ボンジュール!ヨーロッパ通信員の藪野です。いよいよパリコレが開幕!今回からは、その現地リポートをお届けします。パリはミラノより随分肌寒いので、風邪を引かないように気をつけつつ、駆け抜けます!!と思ったのですが、まさかの2日目朝にドライバーさんの車が故障……。パリはウーバーもなかなか捕まらないしと、波乱の幕開けとなった1、2日目のハイライトをお届けします。
9/27 17:00 KENNETH IZE
パリコレの幕開けを飾るのは、ナイジェリア発「ケネス イズ(KENNETH IZE)」のリアルショー。パリコレで披露するのは4シーズン目ですが、すっかり若手ブランドの多い初日の顔の一人になりましたね。
コレクションで多用するのは、今季も母国の伝統的なストライプやチェックの生地。テーラードだけでなく、薄手のニットやスポーティーなアイテム、繊細なフリンジがなびくドレスなどで、軽やかさを加えています。最後に実物を見た1年前よりも質も洗練度も上がり、着実にステップアップしている印象を受けました。
20:30 MARINE SERRE
「マリーン セル(MARINE SERRE)」は今季も映像でコレクションを発表しましたが、パリでも上映会とプレゼンテーションを開催しました。身近な人の日常を切り取ったような親密な映像を見せた先シーズンに続き、「OSTAL24」と名付けられた今回も日常生活をベースにしたもの。ただ舞台はパリではなく、昔を想起させるようなのどかな田園地帯。ところどころミステリアスな要素を加えながら、1日を時系列で描いています。
今季のコレクションは、ブランド史上最高となる90%の素材にリサイクルもしくは再生されたものを使用(それぞれ45%)。マルチカラーのタオル地やティータオルを使ったウエア、スプーンやフォークを折り曲げてつくるアクセサリーなど、家庭で使われているものをアレンジしたようなアイテムが印象的でした。
上映後は、そのままカクテルタイムに突入。皆が再び集まれることへの喜びをマリーンが語っていましたが、それと同時に、ブランドとしての成熟を感じさせるものでもありました。
9/28 14:30 DIOR
「ディオール」の会場は、今回もチュイルリー公園の特設テント。1年前にも同じ場所に来ましたが、今季はすごい人だかり。人混みをかき分けて中に入ると、そこに広がっていたのは、コロナ前と変わらぬような規模の階段状の座席と大掛かりなセット。ミラノコレでは席同士の間隔がとられていましたが、パリはその必要がないようで、国が変わればルールもかなり違うと実感します。
今回、セットデザインを手掛けたのは、イタリア人女性アーティストのアンナ・パパラッチ(Anna Paparatti)。現実に疑問を投げかけ、想像力の扉を開く空間としての遊びの概念を追求する彼女が1964年に発表した作品「Il Gioco del Nonsense(ナンセンスのゲーム)」をベースにした、立体的な”すごろく”のような円型のランウエイを用意しました。会場が赤い光に照らされると、モデルが一気に登場。数字がふられたマス目一つ一つにそれぞれが立ち、イル クアドロ ディ トロイージ(Il Quadro di Troisi)による心地いいディスコミュージックの生演奏とミラーボールのようなライティングとともに、ショーが幕を開けます。
マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)がインスピレーションを得たのは、「ディオール」の3代目アーティスティック・ディレクターを約30年間務めたマルク・ボアン(Marc Bohan)のアーカイブ。中でも、1961年に発表された”スリムルック”コレクションに焦点を当てています。キーアイテムは、トラペーズラインのミニドレスやスカート、コート、コンパクトなシルエットのスーツ。ポップな単色やカラーブロッキングで、若々しい60’sスタイルを描きます。ボクシングショーツや襟付きのベースボールジャケット、ボウリングバッグはレトロスポーティーなムード。ギラギラ輝くドレスは、観客をディスコへと誘います。アクセントとしてウエアに乗せたトラやシマウマ、ワニなどの動物のモチーフは、「ディオール」のバッグやセラミックなどに用いられている“トワル ドゥ ジュイ”からの引用。伝統的な柄を大胆に拡大し、鮮やかな色と組み合わせることで、グラフィカルに表現しているのが印象的です。
色とりどりのアイテムを着たモデルがすごろくのマス目を一つずつ進む様子は視覚的に楽しいだけでなく、会場では服もじっくり見えて秀逸。ショーの規模からも、パリコレが本格的に復活したということを実感するコレクションでした。
20:00 SAINT LAURENT
「サンローラン(SAINT LAURENT)」が、パリコレに戻ってきました!!この1年間は、砂漠や氷河を舞台にしたショー映像でコレクションを発表してきたので、パリでのリアルショーは20年2月から1年半ぶり。前回取材したのは、新型コロナウイルスがちょうどヨーロッパで猛威をふるい始めた頃でした。会場はもちろん、セーヌ川を挟んでエッフェル塔の向かい側にあるトロカデロ庭園。オンタイムの20時になり、エッフェル塔がフラッシュを炊くようにきらめき出すと、会場中央にそびえ立つ巨大なメタルのセットも同様に点滅し、ショーのスタートです。
今季の出発点は、画家パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)の娘でもある、ジュエリーデザイナーのパロマ・ピカソ(Paloma Picasso)。かつては創業者イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)によるコレクションのアクセサリーを手掛け、「ティファニー(TIFFANY)」での長年の仕事でも知られています。そんなパロマからイメージを広げ、アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)が描いたのは、自分の道を生きる強い女性。今季も細身のシルエットを軸にしたシャープなスタイルを連打します。キーアイテムは、広く角張ったショルダーラインのテーラリングやドレス、そして生地を交差させたり結んだりしてドレープを効かせたスーパータイトなジャンプスーツ。ジャケットやシャツには、プラットフォームヒールのシューズを合わせたハイウエストのスリムなパンツや、レギンスのようなパンツをコーディネートし、縦長シルエットをさらに強調しています。
そこに加えるのは、パメラのスタイルにもつながるカラーストーンやゴールドを使った大ぶりのジュエリーや、大きなサングラス。華やかなスタイルが、80年代のムードを盛り上げます。クラッチバッグをウエストに挟むスタイリングも、彼女の昔の写真からヒントを得たものだそう。カーネーションやフラメンコの衣装に見られるようなドットは、彼女のルーツであるスペインのエッセンスを感じさせます。
終盤には、セットの上から滝のように水が流れ落ち、立ちのぼる霧は客席まで届くほど。ダイナミックな自然を使ったデジタル発表からのつながりも感じる、ドラマチックなショーでした。
ちなみに、今シーズンも目の当たりにしたのは、BLACKPINKの絶大な人気。「ディオール」にはJISOO(ジス)が、「サンローラン」にはROSE(ロゼ)が来場していました。彼女たちを一目見ようと、会場前にはファンが殺到!彼女たちの登場を待ち、名前を叫ぶコールが聞こえます。そして、到着したことが分かると、沸き上がるけたたましい歓声。この記事でも書かれていますが、その影響力は半端なさそうです。
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BLACKPINKのROSEの告知効果で視聴者増加 「サンローラン」21年春夏コレクション