今回のコラムタイトル「みんな違ってみんないい」は、小さな頃からよく聞いていた言葉だ。
キリスト教の小学校に通っていたからか、小さな頃から授業やシスターさんたちに、今思えば「多様性」を教えてもらっていた。自分と見た目の違うものを受け入れたり、個性をお互いに尊重し合う精神だ。
昨今、巷ではダイバーシティという言葉が飛び交っている。サステナブルな社会に向けて影響の大きい、大切なキーワードでもある。ではファッション界の多様性はどうだろうか?
もちろん自分と違うセンスのファッションを楽しんでいる人を見ても気にならないのだが、実際に作る側になった私は、最初の展示会で早速つまづいた。2018年に従来の形式に沿って、私も意気込んで開催した「パスカルマリエデマレ(PASCAL MARIE DESMARAIS.以下、PMD)」の初回展示会のこと。私は迷彩の古着を解体して、パッチワークのように生地にしてから裁断するゴージャスなスカートとトップスを製作。それだけでもアップサイクルだが、切れ端やゴミとなる生地が気になった。職人さんがすぐに気づいてくれて、余すことなく生地を使うべく「小物入れにできるのでは?」と巾着型のポーチも製作した。
だから訪れた大手ショップのバイヤーさんの言葉は、正直本気で悔しかった。「これは売れません」ときっぱり。聞けばデザインが悪いわけではなく、一つ一つのデザインに違いがあるからダメ。全て綺麗で一緒じゃないと扱いづらいので、店員も困るし対応に手間がかかるとのことだった。衝撃だった。「まるで農業と一緒じゃないか!不揃いのトマトは売れないのか⁉︎」と感じてしまった。
製作時に気づくファッション界のアン・ダイバーシティ感は、これだけにとどまらない。全く一緒のものを100、または1000以上作らないとオーダーを受け付けてくれない工場に心が苦しくなる時も多かった。「ということは、全く同じものをみんな着ていることになるのか?」など色々思いを巡らせ、自分なりの口説き方で職人さんやアーティストさんたちに無理言ってアイテムを完成、そして販売にまでつなげてきた。
でも興味深いのはここから。自社のオンラインショップも自由に動かせるようになった頃には、「PMD」の一番のヒット商品は冒頭で述べたアップサイクルポーチになったのだ。現在もダントツのロングセラーアイテムとなっている。取材などでよく聞かれるのは、「え?オンラインじゃ選びようもないから、お客様は怒らない?」。確かに、何かあった時には柔軟に対応しているが、デザインが気にいらないという理由で交換したのは、今までで1回くらいだ。お客様からは沢山のポジティブなメッセージをいただいている。
要するにお客様は自分だけのデザインや隣と全く一緒じゃないものを探しているのに、売り手がそこに壁を作っていることを感じていた。需要と供給があっていない。「形が不揃いなトマトでも食べたいよ!全然平気!」と思う人は今、どれくらいいるのだろう。そんなことを日々考えるようになった。
そして2021年、コロナを乗り越えようとしている我々地球人は、これをきっかけにさまざまな気づきを得たのではないかと思う。
サステナブルという価値観も広がり、むしろ現在「PMD」の周りでは「一個一個、フェイスが違うものを作ってくれないか?」というオーダーや、それを了解してくれるクライアントが増えている。
ほらやっぱり!おそろいが可愛いこともあるが、みんな違ってみんなイイ‼︎「PMD」の諦めない挑戦は、まだまだ続く。