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新生ポップスター、オリヴィア・ロドリゴがファッションにおいてもZ世代から共感を集める理由 キーワードはY2Kとビンテージ

 「イーベイ(eBay)」や「ポッシュマーク(Poshmark)」といったリセールプラットフォームで、2000年代を意味する“Y2K(Year 2000、2000年)”のビンテージファッションが若者の間で多く検索されている。そのトレンドをけん引するのが、18歳のポップスター、オリヴィア・ロドリゴ(Olivia Rodrigo)だ。

 オリヴィアは1月にリリースしたデビューシングル「Driver's License」でメガヒットを叩き出した大型新人。ディズニー映画「ハイスクール・ミュージカル」のリブート版「ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル(High School Musical: The Musical)」で公私共にカップルであったジョシュア・バセット(Joshua Bassett)との失恋を歌った「Driver’s License」は、“運転免許を取った。あなたの家まで私が運転して行けるようになると喜んでくれたあなたはいない”“きっとブロンドのあの子と一緒にいるのね”という切ない歌詞が多くの共感を呼んだ。さらに、自身の恋愛を歌詞にのせることで知られるテイラー・スウィフト(Taylor Swift)の大ファンであるということや、テイラーがオリヴィアの曲を聴いてサポートしたこと、ジョシュアと“ブロンドのあの子”である女優・歌手のサブリナ・カーペンター(Sabrina Carpenter)がアンサーソングを出すなどといったゴシップ要素も再生数を飛躍的に押し上げる要因となった。

 同曲は2021年の「ビデオ・ミュージック・アワード(MTV VIDEO MUSIC AWARDS、VMA)」で「最優秀楽曲賞」を受賞するなど、オリヴィアは新人としては異例の音楽的成功を収めているが、フリマアプリで手に入るビンテージファッションで初めてメインストリームで成功したポップスター、という点においてファッションの面でも特に注目すべき存在だ。

 リモートでしかファンを増やすことができないコロナ禍という環境でブレイクしたオリヴィアにとって、ファッションは自身のアイデンティティーを表現する上で欠かせないものだ。古着とハイブランドのビンテージをミックスした彼女のスタイルは、彼女と同年代のファンからの憧れと親しみやすさを兼ね備えている。

 7月に大統領に会うためにホワイトハウスを訪れた際には、1990年代の「シャネル(CHANEL)」のピンクのツイードスーツを着用して話題になったほか、着古したTシャツ、ノスタルジックなサングラス、キルトのマイクロミニスカートといったオフの日のパパラッチスタイルでも知られる。さらに「brutal」のMVでは、「ロベルト カヴァリ(ROBERTO CAVALLI)」や「ベッツィ ジョンソン(BETSEY JOHNSON)」の2000年代初期のクラシックなファッションも自身のスタイルに加えてきた。

 6月下旬にユーチューブ(YouTube)で行ったバーチャルコンサート「サワー プロム(Sour Prom)」では、「ハイスクール・ミュージカル」のセットような高校の体育館で撮影した。パフォーマンスで着用していた1980年代的なメタリックのドレス、オーバーサイズのテイラードジャケット、コンバットブーツはティーンアイドルを思わせる。一方で彼女の作る音楽は、ほかのミュージカルの共演者の音楽に比べてポップパンク的だ。さらにアメリカの女の子が日々直面しているようなSNSや失恋といった悩みを歌詞にして見せる弱さも、ファンの共感を得る要因になっている。

 オリヴィアのファッションはスタイリスト姉妹、シェネル・デルガディロ(Chenelle Delgadillo)とクロエ・デルガディロ(Chloe Delgadillo)が「Driver’s License」から手掛けている。「彼女が本当に着るであろう服を選び、隅々まで計算し尽くしている。インターネットのおかげで彼女はルックスを気にするし、気にしなければならないけれど彼女が気に入らないものだったら意味がない」と話す。ホワイトハウスで着用した「シャネル」のスーツの入手先であるロサンゼルスのアラルダ ビンテージ(Aralda Vintage)といったビンテージショップとやりとりするのはシェネルの担当だが、フリマサイトやアプリでユニークなアイテムを探すのはクロエの役割で、「朝起きると大体発送メールが届いている」という。

 スタイリストの“計算”の成果は出ているようだ。オリヴィアが着用したアイテムを紹介するインスタグラムアカウント(@OliviaRodrigoCloset)を運営する18歳、サラ・ミラー(Sarah Miller)は、「彼女はクールな友だち的な雰囲気を持っていると思う。いまだに小さな古着屋に通っていて、親近感がわく。すごく安いのに素敵な服が見つかることもあるし、私でも着こなせそう」と感じているという。アトランタに住むサラはオリヴィアが「ハイスクール・ミュージカル」に出演していた時から同アカウントを運営している古参ファンで、「最近はハイブランドのビンテージを多く着用するようになって、遠くから見ていてとても尊敬している。けれど、特にサステナブルファッションへの関心の高さなど、私が以前から好きだった彼女のスタイルや価値観は変わらない。ただそのスケールが大きくなっただけ。知名度を上げるにつれて、ビンテージファッションを武器に勝負に出ているのだと思う」と分析する。

 オリヴィアがデビューする以前から、ハリウッドを中心にビンテージアイテムのトレンドは存在した。カーダシアン(Kardashian)姉妹やハディッド(Hadid)姉妹はオフの日にビンテージアイテムを着こなす姿をパパラッチのカメラに捉えられていたし、音楽シーンにおいてもカーディ・B(Cardi B)が2019年の「グラミー賞(Grammys)」授賞式で「ミュグレー(MUGLER)」の1995年の貝殻を模したクチュールドレスで登場したほか、ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)もオーバーサイズのビンテージのTシャツを頻繁に着用していた。
 
 しかしオリヴィアの古着とビンテージファッションは独自性がある。パフォーマンスやMVではハイブランドのビンテージを着用するが、私服は全身古着でコーディネートしており、それがアーティストとしての自身のアイデンティティーの礎になっているのだ。サラは「エディトリアルの撮影やメディアに出るときもビンテージを着用しているのが興味深いし、彼女の独自性を強めている。古着やビンテージショッピングにスポットライトを当てていると思う」と主張する。過去9カ月間で目まぐるしいスピードでポップスターとして成長し、デビューアルバム「Sour」がアメリカのトップチャートを維持し続けていることをはじめ、100万再生を超えるSNS投稿の数々、テレビ出演、表紙起用など、デビュー以来オリヴィアのファッションが人々の目に留まる機会が増えたことでの古着ショッピングをより親しみやすいものにしているようだ。

 「斬新に見えるのは、着させられている感がないから。彼女がずっと古着を着てきて、今はビンテージの着用を増やし始めているから、自然に感じるのだと思う。ビンテージのスタイリングの戦略についてきちんと話し合ったことはなくて、ただ彼女が着たいと思う格好をさせているだけ。ビンテージだと誰かと被る心配をしなくてもいい」とシェネルは明かす。

 彼女のようなポップスターならすでにファッションブランドやビューティブランドと契約を結んでいても不思議ではないが、まだそうしたニュースがないのは彼女のあまりの飛躍の早さに業界がついていけていないのだろう。もし今後ブランドと契約することがあっても、「もし特定のブランドを着用しなければいけなくなっても、それはそれでクールだし楽しくなりそう」とシェネル。「私たちはいつも『あなたはポップスターで、他の人は着ることができない服を着ることができるのだから、楽しんで』と伝えているの。私たちは若くて楽しいスタイルをキープするために、これからも気鋭ブランドやアクセサリーをコーディネートしていくつもり」。

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