スイス発のランニングシューズブランド「オン(ON)」を運営するオン・ホールディングAG(ON HOLDING AG)は、9月15日にニューヨーク証券取引所に新規上場(IPO)した。当日は同社の経営陣と共に大勢のアンバサダーらがウォール街を走り、同証券取引所のオープニングベルを鳴らした。
公開価格は1株20〜22ドル(約2180〜2398円)の見込みだったが、公開前日に24ドル(約2616円)に決定された。IPOでの売り出し株数は3110万株で、資金調達額は7億4640万ドル(約813億円)。公開直後から投資家の旺盛な買いが入り、初値は35.40ドル(約3858円)と公開価格を大幅に上回った。16日の終値は公開価格と比べて56.2%高の37.49ドル(約4086円)となるなど、好調な滑り出しとなっている。時価総額は23億1200万ドル(約2520億円)。
同社が米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)に提出した届出書によれば、2020年12月通期の売上高は前期比59.2%増の4億2529万スイスフラン(約501億円)、純損失は前年の147万スイスフラン(約1億7340万円)から2752万スイスフラン(約32億円)へと赤字が拡大している。しかし、21年1〜6月期で見ると、売上高は前年同期比84.5%増の3億1545万スイスフラン(約372億円)、純損益は前年同期の3305万スイスフラン(約38億円)の赤字から375万スイスフラン(約4億4250万円)の黒字となっている。
現在、「オン」の商品は世界50カ国以上にある約8100の売り場で取り扱われており、20年12月にはニューヨークにグローバル旗艦店をオープンした。売り上げを地域別に見ると、49%が北米、44%が欧州となっている。チャネル別では、売り上げの38%がECによるものだという。
「オン」は“ランニングの世界を変える”をコンセプトに、トライアスロンのトップアスリートだったオリヴィエ・ベルンハルド(Olivier Bernhard)が、デビッド・アレマン(David Allemann)とキャスパー・コペッティ(Caspar Coppetti)と共に10年に創業。独自の技術開発力により、高いクッション性を持つ世界最軽量のランニングシシューズ“クラウド(CLOUD)”を生み出すなどして早くから注目を集め、ロードやトレイルのランナーを中心にファンを増やしてきた。16年からはアパレルも提供。19年には、スイス出身の男子プロテニス選手ロジャー・フェデラー(Roger Federer)がシニアチームメンバーに加わり、投資家およびアドバイザーとして同社に参画している。
アレマン共同創業者は、「調達した資金は、販売地域や販売網の拡大に加えて、サステナビリティ分野のさらなる強化に使用する。ランニングだけではなく、次世代のニーズに応えられる、アクティブなライフスタイル向けのプレミアムな機能性スポーツブランドとなることが目標だ」と語った。
同社はサステナビリティにも力を入れており、二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいるほか、24年までに全製品に再生ポリエステルおよびポリアミド、オーガニックコットンを使用することを掲げている。また21年1月には、100%リサイクル可能な機能性シューズ“サイクロン(CYCLON)”を発表した。これはサブスクリプションサービスでのみ提供されるモデルで、月額料金3380円で年2回程度シューズの交換ができるというもの。返却した古いシューズは素材別に分解され、新たなシューズの原料になるという。