イスラエル発のナチュラルコスメブランド「サボン(SABON)」は、コロナ禍においても好調を維持する。ブランドの特徴である死海の塩を配合した“ボディスクラブ”や“ヘッドスクラブ”などがおうち美容の需要拡大により躍進。さらにCRM戦略を強めたことで顧客との関係強化につながり、売り上げは2019年度比においても2ケタ増と勢いを増している。
6〜8月の商況は、直営店50店舗とECを合算して19年比、前年同期比とも2ケタ増と伸長した。主要都市の店舗は緊急事態宣言下で来店客数が減少したが、接客時間を短くすることで回転数をあげる接客法から、時間をかけての接客に移行し客単価が上昇した。またおうち美容の充実が好調を後押しした。バスタイムに時間をかける人が増え、“ボディスクラブ”などが好調だった。会えない友人に自分が愛用するアイテムを贈ること人も多くギフト需要も伸びた。そのほか、「日本仕様のパッケージやテクスチャ−、サンプル製品の用意などをイスラエル本社に働きかけて充実したことや、CRM戦略を強めて顧客との関係性が強固になっているという長期的な取り組みも奏功した」と川島ゆみサボンジャパンPR&コミュニケーションマネージャーは語る。EC売り上げも好調で前年同期比18%増で着地した。VRショップの展開ほか、1月からスタートしたチャットサービスは5月から10店舗に導入したことに加え、きめ細かいデジタルマーケティング施策の強化が好調に貢献した。
ブランドの売り上げの8割を占めるボディーケア、フレグランス、ヘアケア、スキンケアの全カテゴリーが成長。中でも群を抜いているのがヘアケアだ。「“ヘッドスクラブ”はヘッドスパを受けているように凝り固まった頭皮をほぐし、毛根を立ち上がらせることができることから、SNSで広がり一時品切れになるほど支持された」。洗顔と角質ケアを同時にかなえるフェイス用スクラブ“フェイスポリッシャー”も売れ行きがよく、男性の愛用者も増えている。「マスク生活で毛穴ケアというキーワードが注目され、男性も使用したいと触手が伸びているようだ」。
そのほか8月にオードトワレ“オー ドゥ サボン”の30mLサイズを発売した(通常は80mL)。これを機に、キャップ部の刻印サービスを開始したところ、目標値を超える売り上げを達成した。製品の香りも気分をスイッチできるとして好評で、デリケート・ジャスミンやホワイトティー、パチュリラベンダーバニラ、グリーンローズなどが人気を集めている。「『サボン』ではフレグランスとボディーケアアイテムを組み合わせるなど香りのペアリングを提案する。在宅勤務の気分転換や心を豊かにするマインドフルネスなどに役立っている」。同月には写真家・映画監督の蜷川実花がディレクションするブランド「エム / ミカ ニナガワ(M / MIKA NINAGAWA)」とサンリオの人気キャラクター「ハローキティ(HELLO KITTY)」とのトリプルコラボコレクション“フローラル ブルーミング”も発売。既存顧客のほかにコラボ先のファン層も取り込めたという。
環境に配慮した活動もスタート。5月にネイチャーマイレージクラブを設立し、店舗の象徴であるウォータースタンドで体験した後に使用するペーパータオルを使わなかったり、マイバッグを持参したり、スクラブ用のウッドスプーンを受け取らない人にポイントを付与する取り組みを始めた。ちなみに、ウォータースタンドの使用は、手を洗ってもらいながら製品を試せることから、安心安全を担保しながら接客できるとして顧客にふれる接客が難しい中でも美容部員のモチベーションアップにつながっているという。
10月以降も“フェイスポリッシャー”で限定の香りや、ファブリックミストのリニューアル、ホリデーコレクションの発売などが控える。さらに、20年8月に始めたオンラインワークショップも7月に実施、次回は10月3日に実施し、9日からオンデマンド配信する。「22年は『サボン』が誕生して25周年を迎える。新CIを採用した店舗なども増やし、来年の飛躍に向けた布石を打っていく」と攻勢をかける。