ファッション

「ジョン ローレンス サリバン」が東京でリアルショー 美しくもグロテスクなテーラードで「見る人の感情を動かす」

 「ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)以下、サリバン」は、2022年春夏ロンドン・コレクションをリアルショーで発表した。舞台は東京・新木場で、昨シーズンに続き東京でのランウエイだ。「前回のリアルショーでは、ブランドを支える日本のファンに世界観を伝えられた。同時に、自分自身もさまざまな感情が湧き上がってきた。これこそ、リアルショーの醍醐味だ。今日もエモーショナルで、感情を動かすランウエイにしたい」と柳川荒士デザイナーは語った。

親交深い“チーム・サリバン”
一丸でショーを仕上げる

 今季のスタイリングは、ブランド初期のランウエイを支えた坂元真澄が担当した。演出やヘアメイクアップアーティスト、フォトグラファーらも、ブランドと親交の深い人ばかりだ。リハーサルでは、モデルの着せ替えが上手くいかず、モデル全員が一から歩き直すハプニングにも見舞われた。それでもクリエイターたちは取り乱すことなく、柳川デザイナーを中心に意見を交わしながら、ルックの差し替えやスタイリング調整など、本番直前までベストの形に仕上げていった。

ブランドの新たな魅力
“狂気的な人間美”

 今シーズンのテーマは“MAD MUD(狂った泥)”。ブランドの軸であるテーラードスタイルに、「狂気的な人間美」(柳川デザイナー)を加えて美しさと醜さを両立させるクリエイションだ。基軸となるのは、肩や腰、袖をくり抜いたブルゾンや身頃の下半分をぶった切ったクロップドジャケット、腿をカットアウトしたスラックスなど、一部分をくり抜いたテーラードアイテムたち。これらを、映画やアーティストに着想したスタイルに落とし込んでいく。

 スーツの上からオーバーコートを重ねるスタイルは、映画「アメリカン・サイコ」で、サイコキラーが返り血から服を守るために着用するコートに着想した。長くスリットを入れたコートがスーツの上で軽やかになびき、シースルー素材やサテン、パテントレザーなど、バリエーション豊かな素材使いも光る。終盤に登場したヘッドピースは、ウィッグメイカーとしても活動するアーティスト河野富広によるもの。髪の毛と卵の殻で制作したヘッドピースが、「サリバン」のクールな世界観にグロテスクな雰囲気を添える。

 昨シーズン登場したスクエアトゥブーツは、角を際立たせたデザインにアップデートした。コートやパンツに落とし込んだ、赤い差し色が印象的なグラフィックは、デザインユニット、アホネン&ランバーグ(Ahonen & Lamberg)がシーズンテーマをイメージして制作した。

 これまでの「サリバン」は“分かりやすい格好よさ・美しさ”が持ち味だったと思う。今シーズンは、特に後半のパートは素直に美しいとは思えない人もいるかもしれない。しかし、“美しさとは何か”を問いかけるようなクリエイションが、ブランドの新しい強みになるのではないかーーそう思わせるランウエイだった。

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