ファッション系の大学生サークルも、最近はサステナビリティを強く意識している。現役大学生の多くは、デジタルネイティブのZ世代。その存在感は大きくなるばかりで、つながり方や対話方法を模索する企業も多いだろう。そこで「WWDJAPAN」は現役大学生らとタッグを結び、彼らのリアルやファッション業界への思いなどを届ける。どんなサークル活動をしているのか、またいち“若者”として、業界に発信したいことなどを寄稿形式で語ってもらった。
共同代表の野中晴菜と樋口栞那が2020年の4月に設立したcarutena(カルテナ)では、いらなくなった衣類を消費者から自主回収し、トートバッグやエコバッグ、巾着などの小物商品を製作・販売しています。8月にはアパレルメーカー、アダストリア(ADASTRIA)のアップサイクリングブランド「フロムストック(FROMSTOCK)」とコラボしました。シンプルでロスの少ない“黒染”を施した「フロムストック」の生地と、私たちのシグネチャーモデルのトートバッグへのリメイクを合わせた“ダブル・ストーリー・バッグ(Double Story Bag)”を製作。世代を超えたコラボでした。9月25、26日は、「無印良品」錦糸町パルコ店でのポップアップ販売を予定しています。サステナブルファッションに取り組むほか2ブランドとともに参加して、「おやさい」x「おしゃれ」がコンセプトのファッションブランド「ラピス・プライベート(LAPIZ PRIVATE)」とコラボしたアイテムを販売します。
トートバッグ、手提げバッグという意味を持つスペイン語の“cartera(カルテーラ)”から団体名を決め、洋服の大量廃棄問題にアプローチすべくトートバッグの製作を始めました。発足当初は服のリメイクなども検討しましたが、「性別」「年齢」「人種」関係なく、誰もが手軽に手にとれる商品を消費者に提供したいという思いからトートバッグにしました。駅や大学、ウェブサイトなどを通して回収した古着はすでに約400枚あり、今も回収を続けています。取り組みの根幹にあるのは、利益を求める姿勢ではなく、服の大量廃棄問題を一人でも多くの消費者に知ってもらいたいという気持ち。私たちが手掛けるアイテムを使うことが、サステナブルな生活の一歩になるよう願いを込めています。
共同設立者の野中が洋服の大量廃棄問題に課題意識を抱いたきっかけは、大学の講義でした。ファッションショーを運営する団体に所属していた経験もあり、ファッションが大好き。ファッションは多くの人に幸せを届けるものだと信じていましたが、国際協力を専攻とする授業の中で、環境破壊の実態や工場での人権侵害があると知り、自分にできることはないかと考えました。樋口は、アパレル業界でのアルバイトから業界の社会問題を知りました。知的好奇心が強く、セール後の商品の行方に疑問を感じました。その中で、アパレル業界のビジネスは地球環境の汚染の上に成り立っていることや、先進国と、そういった国々が衣類などを寄付している開発途上国との間に不平等があることを実感。一方で自分にはファッションのおかげで同じ毎日が少し楽しくなった経験があるので、多くの人にファッションの楽しさを伝えながら、状況の改善にも取り組みたいと決意しました。
現在は多様な大学生や専門学生が集まって、20人で活動しています。アイテムの販売に加えて、小学校へ足を運び社会問題やSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)を題材にした課外授業や、針を使用しないトートバッグのオンラインでワークショップを開催。上の世代や下の世代にもこの問題を知ってもらい、自分事ととらえてもらうことを目指しています。生産されている衣類のうち6割は破棄されていることや、アパレル業界が環境を汚染している業界ランキングで第2位と聞いても、自分には関係のない話に感じられるかもしれません。でも実際破棄される洋服の多くは、私たち消費者が生んでいるもの。取り組みや発信を続けて、まずは社会問題について知るきっかけとなってほしいです。サステナブルは、すごく身近な生活の習慣ととらえています。購買行動や購買後の意識を改めて見つめ直す人が増えたらいいと思います。リサイクルショップに持っていくことやメルカリで販売することに加えて、carutenaに渡すのも選択肢にぜひ入れてみてほしいです。
9月20日発売の「WWDJAPAN」は、ファッション系サークルを持つ4つの学生団体の声に耳を傾け、Z世代のファッションとサステナビリティに対する意識や考えを調査。Z世代とのコミュニケーション方法を模索する業界人は必読だ。