ニューヨークでファッションデザインを学んだサカイカナコ(29)が、自身のブランド「カナコ サカイ(KANAKO SAKAI)」を2022年春夏シーズンに立ち上げる。サカイはパーソンズ美術大学でファッションデザインを学びながら、「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」や「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」で経験を積み、帰国後は国内のデザイナーズブランドに勤務。21年に独立して自身のブランドを立ち上げた。ファーストシーズンは全22型のウィメンズウエアで、コートやジャケットはメンズでも着用可能だ。価格帯はコート(税込14万3000円)、ワークジャケット(同7万1500円)、テーラードジャケット(同9万4600円)、シャツ(同3万6000円〜)、ワイドパンツ(同6万3800円)、スカート(同5万7200円〜)、ニットドレス(同5万7200円〜)など。
デビューコレクションは、メキシコの複合施設カーサ ワビ(CASA WABI)の空間をイメージした。同施設は国内外のアーティストの交流の場として開設し、砂漠や木々の中に安藤忠雄がデザインした建築物が並ぶ。この自然と人工物の対比をクリエイションに取り入れ、カラーリングや柄などで表現している。
「カナコ サカイ」の特徴は、一見するとベーシックで軽やかなデザインに対し、素材使いやディテールにクラフツマンシップや反骨心が感じられるところだ。そのこだわりは、素材に最も表れている。「私の服はまず素材作りから。今回使った生地はほとんどがオリジナルです。海外での経験があるからこそ日本の技術の高さが分かり、産地の人の顔が浮かぶ服を作りたかった」とサカイデザイナー。全国の産地や工場をめぐり、山形の米富繊維とのニット製品や茨城の老舗工場とのスラックス、自身と同年代のデュオ“タイダイ フリーク”とのタイダイ染めアイテムなどを、コミュニケーションを何度も重ねて形にしていった。デザインは「自分が着たいと思える楽で便利な服」というように、ベーシックが軸である。しかしコートの背中に巨大なタックをあしらったり、ジャケットのサイドに深いスリットを入れたり、ドレスとしても着られるたっぷりな生地のオリガミシャツなど、“攻め”のディテールで一点一点に個性を込めた。「ひと目見てすぐあそこだと分かるアイコン的なデザインは嫌だけど、『カナコ サカイ』らしさは徐々に確立していきたいんです」。
サカイデザイナーから感じられる反骨心のルーツは、幼少期にまでさかのぼる。「厳格な両親だったので、着たい服が着られないときもありました。だからこそ、ファッションに強く憧れた。近所のショッピングセンターで『大人になったら絶対に好きな服を着まくってやる』と決意したのを鮮明に覚えています」。地元から飛び出したい、ニューヨークで学びたい、いろいろなブランドで経験を積みたい、広い世界が見たい、という常にどん欲な姿勢が、こだわりとなって服にも反映されているのだ。デビューシーズンながら、国内大手セレクトショップからの反応も上々。今後は海外での発表も視野に入れ、日本の技術を世界に発信していく。