2018年創業のスタートアップ企業で、3Dを軸にしたアパレルDX事業を展開するグッドバイブスオンリー(以下、GVO)はこのほど、服地卸の最大手で創業157年の老舗繊維商社のスタイレム瀧定大阪(以下、スタイレム)と資本業務提携を締結した。GVOは来春、3DCGを駆使したアパレルの生産・販売のプラットフォームの開設を計画しており、そこでスタイレムの持つ膨大なテキスタイルのデータとも連携させる。
現在もごく一部でアパレルOEM(相手先ブランドの生産)・ODM(相手先ブランドの企画・生産)で、3DCGを使ってサンプル生産を減らす試みは行われているが、アパレル3DグラフィックCAD「CLO3D」などを使った画像は、テキスタイルの精緻な表現ができなかった。一方スタイレムはもともと、トレンド性の高いテキスタイルをリスクを張ってストック販売する独自のテキスタイル販売モデルを確立しており、この数年はデジタル化を推進。5000品番、カラーなども含めると10万SKUに達するテキスタイルの画像データをデータベース化していた。
両社の提携により、「実際にわれわれがフィジカルに在庫をしているテキスタイルのデータを3DのアパレルCGにそのままはめ込むことができるようにあり、3DのアパレルCGはこれまでとは比べ物にならないほど精緻なものになり、ODMだけでなく、ネット通販サイトなど最終消費者に見せて受注を取るようなことができるようになる」(瀧隆太スタイレム社長)と期待を寄せる。実現すれば、アパレルのODMは、フィジカルに在庫を持つテキスタイルの、しかも本物同様のテクスチャーを表現したアパレル3Dグラフィックをベースにしたビジネスモデルへと大きく変革する。
提携のきっかけは、スタイレムの営業マンがGVOに飛び込みで営業をかけたことだったという。GVOの野田貴司CEOは「初対面にもかかわらず盛り上がって2時間半くらい話した(笑)。どう考えても単に素材を買う以上に、もっと幅広く一緒に取り組めることがあるぞ、と。その後、7月中旬に(スタイレム瀧定大阪の)本社を訪ねたところ、オフィスには瀧社長を筆頭に経営幹部がずらり。その後、わずか実質1カ月弱でのスピード資本提携に至った」という。スタイレムの瀧社長も「実は、担当者から野田CEOに会ったその日に、とても熱い口調で『ぜひ野田CEOとは経営陣で会うべきだ!』と連絡をもらっていた。実際に野田さんの話を聞き、見せてもらった3Dグラフィックのセンスも良くて、われわれのテキスタイルデータがスムーズに服へと変わっていく将来のビジョンがすぐに見えた。野田さんと最初に会った担当者と同じで、われわれもすぐに意気投合した」と振り返る。
両社にとって今回の資本提携は、一つの「きっかけ」に過ぎないようだ。GVOの野田CEOは、「GVOの目指すゴールはテクノロジーを使ってアパレルビジネス全体をDXすること。具体的に言えば、無駄な在庫を極限までゼロに近づけたい。オンライン上で3Dでテキスタイルからアパレルまでを完結させるビジネスを、日本だけでなくアジアでも展開したい」と意気込む。