「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」や「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」で経験を積んだ中島輝道(てるまさ)によるウィメンズブランド「テルマ(TELMA)」が、2022年春夏シーズンにデビューする。ファーストシーズンは“光”をイメージし、印象派の絵画などから着想した情緒的なムードを40型のウエアに盛り込んだ。アイテムは、ベーシックなウィメンズウエアをベースに、パターンワークや透明感のある素材、チェックや線香花火柄などのモチーフ使いで躍動感と軽やかさを加えている。価格帯はコート7万5000〜9万8000円、ジャケット6万4000〜7万8000円、シャツ3万3000〜6万3000円、ドレス4万9000〜12万5000円、パンツ3万9000〜4万9000円、スカート4万5000〜9万8000円など。
中島デザイナーは1981年生まれで、石川・金沢出身。2010年にアントワープ王立芸術学院(Royal Academy of Fine Arts in Antwerp)卒業後に「ドリス ヴァン ノッテン」に入社し、ドリスのアシスタントとしてウィメンズデザインを6シーズン手掛けた。帰国して14年にイッセイ ミヤケに入社後は、メンズとウィメンズ両方の企画に携わり、国内の技術や素材開発、独自のシルエット表現などを学んで、20年に独立した。自身のブランドではそれらのキャリアと真っ直ぐに向き合い、ドリスのもとで学んだ西洋のドレスアップの感覚と、イッセイ ミヤケで得た日本の素材開発の知見を両立させたクリエイションに挑んでいる。
「テルマ」の特徴は、マニアックなほどのテキスタイルへのこだわりと、人が装うことで生じる変化まで考えた丁寧さだ。素材の触感や質感は「着る人の動作や歩き方のクセをさらに引き立てるもの」という感覚で、人の動きからムードまでを思い描いて作り込んでいる。コレクションに使う素材の9割はオリジナルで、「ブランドを立ち上げる上で、環境への配慮は欠かせなかった」という思いから、再生繊維を用いたキュプラや、撚糸から手掛けた再生ポリエステルなど、環境に配慮した素材も積極的に使用している。次シーズンには、再生素材の使用率をコレクション全体の5割程度まで引き上げる予定だ。しかし、サステナビリティを付加価値とした“プロダクト”作りではなく、「着る人の日常を一歩進め、楽しくなる服を作りたい」という考えが根底にあり、ファッションの原点ともいえる“衝動”を大切にしている。和装の十二単からヒントを得たスカートは、ダイヤ型にレーザーカットした生地を12枚重ねてアーガイル柄を表現。品質へのこだわりから自身で開発した再生ポリエステルは、水を使わないカラーデニムとしてアレンジした。トレンチコートのディテールを応用したスカートは、生地をたっぷり使って大胆なドレープを演出するなど、思い切ったクリエイションも多い。「世間のファッションに対する価値観が昔と変化しても、やっぱり洋服は自分の心と向き合える、楽しいものであり続けてほしいから」と熱っぽく語り続ける姿から、ファッションに対する深い愛情と美意識へのこだわりが感じられた。
ファーストシーズンは、ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)やエディション(EDITION)、エストネーション(ESTNATION)、バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)などを含む11社での取り扱いが現時点で決まっている。