サステナブルなモノづくりとビジネスへシフトしたい、でも何から始めてよいかわからない。本連載はそんな迷えるアパレル企業の指針となるべく、サステナビリティ・シフトを進める先行企業の実践例や、最近シフトを始めて試行錯誤する企業の声や課題を集めた。これを読めば“できることから”の答は、今までやってきたことの中にあることがわかるだろう。第5回はファーストリテイリングだ。
ファーストリテイリングは、「ピープル(サプライチェーンの人権課題)」「プラネット(地球環境保護)」「コミュニティー(社会貢献)」を柱に、サステナビリティに取り組んできた。新田幸弘ファーストリテイリンググループ執行役員(サステナビリティ担当)は「ここ2、3年で、社会や市場からの期待が大きく変わった。従来のCSR部がサステナビリティ部に改編した時期から、お客さまや従業員、NGOなどと対話を重ねる中で、環境や人権に配慮したもの作りを本格化した」と振り返る。現在サステナビリティ部は、日本で約40人、世界20以上の国・地域で約100人のメンバーが在籍し、それぞれ「サプライチェーンの人権」「環境」「社会貢献」「情報開示」のカテゴリーに分かれて活動している。最近では、ビジネス部門がサステナビリティ戦略を兼務するケースも増え、ビジネスとサステナビリティを一体化した組織体制を整えている。
過去の人権に関する取り組みでは、国連女性機関と連携し、アジアの取引先縫製工場で働く女性を対象としたキャリア形成支援や、国際労働機関とのパートナーシップの下、インドネシアで労働者の社会保障と労働環境の整備を支援するとともに、同社が生産拠点を置くアジア7か国で労働市場と社会保障制度の調査を通じて労働者を取り巻く環境における課題の特定に取り組んだ。新田執行役員は、「安心・安全に働くことができるコンプライアンスは当たり前。それ以上に働く人のモチベーションやエンパワーメントにつながる活動に力を入れてきた」と話す。
欧米を中心にトレーサビリティーに関する法規制が厳しくなる今、主要工場リストの開示に加えて、「さらなる強靭なトレーサビリティーの確立」を目指す。そのためには、「自分たちがもの作りの現場を理解し、サプライヤーと顔の見える関係を構築することが重要」と考え、現地での監査と業界の共通ツールである「ヒグ・インデックス」などを組み合わせて独自の仕組み作りを進める考えだ。
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