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ナイキが考える持続可能性をサステナビリティ責任者に聞く CO2排出と廃棄のゼロに向けて 【前編】

 ナイキ(NIKE)は2020年度に同社が排出したCO2量が1170万6664トンだったと公表した。同社は1500以上の拠点を有し、約7万5400人の従業員を抱え、サプライヤーの工場には100万人を超える従業員が働いており、その排出量と人口の規模はオランダ・アムステルダム市に匹敵する。同社はサステナビリティ戦略のコンセプトを“MOVE TO ZERO”とし、CO2排出量と廃棄物、2つのゼロを目指している。1170万6664トンから排出ゼロをどのように達成していくのか。ノエル・キンダー(Noel Kinder)=チーフ・サステナビリティ・オフィサーに聞く。

WWD:ナイキの考えるサステナビリティとは?サステナビリティ戦略でCO2排出と廃棄のゼロを目標にしていますね。

ノエル・キンダー=チーフ・サステナビリティ・オフィサー(以下、キンダー):ナイキは世界の都市1つ分のCO2を排出しており、気候変動に影響を与えています。これは、私たちが行う全てのことに目を向ける動機となっています。一企業が果たすべき重要な役割であり、小さな調整が大きな変化につながります。この精神に基づき、私たちは解決策を待つのではなく、解決策を生み出し、その規模を拡大するために取り組んでいます。私たちのサステナビリティ活動は、炭素、廃棄物、水、化学に焦点を当てており、科学的根拠に基づく大胆な目標を設定して、地球の保護に貢献する責任を果たしています。 さらに私たちは、どのような製品を、どのようにして作り、どのようにしてアスリートに届け、どのようにして回収して新しいものに変えていくのか、というナイキのあらゆる側面を常に考え直し、新しいソリューションを生み出してビジネス全体で迅速にスケールアップする方法を模索しています。

WWD:先日公開した資料で、2020年度のCO2排出量が1170万6664トンというリポートがありました。その数字をゼロにするには現状のビジネスの見直し、改良を積み重ねていくことだけでは難しいようにも思います。

キンダー:気候変動の緊急性に対処するために必要な変化の規模は、ナイキのあらゆる部分で革新を必要とします。私たちはただ解決策を待つだけではなく、解決策を生み出さなければならないのです。そして、新しい解決策を見つけたら(あるいは業界内の他の人から学んだら)、スケールアップするためのハードワークを迅速に行わなければなりません。

 私たちはCO2排出量を削減することを決意し、その規模と影響力を利用して他の企業が同じことをするのを支援しています。気候変動対策には集団行動が不可欠なので、私たちは業界内外でパートナーとなり、共通する影響を軽減しています。

WWD:CO2排出量に並び、水リスクに関しても深刻化しています。ナイキの対応策は?

キンダー:水資源の使用量を削減するために、私たちは原材料が生産されている現場での取り組みに重点を置いています。また、製造の効率化と廃水のリサイクルにより、繊維の染色・仕上げに使用する淡水の使用量を削減しています。実際、私たちの繊維製品の染色・仕上げを行うサプライヤーは、20年の目標を大幅に上回る30%の淡水使用量を削減しました。

WWD:環境負荷の低減を考えたときに重視されるのが素材ですが、ナイキが考える環境配慮型素材とはどういうものですか?

キンダー:私たちは持続可能な素材を、化学的に優れ、資源強度が低く、廃棄物が少なく、リサイクルが可能であることにより、製品の環境影響を低減するものと定義しています。材料を大規模に改善するためには、製品開発、材料、製造において、材料サプライヤーを含めてナイキチーム間の関係の調整が必要になります。私たちは、リサイクル素材やリサイクル可能な素材、素材を最も効率的に使用するための新しい機械や製造方法、新しいリサイクル技術の飛躍的な向上を可能にするために、イノベーションへの投資を計画しています。また、廃棄物を新製品に使用する新しい方法を見つけたいと考えています。重量に対して25%以上のリサイクル素材を使用したスニーカー“スペース ヒッピー”をはじめとし、今後の新製品にも採用することでスケールアップしていきます。

WWD:近年、キノコの菌糸体由来の“マッシュルームレザー”やリサイクル可能なセルロース繊維の革新、人工たんぱく質素材など、これまでになかった新素材が登場しています。注目している素材があれば教えてください。

キンダー:私たちが注力しているのは、影響の少ない素材を拡大し、廃棄物を新素材に変えることで、より持続可能な選択肢を新たに提供することです。具体的には、スタイルや性能を損なうことなく、大量生産される製品の素材に低炭素の代替素材を使用する方法を検討しています。

 例えば、主要素材(ポリエステル、コットン、レザー、ゴム)の低炭素素材の使用率を50%にすることで、25年までに50万トンの温室効果ガス排出量を削減することができます。この例を基に、私たちはリサイクルポリエステルを全製品に拡大しています。 現在、リサイクルポリエステルは当社の全ポリエステルの26%を占めており、そのおかげで、年間平均10億本のペットボトルが埋め立て地や水路に行くのを回避しています。廃棄物の削減に加えて、リサイクルポリエステルはバージンポリエステルに比べてCO2排出量を最大30%削減します。

WWD:生産工程で出る廃棄物を再資源化した“ナイキ グラインド”をデザインに活用していますね。

キンダー:はい。このプログラム(Reuse-A-Shoe)では、ゴム、フォーム、レザー、テキスタイルの混合物など、回収可能な価値を持つ余剰のフットウエア素材と、使用済みのシューズを回収し、リサイクルして新しい製品に再利用しています。このプログラムは25年以上続いていますが、今も成長し、進化し続けています。“ナイキ グラインド”で部分的に作られた最も新しいイノベーションは、ナイキ クレーター フォームです。この新しいフォームは、“スペースヒッピー”プロジェクトから生まれたもので、現在ではライフスタイルやパフォーマンスフットウエアのさまざまなスタイルに採用されています。

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