ラグジュアリーブランドのインテリアやライフスタイル分野への参入は、ここ約10年活発化している。コロナ禍でありながら、「ブルガリ(BVLGARI」)や「デイオール(DIOR)」は、近代美術館など広い会場で、複数のアーテイストやデザイナーを招聘した作品を展示。「ヴェルサーチェ(VERSACE)」や「イッセイミヤケ(ISSEY MIYAKE)」は、持ち前のテキスタイルに関する知識とファッションの動向を反映させたインテリアのコレクションを充実させて発表した。
エルメス
プリミティブな空間に温かみのある素朴な作品を展示
「エルメス(HERMES)」は、ミラノ市内パレルモ通りの会場を使って展示が行われた。高い天井高を利用して、レンガの上から紙粘土を分厚く塗り、外壁に異なる装飾を施した6つのパビリオンを1列に並べた各建物の角は丸みを帯び、プリミテイブな住まいを連想させるような空間だ。スタジオムンバイ(STUDIO MUMBAI)の手作業を想起させる丸く盛り上がったような椅子と丸く平な石の小卓の温かみのある素朴さが印象的だった。
デイオール
ムッシュ ディオールが愛した“メダリオンチェア”の再解釈
「デイオール」はミラノ市内ブレラで、クリスチャン・ディオール(Christian Dior)が好んだ“メダリオンチェア”をテーマにインスタレーションを行った。インディア・マダヴィ(India Mahdavi)やディモーレ・スタジオ(DIMORE STUDIO)をはじめとする17組のデザイナーそれぞれが解釈した“メダリオンチェア”を展示。南アフリカ出身のクリエイターであるアタン・ツィカレ(Atang Tshikare)は、ピクトグラムの座面にアフリカンビーズをあしらった脚部の真っ黒な椅子を発表。日本からは、吉岡徳仁とネンド(nendo)が参加した。
ブルガリ
アイコン“セルペンティ”の変容をアーティスティックに表現
「ブルガリ」は、「メタモーフォシス」というインスタレーションを通して変化を受け止める姿勢の重要さに焦点を当てた。監修は、ミラノ工科大学の正教授であるアルバ・カッペリエーリ(Alba Cappellieri )。ミラノの近代美術館を会場に、ブランドのアイコン、変容と再来の象徴である“セルペンティ”をテーマに、アン・ヴェロニカ・ヤンセン(Ann Veronica Janssens)、東信、ダーン・ローズガルデ(Daan Roosegaarde)、ヴィンセント・ヴァン・ドウイセン(Vincent Van Duysen)など、国際的なクリエイター4人の作品を紹介。東は、花が咲き実がなる真鍮製の幹と枝大きな木のインスタレーション「エデンの園」を展示した。ヴァン・ドウイセンは、光の反射を用いた迷宮のような隠れ家「シェルター」を制作。市内「ブルガリ ホテル ミラノ」の庭園でも東による作品が展示された。
アルマーニ カーサ
インテリアに目覚めた人々の暮らしへのヒントを提案
「アルマーニ カーサ(ARMANI CASA)」では、コロナ禍のロックダウンによりインテリアの世界に目覚めた人々の暮らしにフォーカスし、暮らしを彩るコレクションを提案。自然界に見られる優しい丸みや、めのうの模様、木の緑、レザーの茶色などを積極的にコレクションに取り込んだ。バックギャモンやチェスなど室内でのゲームなど、自宅で楽しむラグジュアリーなアイテムをそろえた。
ヴァレクストラ
照明の彫刻で巨匠へのオマージュを表現
「ヴァレクストラ(VALEXTRA)」のミラノのブティックでは、トム・デイクソン(Tom Dixon)と照明の専門ブランド「プロリヒト(PROLICHT)」による、明かりの彫刻“ブラックライト”によるインスタレーションを展示。小さな花が放射状に開いたような形状の照明を連続的に縦に並べたり、レゴのように直方体を組み合わせた照明など、フォームはさまざま。「フューチャリスティックなアプローチで、照明の定義を解体しようとした」とディクソン。ジオ・ポンテイ(Gio Ponti)、エットレ・ソットサス(Ettre Sottssas、アッキーレ・カステイリオーニ(Acchille Castiglioni)など、イタリアンデザインの巨匠達へのオマージュでもある。
ヴェルサーチェ ホーム
ブランドのアイコンを散りばめたコレクション
古代ギリシャの連続模様とメドゥーサをアイコンにファッションからインテリアまでをデザインする「ヴェルサーチェ(VERSACE)」。今回のホームコレクションは、建築家デュオのロベルト・パロンバ(Roberto Palomba)&ルドヴィカ・セラフィノ(Ludvika Serafini)とのコラボレーションで誕生した。ハイヒールのかかとのフォームを脚部に採用した組み合わせ可能なソファといったインパクトのある家具や、メドゥサをモチーフにした取っての収納家具やカーペットなどブランドのアイコンが散りばめられている。
イッセイミヤケ
今日の暮らしに合う工業デザイン
「イッセイミヤケ(ISSEY MIYAKE)」はミラノのブティックで、3月に始動したデザインプロジェクト「イン・ザ・メイキング」を発表した。砂糖きびの茎から作られるポリエステルやペットボトルのリサイクル素材を用いて、折りたたむとバッグになるシャツやパンツを制作。軽量でシワにもなりにくく色落ちしにくい機能的で無駄のないフォームの美しさが特徴だ。今日の暮らしに合う、工業デザインの一例といえる。