大襟のトレンドが、着こなしを含めてさらに多様化し、パワーアップしています。第一の変化はサイズの巨大化。フリルやレースといった装飾や、ジェンダーレス化も勢いづいています。ほかにも、これまでとは違う素材やアイテムとの相性を試す新作が登場。装いに華やぎを添え、小顔効果も引き出すディテールとして定着しそうな気配です。
たとえば、「PATOU(パトゥ)」はクラシカルなケープに、肩先まで張り出した特大の襟をあしらいました。ドラマチックな見栄えはインパクトたっぷり。今回は、コペンハーゲンで8月に行われた2022年春夏ファッション・ウィークのストリートでキャッチしたファッショニスタの着こなしをお手本に、秋冬に向けた大襟スタイリングのポイントを探っていきます。
セットアップに“あふれ大襟”でジェンダーニュートラルな印象に
大襟にはエレガントな雰囲気が漂うので、マニッシュな装いとの組み合わせで、ジェンダーニュートラルなこなれ感を演出できます。スタイリングのコツは、大襟をジャケットの上から見せる小技です。
1枚目の写真は、レトロなムードを帯びた、クロップド丈の半袖ジャケットが印象的なパンツとのセットアップ。ジャケットの襟をほぼ覆い隠すくらいの大襟ブラウスを合わせて、ロマンチックなムードを注ぎ込みました。ここまで巨大な襟なら、小顔効果も期待大。パンツルックに華やぎも上乗せされています。
顔に近いポジションで目立ってくれる大襟を、差し色で生かすのも賢い使い方です。大襟ならではのインパクトが強まります。2枚目の写真は、カーキ系でまとめた、ジャケットとパンツのセットアップ。セットアップ自体は、サンドカラーに近い控えめのトーンですが、ブルーの大襟のストライプシャツが、ボクシーでボーイッシュなセットアップにさわやかな印象を添えています。襟元だけでなく、裾からも色をあふれさせたおかげで、レイヤード感がアップ。足元はゴツめのスニーカーで“はずし”のアレンジを取り入れています。
異なるテイストミックスで複雑な表情が完成
レースやフリルをあしらった大襟は、フェミニンな着こなしのムードメーカーになってくれます。大襟の印象が強いだけに、複数のテイストをミックスして、バランスを保つアレンジが効果的です。
繊細なレースを2層で配した大襟は、貴婦人ライクなたたずまい。ポイントは、ニットカーディガンに大襟が添えられている点。ケーブル編みのカーディガンに、異素材・異ムードのレースの襟が程よい“ずれ感”を宿らせました。さらにジャンプスーツに重ねて、甘辛ミックスを深掘り。クロップド丈のカーディガンがレイヤードを引き立てています。
甘さが気になる場合は、思い切って別のテイストを取り入れるコーディネートが役に立ちます。2枚目の写真は、大襟にフリルがボヘミアンなムード。透ける素材で仕立てられたブラウスの裾にもレースが配してあり、フェミニンな印象です。甘くなりがちなスタイリングをグッドバランスに導いたのは、ニットベストの投入。さらに、ウエスタン風の帽子も添えて、複雑なミックスコーデに整えました。
大襟付きのアウターで意外性をまとう
ブームが続く中、大襟の表現力が一段と高まっています。その一つが、デニムのような意外性の高い素材との組み合わせ。シャツやブラウス1枚使いでも、味わい深い着こなしが叶いやすくなりました。
デニムシャツといえば、メンズライクなイメージがありましたが、フリルが付いた大襟を備えたこちらは全くの別物。たおやかさやレディーなムードを備えた、新発想のデニムブラウスです。ボトムスは白のギャザースカートを選んで、レトロでロマンチックな風情に仕上げました。
また、これまでは大襟のシャツやブラウスが主流でしたが、近ごろはジャケットやコートにも広がっています。2枚目の写真は、コートの襟をデフォルメ。肩まで覆う大襟が、この装いの主役。アニメ映画『ダンボ』に登場する子ゾウのようなキュートさがコーディネート全体を朗らかに彩っています。キャッチーなウォーターブルーとの相性も上々。プレーンなカットソーに重ねても、しっかり主張してくれるアイテムです。
大きい襟を生かすだけで、印象がパッと華やぐので、おとなしくなりがちなニューノーマル下での着こなしに取り入れたくなります。同じ顔周りのキープレーヤーであるスカーフよりも、遊び心や愛らしさを印象づけやすいから、全体に重くなりがちな秋冬ルックにこそ生かしがいがありそう。手持ちのニットやアウターに後付けできる付け襟タイプも含めて、秋冬コーディネートのアレンジに活用してみてはいかがでしょうか。