットの袖は、ローゲージのニットなのかな?」なんて想像が膨らみます(笑)。想像が膨らんだアナタは、GenjiさんのYouTubeをご覧ください。このアプリについて色々語り、想像力をさらに掻き立ててくれることでしょう(笑)。Genjiさんは「案件じゃない」と言っていますが(笑)、尾花大輔さんと一緒に盛り上がりながら作った動画であることが伺えます。そんなコラボレーションも含めて、新しい時代へのチャレンジを感じさせてくれました。

 ウィズ・コロナ生活が始まって早1年半。この間、ファッション・ウイークは必然的にデジタル開催を強いられましたが、「SNSでバズらない」や「バイヤーやメディアが、新しいブランドを探せない」などの課題が露わになりました。そのせいか(!?)、2022年春夏シーズンは「ガマンできない!」と言わんばかりにリアルショーを再開するブランドが続々。この記事にある通り、ニューヨークでは、ほとんどのブランドが何らかの形でリアルイベントを再開します。でも、日本にいる私たちは、未だかつてのような取材が再開できません。そしてブランドのいくつかは、「どうせ日本から人は来ない」と割り切り、現地在住の日本メディアの関係者さえ門前払いだそうです(泣)。「このままでは、イカン!!」。そう思い「WWDJAPAN」は、地球の真裏にある日本から引き続き情報発信。リアルショーの再開に伴いデジタル取材は難しくなりそうですが、ブランドのオウンドメディアやSNS、YouTube、そして米「WWD」の記事を見ながら、ウィズ・コロナ&アフター・コロナのファッションウィークの片鱗を探します。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

リーダーたちに聞く「最強のファッション ✕ DX」

「WWDJAPAN」11月18日号の特集は、毎年恒例の「DX特集」です。今回はDXの先進企業&キーパーソンたちに「リテール」「サプライチェーン」「AI」そして「中国」の4つのテーマで迫ります。「シーイン」「TEMU」などメガ越境EC企業の台頭する一方、1992年には世界一だった日本企業の競争力は直近では38位にまで後退。その理由は生産性の低さです。DXは多くの日本企業の経営者にとって待ったなしの課…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。