生地の合同展示会などに通うようになって6年ほど経つが、当時はまだサステナブルを謳うメーカーなんてほとんどなかった。それが今では、合同展示会を訪れると8割くらいの出展企業がサステナブルをテーマにしているように感じる。中でも注目すべきは、天然素材、リサイクル素材、そして開発テック素材だ。
天然素材にはリネンやヘンプ、オーガニックコットン、バンブー、シルク、ウールなどあるが、注意しなくちゃならないのは、コットンだ。以前もコラムでお話ししたが、コットンの生産にまつわる労働環境問題を理解し、オーガニックコットンという選択肢を考えることはファッション界において重要なことだ。リネンやヘンプは、土に与える影響や性質上の農薬量などを考えたい。種類によっては、植えた場所の土をダメにしてしまう素材もある。一方ヘンプは害虫に強く成長が早いため、農薬の量も少なくて済み、大気中の二酸化炭素を大量に吸収してくれる。シルクやウールもサステナブルで素晴らしい素材だと思うが、養殖自体を好まない考えもしっかり受け止め、透明性の高い農園・牧場を選べるように「見える化」することが必要だ。
リサイクル資材は、例えば服から服をつくるサーキュラー・エコノミーを実現するブランド「ブリング(BRING)」が使う100%リサイクルのポリエステルは、まるでコットンのような肌触りで、気軽にサステナブルなオリジナルTシャツができる。旭化成の人工皮革「ラムース® 」は、リサイクル原料を使用、水系ポリウレタンを使用した環境配慮型の素材だ。東洋紡STCのポリエステル素材「エコールクラブ®」は、すでに白衣や制服などに使用されている。東レの回収循環型リサイクル「サイクリード®」のナイロン6タイプは、使用済みナイロン製品を回収、ケミカルリサイクルして繊維原料に再生している。なんとボタンやファスナーなどの副資材として再生されるポリエステルのリサイクルまである。
開発テック素材とは、生分解性繊維、つまり土に還る素材。いらなくなったら堆肥になり、コットンのような仕上がりのものからポリエステル生地まで幅広い。話題の人工クモの糸スパイバーや、飲食界で出る副産物を加工して作るアップルレザー、パイナップルレザー、「エルメス(HERMES)」も導入したきのこレザーまで、テクノロジーを駆使した素材がまさに次々と開発されている。
今回は私が注目しているサステナブル素材の数々をあげたが、世界にはまだまだ色々な未来を引っ張っていく素材がある。出合うたびに人間のケーパビリティ(能力)に感動させられるのだが、その使用方法と更なる循環をデザインするときは、既存の自然のサイクルを壊さないよう気をつけたい。というのが最近、私が個人的に気をつけているところだ。