ファッション

廃棄衣類を紙に再生 循環型社会を目指す「サーキュラー コットン ファクトリー」が始動

 繊維の廃棄物から紙を作り、資源としての活用を目指す循環型プロジェクト「サーキュラー コットン ファクトリー(Circular Cotton Factory 以下、CCF)」が始動した。同プロジェクトは、日本におけるオーガニックコットンの啓発活動に30年にわたって取り組んできたアバンティ(AVANTI)創業者の渡邊智恵子・代表取締役会長が旗振り役となり発足。ほかにもグラフィックデザイナーの福島治と、世界初の多機能快適素材“カバロス(COVEROSS)”を開発したハップ(hap)の鈴木素・代表取締役社長、ファッションブランド「フォーティファイブ・アール(45R)」を運営するフォーティファイブアールピーエムスタジオ(45rpm studio)の中島正樹副社長の3人が参画している。

 CCFによると、日本で年間生産される約28.5億枚の服の半分以上は売れ残り、新品のまま破棄されているという。また、生産工程で発生する繊維クズや店舗での売れ残り衣料、家庭から出る中古衣料などによる繊維廃棄物は世界のゴミの14%を占めるが、繊維のリサイクル率は17.5%と低い。一方で、日本での紙のリサイクル率は67%と割合は高く、渡邊は繊維廃棄物を紙に再生することで間口を広げ、資源を循環させるCCFのシステムを考案した。実現には約2年かかったという。

 その最初の取り組みが、繊維廃棄物を50%以上配合したサーキュラー コットン ペーパー(Circular Cotton Paper 以下、CCP)の開発と事業化だ。会見に登壇した新生紙パルプ商事の花輪年秋氏はCCPについて、「回収された廃棄コットンを原料の50%以上に使用した画期的な紙だ。これまでも廃棄物を混合した紙は数多くあったが、配合率は10%程度、高くて30%だった。50%以上はもはや主原料といえるレベルだ」と評価。今後は、廃棄物の回収方法や回収後の分別、タグやボタンの除去、製紙メーカーの再生技術といった現状の課題を解決しながら、CCPのさらなる品質向上を目指す。

 さらに、CCP普及のための“100プロジェクト”も実施する。CCFの取り組みに賛同し、パートナー会員となった企業や団体のCCP活用例を紹介。100の事例を達成した際は、「洋服で未来(紙)をつくる100 Project」を書籍化する予定だ。現在パートナー会員を募集中で、すでに日本郵便をはじめ、サザビーリーグや和菓子屋の榮太樓總本鋪、久遠チョコレート、統合医療 希望クリニックなど、計27の企業や個人が賛同している。年会費は6万円(月額5000円)。

 9日の会見には、ファッションジャーナリストの生駒芳子氏や日本郵政の増田寛也社長、「ミナ ペルホネン(MINA PERHONEN)」の皆川明デザイナーも参加。皆川デザイナーは、「産業廃棄物から取り出したコットンを再生コットンではなく紙にして、新しい使い方を模索する取り組みは、他産業や私たちの暮らしにもプラスに働くだろう。ファッション産業の廃棄物自体を減らすことも重要な課題だが、今も大量に残っている廃棄コットンをまずは紙に置き換え、いろいろな産業に役立てることは意義深い。CCFのプロジェクトに期待している」と、ビデオメッセージを寄せた。

 最後に渡邊は、「原料のトレーサビリティー、繊維廃棄物の高い含有率、商品の品質維持を叶えた信頼される紙は、1社だけでやることではなく、仲間と共に作っていくものだと考えている。それぐらい待ったなしの現状が目の前にある。パートナーのみなさまとCCFを盛り上げていきたい」と、思いを語った。CCFは今後、繊維廃棄物配合率70%の和紙の開発をはじめ、繊維から繊維、建材、エネルギーなど、他業界でも活用できる資源を作りだす技術開発を行っていく。

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