「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」は、ブランド初の抱っこ紐を発売した。2019年秋冬に登場したマタニティーラインは「妊婦の身体的負担をアウトドアの機能性で軽減したい」という想いから始動した、日本オリジナル企画だ。産後まで長く使えるパターンや機能性にこだわったアイテムは、妊娠中の限られた期間にしか使えない商品が多いマタニティー市場で一線を画し、売り上げは伸長し続けている。シーズンごとにアップデートされるコレクションは、アウトドア由来のファッション性、子育て中のちょっとした不便を解消してくれる気の利いた機能性が男女を問わず支持されている。サステナビリティの一環でもある“捨てない”モノ作りの理念は、キッズ商品にも踏襲。社内チームの熱い思いとこだわりを具現化して、進化を続ける好調カテゴリーの開発の舞台裏を探る。
重量約370g!初の「抱っこ紐」
着想源の1つとなったのは、トレラン用のベスト型パック。その知見が最も発揮されているのが、肩回りの形状だ。ハーネス部分は、トレランパックのように面積を広げることで、体へのフィット感をアップ。パーツの配置により、伸縮する箇所、しない箇所を検討し、柔らかな生地を使用することで、加重分散と肌ざわりの良さを両立させた。ブランドの理念である「DO MORE WITH LESS(最小の力で、最大の力を)」に沿って設計された「抱っこ紐」は、約370gの軽量&コンパクト化を実現。SG基準も取得し、国内ベビー用品における厳しい安全基準もクリアする。
男女兼用のレインコートは
ベビーカバーの着脱で3ウェイに
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21年春夏に登場した男女兼用レインコートは、ベビーカバーの着脱で、抱っことおんぶ、大人だけで着られる3ウェイに変化する。“ジェンダーレス”商品の構想はマタニティーライン立ち上げ当初からあったというが、産前産後や男女の体形差、安全性や通気性を確保しつつ防水性を高める仕様設計は難しく、発売までの開発にかなりの時間を費やした商品だという。さらなるこだわりポイントは、ベビーカバーにウィンドーを付けて、子どもの視界や採光を確保したことだ。傘いらずの商品は、悪天候でテントを建てるときなどに活躍する。
キッズのスノーウエアには
独自のサイズ調整システム
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シーズン性のある商品は、翌年になってもサイズアウトせずに着られるように、独自のサイズ調整システム“EXP GROW”を搭載。ドローコードを引っ張り、丈を調整できるだけでなく、ドットボタンを均等に配置して留めることで、左右の丈も簡単にそろえられる仕様のアイテムもある。また、キッズ商品から率先して、ペットボトル由来のポリエステルやリサイクルナイロンなどを用いた、環境配慮型の商品を増やしている。キッズ商品は、無償修理サービスも実施。商品を“捨てない”“循環させる”ことからも、次世代を担う子どもたちに向けて、持続可能な社会や自然との向き合い方を啓蒙している。
PRODUCT STORY
ヒット商品の裏に
子育て世代メンバーの”リアル”な声
マタニティーラインのヒットを支えるのが、実際に子育てを行うメンバーの”リアル”な商品企画力だ。抱っこ紐のリクエストは以前からあったというが、門司陽佑エキップメントグループ マネージャーは「いわば命に関わるギア。ずっとキッズ企画チームに断り続けていた(笑)」と当時を振り返る。
安全第一の商品のため、SG基準が取得できる背景があり、国内生産のクラフトマンシップがある企業と協業。「ただ背負えれば良いのではなく、心地よさを考慮するのは初めての経験だった」と、両社の知見を組み合わせることが、必ずしも相乗効果にはならず、何度も試作を繰り返した。
約1年間、さまざまな素材と向き合い、耐久性、撥水性、アパレルとの合わせやすさの観点から、ベストな生地を選択。「キャンプは、男性も活躍できる場所。子どもと触れ合える一番大事な時期を抱っこ紐を通して、味わってほしい」と想いを語る。
一方で、マタニティーラインも手掛ける矢野真知子キッズグループ MDは、「企画チームは、約半数がパパママ。私自身も双子の出産を経験したが、子育ての大変さは想像以上だった」。企画開発は、そんな実体験やニーズを基にしつつ、出産経験のないメンバーの客観的意見も交えて進めている。
21年秋冬は全8型を発売。マタニティーブランドではないため、機能性が高い商品だけを厳選して発売する。売れ筋は、金額ベースでは8万9100円のリサイクルダウンを採用したダウンコート、数量ベースでは1万6500 円のペットボトル由来のリサイクルフリースワンピース。男女兼用のレインコートへの反響も大きかたことから「今後はジェンダーレスな商品にも力を入れたい」と、さらなる構想を語った。
ゴールドウイン
0120-307-560