阪急阪神百貨店は8日、建て替え工事を進めてきた阪神梅田本店2期棟をオープンする。6日に店内を関係者に公開した。全10層のうち4フロア(地下2階〜地上1階、8階)を食品売り場やレストランなどが占め、「食」の百貨店としての魅力を前面に打ち出す。
大阪最大のターミナル駅である梅田駅に直結する同店。都心部の百貨店であれば店の“顔”となる1階をラグジュアリーブランドのフロアとすることがほとんどだが、この常識にはとらわれない。「(隣接する)阪急うめだ本店はモードファッションを集積した、いわば百貨店の王道。であれば、お客さまに本当に求められる阪神本店は日常の楽しさの追求だ。お客さまのニーズに立脚して、百貨店の常識にとらわれない館作りに取り組んだ」と山口俊比古社長。
「食の阪神」を象徴するのが、1階フロア中央に330平方メートルの規模で展開するエンタテイメント型の食体験スペース「食祭テラス」だ。「阪神からあげファン感謝祭」や「お好み焼きだよ!広島VS大阪」などユニークなテーマの催事を盛り込み、「熱量の高いファンのスモールマーケットを狙う仕掛けを盛り込んだ」(OMO販売推進部ディビジョンマネージャーの鈴木健三氏)。
食祭テラスをはさむように、嗜好性の高い食の売り場が散りばめられている。全国に存在する地元民だけが知るおやつを約700種類集積した「おやつテラス」や、2018年にオープンした1期棟で評判だったパンのセレクトショップを進化させた「パンテラス」、英国で110年以上愛されてきた紅茶ブランド「リントンズ」の世界初の常設店が登場する。
バラエティーに富んだ品ぞろえだけでなく、人の力でも誘客する。今回の建て替え開業にあたり、インスタなどの発信に力を入れる110人の社内スタッフを「ナビゲーター」として抜てき。地下2階食品売り場を担当する「おやつナビゲーター」の腰前和宣さんは「子供の頃からおやつが大好き。これまでもSNSでお客さまと接点を持ち、食べる楽しみだけでなく、作る楽しみも分かち合うことを意識してきた。工場見学でおやつ作りの裏側を学んだり、洋菓子店とコラボ商品を開発したりということにもチャレンジしていきたい」と話す。
そのほかの飲食フロアは、地下2階に女性ひとり客も狙った「バル横丁」とグルメゾーン、9階には8店舗の話題店が集積した「フードホール」と、食通も満足する名店がそろう「阪神大食堂」で構成。日本一のデパ地下をうたう地下1階は、さらにグレードアップした形で2022年春のグランドオープンをめざす。