ファッション

湘南のサーフショップを継承 常連客だったユナイテッドアローズ部長の思い

 ユナイテッドアローズ(以下UA)は、新生「カリフォルニアジェネラルストア(CALIFORNIA GENERAL STORE以下、CGS)」の全貌を公開した。同社の「サステナビリティやウエルネスにまつわる新たな発信拠点」と位置付け、商品軸だけではないライフスタイルにまつわるコト提案や職遊融合の新しい働き方を実践する。「『経営がUAに移って店が変わってしまった』とは言われないように、もともとのコミュニティーをしっかり保っていきたい」と、同店の責任者である清水学BY本部長は話す。

 9月24日に神奈川県藤沢市鵠沼海岸に移転オープンした新店は、駅からはやや距離があるもののビーチはすぐそばで、取材をした平日の昼間も店の周辺には真っ黒に日焼けしたサーファーたちの姿が見えた。店内は、藤沢の市街地にあった旧店舗で使用していた資材を活用したり、内装のカラーを再現したりすることで、旧店舗の雰囲気を再現した。世界中のサーファーやアーティストらがサインやイラストを施した象徴的なアートウォールも同店に移設した。売り場は旧店舗の約1/4の広さだが、店の前には「駐車場にしたら5台分は取れた」という広いウッドデッキを設置し、客がゆったりくつろげるスペースを確保した。

 販売商品は、旧店舗で取り扱っていた「CGS」のオリジナルウエットスーツブランド「アムステルダムウエットスーツ(AMSTERDAM WETSUITS)」のウエットスーツ(1万9000〜9万7500円)やロゴ雑貨などに、UAが企画した同店のオリジナルアパレル(4950〜3万7950円)やヨガウエア(7000〜1万5000円)、オーガニックコスメ雑貨(1760〜4620円)などを加えてラインアップを拡充した。ビンテージのサーフボードやヨガマットなども取り扱う。ビンテージのサーフボードは30〜200万円と高額なものも多いが、「今後は買いやすいボードもそろえ、地元のシェーバーの板もオーダーできるようにしていきたい」と清水本部長。

地元コミュニティーに根ざした“コト提案”に注力

 レジカウンターでは、店舗スタッフがドリップしたコーヒーや地元のカフェから仕入れたクッキーやケーキなどを提供する。UAがセレクトした西海岸のクラフトビールも用意する。店内に配置したグリーンも「CGS」とゆかりのある業者から仕入れたもので、ローカル業者とのつながりを深めていく。

 「CGS」は1997年の創業以来、西海岸カルチャーの最先端の情報を発信し、人が集まるサーフショップとして多くのファンを生んできた。日本では2009年の「ロンハーマン(RONHERMAN)」上陸によって西海岸のサーフカルチャーをベースにしたライフスタイルショップが一般化したが、「CGS」はいわばその走りのような存在であり、ファッション業界内でもファンは多かった。サーフィン歴30年の清水本部長もそうしたファンの1人だ。清水本部長は20年以上同店に通っていたといい、「CGS」のオーナーの石田道朗氏が2018年に死去した後に、運営のサポートをしてほしいと声がかかった。そこから、UA社内や移転先の地域コミュニティーなどとの調整を進め、今年6月にUAが同店の商標権を取得、リニューアルに至ったのだという。清水本部長は「『CGS』はただのサーフショップではない。アーテイストやサーファーが世界中から集まり、文化を発信してきたレガシーきちんと継承したい。『CGS』のネットワークを軸に、物販だけでなくライフスタイルにまつわる“コト提案”にこだわっていく」と話す。

 店内は約半分がイベントスペースとなっており、アート展示や音楽ライブ、上映会、マルシェ、子ども向けのワークショップといった人が集まる施策を企画する。そのほか、店舗のオープン前の時間帯を活用して、同店のスタッフが講師を務めるサーフィン教室を毎朝開催し、第1、3土曜日には外部講師を招いたヨガ教室も開催する。既存の顧客層は30代後半〜40代の男性が8割だが、これらの施策を通して若い女性客の取り込みも狙う。

サーフィンやヨガ、サステナビリティに関心の高いスタッフからの応募が多数集まる

 面白いのは、同店のスタッフはこの店専任ではなく、UA、UAグリーンレーベル リラクシング、ビューティ&ユース、アウトレットの全国の店舗からの公募制にしたという点だ。旧店舗から移ってきたマネージャーと、“準レギュラー”的な週2〜3日勤務のメンバー数人は固定しているが、それ以外は応募してきた約30人が入れ替わりで店頭に立つ。「これほど応募があるとは思わなかった」と清水本部長も驚いている。

 応募してきたのは、サーフィンやヨガ、サステナビリティに関心の高いスタッフが中心で、20代前半から40代まで幅広い。清水本部長は「元々この地域に移住するスタッフが増えていた。仕事前にサーフィンやヨガを日課にしているスタッフも多く、趣味と仕事を兼ね備えた職場を求めるスタッフのニーズも高い。UAとも違ったカジュアルでフレンドリーな接客で、地元の方々が毎朝コーヒー1杯を飲みに来店するようなお店に育ていく」と話す。

 「CGS」は、UAとしてこれまであまり発信できていなかったサステナビリティやSDGsに関する取り組みを行なっていく拠点という役割も担う。「ビーチの清掃活動などは当たり前として行なっていく」が、それ以外にも日本環境設計のBRINGと組んで衣料品の回収ボックスを常時設置したり、ショッパーを廃止したりといった消費者のサステナブルなアクションを促す施策を実践する。商品軸では、オーガニックコットンや再生ポリエステルなどの環境負荷の低い素材を積極的に採用するほか、モーリシャスの環境や人々の生活支援を目的とした「モーリシャス・ブルー・アクション(MAURITIUS BLUE ACTION)」とコラボしたチャリティーTシャツ(5500円)などを販売する。電力は地元企業の湘南電力を利用し地域貢献活動にもつなげる。

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