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衝撃から熱狂へ ファッション界の次なるリーダー、アレッサンドロ・ミケーレ
衝撃から熱狂へ。アレッサンドロ・ミケーレによる新生「グッチ」を取り巻く環境は2シーズン目にして次のステージへと移っている。ミラノ・コレクション初日のショーは豪雨にもかかわらず、ファー飾りのホースビット・ローファーなどミケーレによる新作コレクションを着込んだ業界関係者が詰めかけた。
会場は、トム・フォード時代から使用してきたオベルダン広場の劇場を離れ、殺風景な倉庫跡地のようなスペースへ。緑に囲まれた半屋外に、コレクションでも好んで用いる動植物を描いた長いランウエイを用意し、ショーが始まる前からドラマチックな世界へと誘った。
デビューコレクションや先に発表したメンズでも見せた大胆な“折衷主義”はミケーレのスタイルとしてすでに確立されている。都市や時代、スタイルや性差などあらゆるボーダーを一度全て飲み込み再解釈する。今季のキーワードの一つは“シチュアシオニスト”。聞き慣れない言葉だが、1950年代から70年代にヨーロッパで盛り上がった前衛的な思想で、大量消費や都市計画への反発を根源とする文化・政治活動と聞けば、今の「グッチ」と符号する。一見ユルく、オタク的でさえある新生「グッチ」は、ファッションの2つの力、つまり時代の扉を強引にこじ開けて新しい価値観を提示する力と、単純に“着たい”欲望を駆り立てる力、その両方を併せ持っている。
ベースとなるアイテムはスタンダードなものばかりだ。スポーティーなリブをアクセントにした植物柄総レースのワンピースに始まり、アイコニックなアコーディオン・プリーツの膝丈スカートや大きなボウを飾ったシフォンブラウス。レザーのセットアップ。そこに、蛇や虎、蜂といった動物や植物をプリントや装飾で大胆に施す。古びた地図や壁画風、突然現れる富士山などモチーフのバリエーションは広く、一編の冒険映画のようにショーは展開していく。
それらが子供っぽくはならないのは、「グッチ」が擁する職人たちの手仕事が凄みにつながっているから。また、赤と緑の“ウェブ”柄を大胆なグラフィックで取り入れるなどメゾンの象徴の取り入れ方も巧みだ。
リングを付けているように見えるドライビンググローブ、新たなバンブーバッグ、パールをアクセントにしたシューズなどアクセサリーの新作も豊富だ。
ショーが終わった後のバックステージは、誰でも入ることができるウエルカムな雰囲気で、モデルも撮影に気軽に応じる。その肩の力の抜けたムードもまた、新生「グッチ」を象徴している。