2022年春夏のファッションウイークは、いよいよパリへ。リアルとデジタルが入れ混じるコレクションがスタートしました。欧州駐在スタッフによるパリ現地からの生のリポートとともに、日本の編集部からもデジタルでパリコレに参加し、レビューをお届けします。
「ユマ ワン」の
“ソウルメイト”のように
安心できる服
「ユマ ワン(UMA WANG)」は2009年に中国で誕生し、11年にミラノ、17年からパリでコレクションを発表しているウィメンズブランド。布帛素材を使ったドレープやザラついたテクスチャー、中東やアジア、中世ヨーロッパなどに着想した独自のグラフィックが特徴です。
今シーズンのテーマは“プラトニック ラブ”。デザイナーのユマ・ワンは、「洋服はあなたを強くし、どんな状況でも快適に過ごせるようにサポートする“忠実な仲間”」と語り、「着る人のソウルメイトになるような」コレクションを目指しました。ウエアは、ルネサンス期の油絵に使われるようなフォレストグリーンやダスティピンク、ブラウンなどのアースカラーをベースに、大小異なるダイヤモンドチェックや壁画のようなグラフィック、荒く斑点の目立つテキスタイルに落とし込んでいきます。腰や肩周りがゆったりしたシルエットで、毎日着られそうなエフォートレスなアイテムが多めですが、大きくドレープした前身頃や目深なハットで上品さもキープ。プルオーバーのワンピースなのに襟はピークドラペルのようになっていたり、ロングシャツのネックは後ろ襟をくり抜いた実験的な作りだったりと、よく見ると遊び心もあります。安心感もありながら、毎日来ても飽きのこないクリエイション。たしかに、こんな洋服がクローゼットにあったら心強いですね。
「ゴシェール」は
“流動的で、鎧のような”
テーラード
ドイツ人デザイナーのマリー=クリスティーヌ・スタッツ(Marie-Christine Statz)が手掛ける「ゴシェール(GAUCHERE)」も、人と服の関係性を掘り下げたコレクションでした。クリエイションの出発点は、パリ・ガリエラ美術館(Palais Galliera)のディレクターであるミレン・アルザリュース(Miren Arzalluz)との会話。洋服を「流動的で、いんぺいされ、解放される鎧」と語る彼女のナレーションをBGMにして、同美術館の敷地や廊下、屋上で撮影した映像を披露しました。
ナレーションの通り、コレクションは軽やかになびくテーラードスタイルの連続。カッティングとドレープを駆使して生地を体に密着させたり、逆にゆとりをもたせたりと、カッチリしすぎないムードです。インナーは極細のチューブトップを合わせたり、背中をざっくりとくりぬいたりと、マスキュリンなムードの中で女性らしさも強調。ブラックやネイビーで重くなりそうなところに、宮殿のようなくすんだイエローやビビッドなグリーンも挟んで、ナチュラさとキャッチーさも加えました。「ユマ ワン」と同じく哲学的なクリエイションでしたが、ナレーションとウエアが合致し、よりメッセージが伝わってくるコレクションでした。ビビッドグリーンは本格的に流行りそうな予感です。