
近年、環境や社会問題に強い関心を抱くZ世代といわれる若者の存在感はますます大きくなるばかり。若者たちはファッション業界のサステナブルをどう考え、どのような企業姿勢に共感するのだろうか。そこで「WWDJAPAN」は学生団体と、サステナビリティに真摯に取り組む企業を招待してオンライン座談会を開催した。「Z世代」「若者」「学生」という言葉で区分するのは簡単だが、その中でも考えや意識は十人十色。それぞれのファッションやサステナビリティへの意識を2回に分けてお届け。
後半では、企業に「次世代に見せたいファッションの未来」を語ってもらい、学生からは「企業やブランドに期待すること・求めること」を聞いて、共に向かう未来について語り合った。(この記事はWWDジャパン2021年9月20日号からの抜粋に加筆をしています)
本田:団体に入りサステナについて発信してから、注目を集める機会が増えました。発信も、サステナブルな活動の一つですよね?サステナビリティについて学んでいる私たちでさえ、今回のような機会は貴重。知る機会が増えたら、って思います。
H&Mジャパン 山浦誉史サステナビリティ・コーディネーター(以下、山浦)私たちも学生と直接話し、ダイレクトな意見をいただけるとうれしいです。一緒に考えられる場所があるといいですね。
WWDJAPAN(以下、WWD):藤田さんは、Z世代の社会人。企業として取り組むようになって、サステナビリティに対する考え方は変わりましたか?
ロンハーマン 藤田トラヴィス恭輔サステナビリティ実行部マネジャー(以下、藤田):企業の側に立って、次の世代、子どもたちの世代への責任感が増しました。責任の一環として、今は自社商品の生産背景を把握したいと思っています。まだ取り組めていない企業も多いのではないでしょうか?サプライチェーンは、複雑です。でも「何を作って、何を販売しているのか?」を知ることは、自分を知ること。それを可視化して、分かりやすく面白い形で発信することが大事だと思っています。
松本:僕含め友達の多くは最近、フリマアプリで洋服を買うことが多いです。自社の商品が2次流通で売られていることについてどう思いますか?
山浦:商品がどのような経緯をたどって売られているかが気になります。買ってすぐ転売されていると、やはりモヤっとすることはあります。ただ中古市場で売られるということは、商品が循環している証拠です。開発の段階で、リセールできる商品かどうかを基準にして耐久性・品質をチェックしています。
藤田:「H&M」の山浦さんと同じく、転売目的だとブランド価値への影響もあるので、複雑な思いです。ただ、古着の需要の高さを考えると、ファッション業界でも自社の古着ビジネスを模索する企業が増えていくと思います。フリマアプリで売られるより、自分たちでリセールしてしまった方が明らかに効率的です。
山浦:皆さんは学生の中でも、ファッション感度も環境意識も高い人たちだと思いますが、サークル以外の場所でも友人らとサステナビリティについて話すことは多いんですか?
金森:僕の周りではほとんど話題になりません。僕の感覚では、女性の方がサステナビリティについて情報を敏感にキャッチしていると思います。
小川:就職活動でサステナビリティが話題に上がることがあります。企業と話すと、「周りの正直なサステナブル観を聞かせて」と求められることが多いんです。Z世代は環境意識が高いと思われているので、率直に「そうでもない人もいる」と伝えるとすごく驚かれます。学生の中には、話題になり「“サステナ意識”が高い人材の方が良い」とされる需要のために、興味はなくても取り繕って勉強をする子もいます。イメージ通りの返事を求められることに困惑してしまいます。
藤田:企業として消費者の考えを知りたくて質問する気持ちも分かるけれど、Z世代・ミレニアル世代の自分の周りだって興味の程度には差異があります。サステナブルに関心があることを求めすぎてしまうのはよくないですよね。
山浦:サステナビリティへの考え方はその人を知る手段でもあるので、面接などで話題になるのは理解できます。先日、大学で講演をする機会がありました。講演後の反応や感想を見ると、肌感としてはやはり関心が高い若い年代の子たちは多い。逆に、企業側にそういった熱意を持った人たちを受け入れる準備があるのか考えてしまいました。希望を持って業界に入ってくる皆さんを失望させてしまうのではないかと危惧します。
WWD:では企業の皆さんが次世代に見せたいファッションの未来は?
藤田:10年前にファッションが好きな人たちは、環境のことを意識せず思う存分自己表現できました。気候変動への危機意識が高まった今は、ファッションが好きであることに対して罪悪感を抱いていたり、業界をネガティブに捉えていたりする人が多いように感じます。だからこそ次世代には、純粋にファッションを楽しめる世の中を残したい。あくまで今課題なのは、大量廃棄を伴う生産・販売方法や、利益だけを追うビジネスモデル。本来、ファッションそのものに罪はないはずなんです。
山浦:サステナビリティを語る上で、そのファッションが楽しめるものかどうか、は大切なことです。サステナビリティが足かせとなって、みんなのファッションの可能性を邪魔してはいけないので、両立する未来をつないでいきたいです。
WWD:学生の皆さんが企業やブランドに期待することはなんでしょうか?
松本:ファッションにはいつまでも特別な存在でいて、デザインやモノ作りにこだわり続けてほしいです。団体での活動を通して洋服作りに関わる一人として、サステナビリティを制約に感じてしまう時があります。皆さんが苦労する気持ちもすごく分かります。それでも今までいろんな楽しみ方があったファッションが均一になってしまったら、とても悲しいです。
小川:私は企業には、オープンでいてほしいです。というのも消費者に見えるのは、企業の良かったところだけ。実際はサステナビリティを取り入れるのに苦労している企業もあるだろうし、誰だっていきなり変わるのは難しいはず。完璧な姿だけでなく、過程や失敗も見せてほしいです。
金森:今は多くの企業やブランドが口をそろえてSDGsやサステナブルをアピールしすぎていて、正直僕は違和感を覚えることがあります。大々的に打ち出す必要がないくらい当たり前になったらいいのにって思います。
藤田:正直なアプローチが皆さんには響くんだと驚いています。ファッションは大前提としてかっこよくあらねばと思いますが、画一的でうわべだけのアプローチはイケてないですよね。
内山:私は、日頃から環境問題に関心がない人も巻き込んでいけるように、「サステナブルだから買う」じゃなくて、「買ったものがたまたまサステナブルなものだった」くらいの感覚が広く浸透したらと思っています。普段から問題意識を持って生活に気を配っている人もいると思いますが、多くの人はまだまだハードルが高いと感じていたり、情報を知らなかったりという現状があります。業界側から変わって、消費者は知らずにサステナビリティに貢献していた!となるくらい日常に溶け込んでいってほしいです。
編集協力:羽田彩香/明治大学