REPORT
イタリアのホープは歴史あるブランドをどう変えたか?
「エムエスジーエム」も手掛けるマッシモ・ジョルジェッティ=クリエイティブ・ディレクターにより生まれ変わった「エミリオ・プッチ」が、就任後初のショーを行った。6月のピッティ・イマージネ・ウオモでは、パイロット版(見本版)のカプセルコレクションを披露したが、今季から本格的にスタート。従来の“セクシー&グラマラス”な女性像に大きな変化をもたらした。
会場は、コンクリート打ちっ放しの広々とした工場跡地。金の装飾で飾られた豪華な小部屋が連なるこれまでの会場とは大きく異なる空間を新たな舞台に選んだ。
「エピソード1」と題した今季、描いたのは海の世界。高級リゾート地として知られるカプリ島に1店舗目のブティックをオープンしたブランドにとって重要なアイデンティティーとも言えるテーマを、フレッシュな感覚で再解釈した。ただし、そこに風をはらむマキシドレスは一つもない。ジョルジェッティは「Ready to Wear. Easy to wear. Now.(今、着ることができる服。着やすい服)」をキーワードに掲げ、リゾートではなく、都会に住む女性に向けたワードローブを用意した。
ファーストルックは、アシンメトリーなノースリーブのニットトップスと全面にスパンコールを施したスカート。いくつも配したスリットは、アーカイブのデザインからヒントを得たものだ。その後は、チュールやシフォン、レース、ネットなど軽やかな素材とランダムなプリーツを施したアイテムのレイヤードスタイルを軸にコレクションを構成。刺しゅうやプリントで、魚や貝殻、サンゴ、ヒトデ、マーメイド、水鳥など多彩な海のモチーフを散りばめ、海の物語をつむいでいく。終盤に登場した“メカニック・フィッシュ”と呼ぶプリントはアーカイブから採用。また、パールをスカートのヘムやサンダルにあしらったり、ビーズワークで海の中を抽象的に描いたようなアイテムを仕立てたりとラグジュアリーなアプローチも見られる。
その一方で、コンテンポラリー・ブランドを成功に導いてきたジョルジェッティらしいアプローチと言えるのが、アイキャッチなロゴやエンブレム使いだ。プリントスカーフの端に施されてきた手描き風のロゴの一部である“Emilio”の文字は、ドレスやトップスにラインのように並べたり、サンダルのアッパーにのせたり。ブランドの本拠地フィレンツェの百合の紋章から着想した新しいエンブレムも、パイロット版に引き続きバッグの上に大胆にあしらった他、サンダルやチュールのトップス、ブルゾンの背面を飾った。