ファッション

“モード界の帝王”アルマーニが語る「エンポリオ アルマーニ」40年の軌跡 展覧会も開催

 デザイナーのジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)による「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」が創立40周年を迎えた。初めての店舗は1981年、ミラノに開き、その後「ジョルジオ・アルマーニ」などファッションラインを充実させた。21年のオリンピックでは、イタリア代表が表彰台で着用する公式ウエアは、「エンポリオ アルマーニ」のスポーツライン「エンポリオ アルマーニ EA7(EMPORIO ARMANI EA7)」がイタリア選手の公式ウエアを手掛けた。

 アルマーニは「エンポリオ アルマーニ」の2022年春夏コレクションをミラノで発表し、「The Way We Are(ザ・ウェイ・ウィー・アー)」と題した展覧会を開催。「エンポリオ アルマーニ」マガジンの特別号を発行するなどして40周年を祝っている。ここでは、ブランドのこれまでの軌跡やこれからの展望、現在地などを語る。

WWD:「ザ・ウェイ・ウィー・アー」はどんなイベント?

ジョルジオ・アルマーニ(以下、アルマーニ):メゾンの方針や意図を伝えるためのマニフェストのような役割を担う企画です。オープンであることの大切さや包括性、文化・ジェンダーの多様性といった価値観をブランドが設立当初から掲げてきた価値を再確認するものだ。基本的に、懐かしさに思いを馳せるノスタルジックなものは好んでいない。それはずっと変わっていないので、このイベントでも現在や未来に目を向けている。

WWD:40年前に「エンポリオ アルマーニ」を立ち上げた経緯は?

アルマーニ:1981年を思い返すと、雑踏とした世の中に気ままなムードがあり、「何かしたい」という衝動があった。多くの若者が自立して社会進出していたが、その気持ちを後押しするファッションはなかった。こういった市場のギャップは明らかにあったので、チャンスだと思った。(ブランドを立ち上げ後)すぐに大きな反響があり、一気に人気が広がった。イタリア語でデパートや百貨店、市場といった意味を持つ“エンポリオ”という名前は、誰もが簡単に入ることができ、何かに出合える場所ということが一目で分かるもの。ロゴの鷲は、国境の壁を超えて高く飛べることや地平線の続きを表す象徴として取り入れた。

WWD:2017年に「アルマーニ コレツィオーニ(ARMANI COLLEZIONI)」と「アルマーニ ジーンズ(ARMANI JEANS)」を「エンポリオ アルマーニ」に統合したが、その理由は?

アルマーニ:ブランドがこれからも発展していくだろうという自信はもちろんあった。加えて保有するブランド同士のバランスを取るために、「エンポリオ アルマーニ」にはもっと自由が必要だと考えた。設立当初から慎重に多様性を捉えており、「エンポリオ アルマーニ」では自分のスタイルを維持しながら、より多くの人にアピールできる製品を提供する。言うなれば、「エンポリオ」は(デザインの)本能で「ジョルジオ・アルマーニ」は(デザインをする)理由そのもの。どちらも欠けてはならない存在だ。

WWD:「エンポリオ アルマーニ」はここ数年でどう進化したと思う?

アルマーニ:デザインの幅も広がったし、より多くの人に向けた商品が増えている。今日の「エンポリオ アルマーニ」は、時代の変化に応じて、とても多様だ。“若さ”は今や年齢や生まれた年によって決まるものではなく、感覚やあり方を指している。だからこそ誰しもがブランドとつながりを感じられるような器でありたい。ブランドの精神は自由でメトロポリタンで、ダイナミックだ。

WWD:どのような人が「エンポリオ アルマーニ」らしいと思う?

アルマーニ:ファッションで自分を表現する人。そういう人が“ファッショニスタ”というわけではないけれど、確かな個性を持っていることは間違いない。そして年齢に縛られない人。

WWD:エキシビジョンの見所は?展示するアイテムや照明など、こだわった部分は?

アルマーニ:インスタレーションを中心に、テーマ別に部屋を設けている。それぞれがブランドの大切な要素を構成する。例えばメンズウエアとウィメンズウエアや、ミラノと世界の大都市、雑誌間で生まれる対話などを表現。部屋ごとのコンセプトに合わせて、配置するファッションアイテムなどを選んだ。活気あふれるビジュアルで、大きなムードボードのような部屋をミラーで覆い、万華鏡のようにそれぞれの要素を集めたんだ。

WWD:開催の準備をしながらどんなことを感じていた?

アルマーニ:これまでのデザインや取り組みを整理しながら、私のスタイルの本質やアイデア、アイテムを再考するきっかけとなった。たくさんの記憶が蘇ったよ。ミラノのブロレット通りの壁面広告の影響力は特にすごかった。思い出の多くには、レオ(Leo)や姪のシルヴァーナ(Silvana)がいる。長年私のそばにいてくれて、頭が上がらない2人だ。シルヴァーナとは一緒にウィメンズのコレクションを作ったりして、常にオープンに意見交換をしてきた。レオは私の片腕として一緒に働いてきた。忠誠であることに加えて、しんどい時もそれを軽くしてくれるような性格に本当に感謝している。

WWD:雑誌の発行や壁面広告を通して伝えたいメッセージは?

アルマーニ:一般的に広く語られるようになった「包括性(インクルージョン)」について、私は40年前から伝えようとしている。雑誌や広告でコミュニケーションに重きを置いているのは、“エンポリオ”という名の通り、ブランドが大切にしている価値観を自然に広げていくことを願ってのこと。雑誌を出版していた頃から妹のロザンナ(Rosanna)とは一緒に働いてきたが、広告のアイデアを提案してくれたのは彼女。この展覧会でも一緒に動いてくれた。

WWD:デジタルを使った仕掛けはある?

アルマーニ:もちろん!インスタグラムは要チェックだ。

WWD:「エンポリオ アルマーニ」の現在地は?顧客層や店舗数、これから新店舗オープンの予定は?

アルマーニ:メインの顧客層はヨーロッパとアジア。でもアメリカもコロナからの復帰を大きく支える市場だ。店舗は、250店以上ある。直近でイタリアのリナーテ、スペインのバルセロナに新店舗をオープンしたので、今後北米や中国にもっと店舗を増やしたいと思っている。

WWD:独立企業として迎えた40年だが、そこにこだわりは?

アルマーニ:1人の男として、そして起業家として独立しているということは大きな意味を持つ。特に今の時代は強く感じることだ。スピーディーかつ柔軟に動くためにも、大事な選択だ。これまでも自分の道を切り開いてきたし、これからもそうしていくだろう。

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