ファッション

“ファッション好きな若者たち”の思い 自作のショーを通して社会とつながる慶應義塾大学のファッション団体

 ファッション系の大学生サークルも、最近はサステナビリティを強く意識している。現役大学生の多くは、デジタルネイティブのZ世代。その存在感は大きくなるばかりで、つながり方や対話方法を模索する企業も多いだろう。そこで「WWDJAPAN」は現役大学生らとタッグを結び、彼らのリアルやファッション業界への思いなどを届ける。どんなサークル活動をしているのか、またいち“若者”として、業界に発信したいことなどを寄稿形式で語ってもらった。

 Keio Fashion Creatorのメイン活動は、毎年12月に開催するファッションショーです。コロナ禍前には1日で600人以上の来場者数を記録。年々クオリティーの向上と規模感の拡大が進んでいます。2020年には「国立科学博物館 地球館」で開催し、「辿る」というテーマのルックとノスタルジックな会場の雰囲気がマッチしたショーを届けました。

 私たちの集大成であるファッションショーは、団体と社会をつなぐコミュニケーションの手段です。ショーでは、みんなが同じ瞬間を「体験」できる。意思を表現・表明するために、実際に観て肌で感じるというファッションショーの醍醐味にこだわっています。なぜなら、ファッションは体の最も近くで自分を守り、同時に力を与えてくれる存在でもあるから。「服と人間が一体となって風をはらみ、動いている姿の美しさを思い出そう」「何かしらの“媒体”を通して服を見ることに慣れてしまっている現代において、服の本来の姿を忘れかけてはいないだろうか?」と投げかけています。

 Keio Fashion Creatorは、02年に慶應義塾大学の「ファッションビジネス研究会」から独立する形で設立。09年から服飾専門学校エスモードジャポンと提携した授業を開講し、未経験者でも一から本格的に服作りを学ぶことができる環境を整えています。12年にインターカレッジ化し、21年現在は約150人のさまざまなバックグラウンドを持つ学生が所属します。それぞれの部員がショーの開催に向けて、デザイナー、ディレクター、プレス、モデルマネージャーの4つの役職に分かれ活動。デザイナーは洋服の製作を担当し、ディレクターはショーの音響、照明、映像などの総合演出やインビテーションを作成します。プレスは団体と企業様間の取りまとめや企画の打ち出し、SNSの運営などを担います。モデルマネージャーはショーに向けたモデルハンティングや当日の導線案内などを指揮します。

 20年度のファッションショーは無観客でのオンライン配信となったため、細かなディティールや生地感を存分に伝えることが出来ませんでした。そこで21年5月、ルックをより多くの人に届けるために展示会を開催しました。展示会ではルックを制作したデザイナーが実際にその場でアイテムの説明をしたり、質問に答えたりしました。当団体に興味を抱く学生や企業様と話が弾む場面も。ほかにも、「作品を通して伝えたいこととは何か」「どのように表現するのか」を一から考え、作品を撮ります。衣装はレンタルアイテムやデザイナー部員が制作したルックを使用。ヘアメイクからカメラマン、スタイリング、オブジェ制作も部員が担当します。作品は当団体のインスタグラム(@keio_fashioncreator)に掲載中です。

 当団体は学生ファッション界の第一線にいる身として、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に関連する企画にも力を注いでいます。若者マーケティング機能の確立と情報発信のための研究機関「シブヤイチマルキューラボ(SHIBUYA109 lab.)」との共同企画「アイズ・プロジェクト(EYEZ PROJECT)」では、トートバッグを製作。Z世代である私たちがSDGsの課題に取り組むことで同年代が理解を深めて、行動するきっかけとなるような情報を発信します。上智大学が伝統的なミスコンを廃止して新たに開催する“新しいミスコン”「ソフィアンズコンテストSOPHIAN’S CONTEST」では、ファイナリストが着なくなった服にリメイクを施し、衣装を提供する共同企画を実施中です。

 21年度も12月中旬にファッションショーを開催する予定です。コロナ禍ではありますが一人でも多くの方にファッションショーを通した感動を味わってもらえるよう励んでいきます。今後も学生服飾団体として大きな影響力を持っていると自負しているからこそ、「ファッション好きとしての責任」をもちながら取り組みます。私たち“ファッション好きな若者たち”のリアルな声をお届けできたらうれしいです。


 9月20日発売の「WWDJAPAN」は、ファッション系サークルを持つ4つの学生団体の声に耳を傾け、Z世代のファッションとサステナビリティに対する意識や考えを調査。Z世代とのコミュニケーション方法を模索する業界人は必読だ。

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