デサントは、「デサント」ブランドで服の新しい価値観を提案するプロジェクト「デサントコネクト」を始動した。第1弾として「水沢ダウン」をベースに、1着を3つのユニットに分解できるダウンジャケットを開発。8月下旬から東京・代官山、高崎市、宇都宮市の3カ所で受注販売会を順次開いた。
水沢ダウンの人気モデルをベースにした“C01マウンテニア”。このダウンジャケットは、前身頃部分、後ろ身頃部分、肩部分の3つのユニットがファスナーで接続されている。これらを外したり、接続させたりすることで多様なスタイリングを楽しめるだけでなく、天候の変化にも対応して長いシーズン着用できる。また、今後展開するユニットに付け替えることで、異素材や違うデザインにカスタムすることも可能だ。家族や友人知人とユニットを交換して着る楽しみ方もある。価格は20万9000円と18万7000円。
「デサントコネクト」の基本的なコンセプトは、1着の服を長く愛用してもらうことだ。同社デザインディレクターの近藤敏雄氏は「服に『着る』以外の価値を与えられないか。その答えの一つとして企画した」と話す。新しい服を作って売って終わりではなく、その先の「コネクト(つながり)」までデザインしようと試みた。服づくりのキモである型紙をオープンソース化することで、他ブランドとの協業を促す。また「デサントコネクト」の服を持つユーザー同士のプラットフォームも作る。
きっかけは昨年春のコロナ禍での自粛生活だった。リアルな対面が避けられる中、人と人とのつながりの大切さを再認識する機運が高まっていた。社内チームからは服を通じた新しいコミュニケーションというアイデアが浮上し、ユニットで接続する服が企画された。
具体的な形に落とし込んだのは、バレーボール、サッカー、スキーなど数々の競技ウエアを手がけてきたパタンナーの神尾正史氏だった。今夏の東京五輪でもフェンシングやトライアスロンといった高度な技術が求められるウエアを担当した神尾氏は、「ファスナーでユニットを分割しながらも、動きやすい服を実現するのが難しかった」と振り返る。ファスナーの微妙な曲線もミリ単位で修正しながら作り上げた。同社の研究開発施設「ディスク大阪」でも実験と検証を重ねた。
第2弾のアクティブシェルジャケット、第3弾のサーモジャケットも来年の発表に向けて準備を進めている。