ボンジョールノ(こんにちは)!いや、日本でアップされる頃は、ボナセーラ(こんばんは)でしょうか。ヨーロッパ通信員の藪野です。ミラノコレ2日目は、朝一の「マックスマーラ(MAX MARA)」から、夜の「エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 MAISON MARGIELA)」までリアルショーが盛りだくさん。その後には「ポメラート(POMELLATO)」のパーティーも待っています。長い1日になりますが、朝食をしっかり食べて、ミラノの街を駆け回ります。
10:00 MAX MARA
「マックスマーラ」の会場は、コロナ前と同じボッコーニ大学。地下のランウエイを見下ろせるガラス張りの壁には学生と見られる若者たちがズラリと並び、かつてと変わらない風景が広がります。
今季のインスピレーション源は、作家のフランソワーズ・サガン(Francoise Sagan)と彼女が1954年に発表した小説「悲しみよ こんにちは」の主人公セシル。6月にイタリア・イスキア島で発表した2022年リゾート・コレクションもトルーマン・カポーティ(Truman Capote)による旅行記が着想源になっていましたが、その時に「ロックダウン中にたくさん本を読み直した」と話していたイアン・グリフィス(Ian Griffiths)=クリエイティブ・ディレクターは、昔の本からさまざまのアイデアを得たようですね。
軸となるのはワークウエアですが、カジュアルではなく、テーラリング技術を生かしてエレガントに仕上げているところが、「マックスマーラ」ならでは。クロップド丈のトップスやブラトップとミニスカートの上に、アウターをさらりと羽織るスタイルが目を引きます。座席のデッキチェアにも使われていたようなマルチカラーのボーダーは、日に焼けて少し褪せたような色合いでショーのルックにも登場。ヨーロッパのリゾートやビーチを想起させますね。
12:00 BOSS
「ボス(BOSS)」の会場は、中心地から離れたケネディ・スポーツ・センターの野球場。野球やバスケットボールのユニフォームも手掛ける「ラッセルアスレティック(RUSSELL ATHLETIC)」と再びコラボした22年プレ・スプリング・コレクションをお披露目するのに、ぴったりのロケーションです。
数多くのインフルエンサーを招待した今回のショーは、演出にもかなり力が入っていて、正直びっくり。会場に入ると、ハンバーガーやホットドッグ、ポップコーン、アイスクリームなどが振る舞われ、グラウンドでは野球チームがウォーミングアップ中。その横ではオリジナルのマスコットが来場者を迎え、反対側の観客席にはお揃いのTシャツを来たサポーターたちの姿も見えます。さらに、アメリカ英語での実況中継も始まり、マーチングバンドの行進とチアリーダーのパフォーマンスからショーはスタート。そんな演出からも分かるように、コレクションもスポーツカジュアルとゆったりしたテーラリングをミックスしたカレッジスタイル。まさにアメリカンな要素てんこ盛りのエンターテインメントショーを満喫しました。
14:00 ETRO
「エトロ(ETRO)」は、巨大な倉庫のような空間でショーを開催しました。「エトロ」の春夏といえば、リゾートの風を感じるカラフルでハッピーなスタイル。「IN FULL BLOOM(咲き誇る)」と名付けられた今季も、さまざまな花柄やペイズリーをはじめ、室内装飾からヒントを得た幾何学柄、鳥のモチーフ、マルチカラーストライプなどがウエアを飾ります。そこに加えるのは、リラックス感のあるドローストリングパンツや端正なテーラリング、ゴールドの大ぶりなジュエリー。今季多くのブランドが提案しているブラトップも多色使いのクロシェ編みやスポーティーな素材で作り、ヘルシーな印象に仕上げています。
7月にLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)系の投資会社であるLキャタルトン(L CATTERTON)の傘下に入り、新たなスタートを切った「エトロ」。ほかにも転換期を迎えているイタリアのファミリーブランドは多く、その動向にも注目です。
15:00 FENDI展示会
キム・ジョーンズ(Kim Jones)が加わってからの「フェンディ(FENDI)」は、テーラリングがグッと良くなった印象です。今シーズンも、前身頃だけレイヤードしたようなでデザインのジャケットにスーパーワイドなパンツを合わせるスタイルが新鮮でした。過去のモチーフやブランドのヘリテージを蘇らせ、現代のエレガンスに仕上げるキムのディレクション力はあっぱれ。袖口のボタンやファスナーがアクセサリーと共通する”オーロック”になっていたり、キルティングが“ダブルF”パターンになっていたりと、細かな部分のデザインもニクいです。今後がますます楽しみになりました!
16:00 QUIRA
「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」で「2 モンクレール 1952(2 MONCLER 1952)」のウィメンズを手がけているヴェロニカ・レオーニ(Veronica Leoni)による新ブランド「クイラ(QUIRA)がデビューしました。そんな彼女は、創業者時代の「ジル サンダー(JIL SANDER)」ではヘッド・ニットデザイナー、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)時代の「セリーヌ(CELINE)」ではプレ・コレクションのヘッドデザイナーを務めていたという経歴の持ち主。期待せずにはいられません。「若手ではない自分が今ブランドを立ち上げる上で必要なことを考えた」というコレクションは、ファーストシーズンから多彩なウエアからバッグやシューズ、アクセサリーまでをフルラインアップ。質や完成度も高く、個人的にはテーラードとニットに惹かれました。「スタイルと質にこだわり、タイムレスでありながらユニークなアイテムを求める人に向けて、年齢や性別を問わず提案していきたい」そう。会場ではヴェロニカとあまり話す時間がなかったので、近々、改めて取材したいなと思います。
17:00 EMPORIO ARMANI
「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」は、ブランド設立40周年!1年半ぶりに所有するショー会場アルマーニ / テアトロで男女合同ショーを開催しました。メンズとウィメンズに共通するブランドらしさとは、素材の軽やかさや流れるようなカット、そして絶妙な色使い。空想の砂漠を出発点にしたという今季のコレクションにも、それらが凝縮されています。例えば、ゆったりとしたシルエットと柔らかな素材で仕立てたパンツや、サンドベージュやホワイトからパステルカラーまでの優しい色。ウィメンズは透け感のある素材をミニドレスやシャツからパンツにまでに使い、メンズはソフトなテーラリングが際立っています。終盤にパッと鮮やかになったカラーパレットは、未来への明るい希望を表現しているかのようでした。
そして、フィナーレでアルマーニさんと共に登場したのは、メンズの右腕として長年働いているレオ・デルオルコ(Leo Dell'Orco)(6月のメンズショーの最後にも一緒に姿を見せましたね)と、アルマーニさんの姪っ子であり、ウィメンズで右腕を務めるシルヴァーナ・アルマーニ(Silvana Armani)。アルマーニさんはすでに2人の名前を自分の後継者として挙げていますし、次の40年をしっかりと見据えていることが分かります。
18:00 BLUMARINE
若手のニコラ・ブロニャーノ(Nicola Brognano)がクリエイティブ・ディレクターに就任してから3シーズン目になる「ブルマリン(BLUMARINE)」は、彼が追求する方向性が確立されてきました。その方向性とは、2000年代初期のパリス・ヒルトン(Paris Hilton)に代表されるようなキュート&セクシーで”小悪魔”的なスタイル。今季は、そこにミッシー・エリオット(Missy Elliott)やアリシア・キーズ(Alicia Keys)、TLCといったアイコニックな黒人ミュージシャンたちのイメージをプラスして、セクシー&ヒップホップ感強めです。コンパクトなカーディガンやお尻が見えそうなほど短いホットパンツやミニスカート、透け感のあるシフォンドレスに加えるのは、ダボっとしたデニムやカーゴパンツ、ブラトップ、アニマルやデニムの柄をプリントしたドレスなど。米「WWD」によると、こういった00年代スタイルがインスタグラムでビッグトレンドの一つになっているとか。日本ではどうなんでしょう?
19:00 MM6 MAISON MARGIELA
「エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 MAISON MARGIELA)」は、昔ながらのカフェ、La Belle Auroreの中と外を使ってショーを開催。「ブルマリン」の会場から離れていたので焦りながら向かいましたが、着いたら全然始まる気配なし。「マルジェラ」らしく”白”で統一されたスナックセットとカクテルで、アペリティーボを楽しみながら開始を待ちます。
今季のスタイルのカギは、袖とロンググローブ。テーラードジャケットやドレスのウエストや胸の横から飛び出た”余分”な袖は前や後ろで結ばれ、ロンググローブもスタイルの仕上げとしてだけでなく、ウエアやバッグのデザインにドッキングされています。首や手首には、ピエロを思わせるひだのアクセサリー。多用された市松模様は、拡大鏡で覗いたかのように歪んでいます。そんなちょっと違和感のあるデザインは、クロード・カアン(Claude Cahun)らシュールレアリスムの美学を表現した女性アーティストから着想を得たものだそう。バッグは、昨シーズンに続き、「イーストパック(EASTPAK)」とのコラボアイテムが登場しました。
20:30 POMELLATO PARTY
本日最後は、「ポメラート(POMELLATO)」のアイコンジュエリー“ヌード(NUDO)”コレクションの20周年記念パーティーへ。会場となったショッピングアーケードには、「あれ?まだコロナ禍だっけ?」と疑うような人!人‼︎人!‼︎フォトブースやフードやドリンクのスタンドだけでなく、占いブースや花屋の屋台まであります。いや〜、盛大なパーティーは久しぶりだったので圧倒されました。一番奥では、新作コレクションを展示。色とりどりのストーンが際立つデザイン、やっぱりカワイイです。
おまけ:今日のワンコ
本日は、「マックスマーラ」と「ポメラート」で可愛いワンちゃんを発見。チワワの飼い主さんをよく見ると、ゴールドの骨型ネックレスをつけていました。