デニムブランドやメーカーが、商品開発にあたり、以前にも増してテキスタイルにこだわっている。高品質なテキスタイルへの需要に応えるだけでなく、新たなテキスタイルを提案しているのが生地メーカーだ。
トルコの大手デニム生地メーカー、オルタ・アナドール社もそのひとつで、アメリカ・カリフォルニアのロサンゼルス郊外に構えるショールームには、毎日のようにデザイナーがデニム生地のサンプルを借りに訪れる。元デニム・デザイナーで、ロサンゼルスで販売を担当しているオルタのクリスティーナ・ブロカートは、「サンプルは最高の販売ツールであり、ブランドを構成する重要な要素だ。魅力的なテキスタイルのサンプルを見せるのは、コレクションを開くようなもの」と話す。
ほかにも、これまで注目を浴びることのなかった生地メーカーが、ショールームのオープンや書籍の出版、セミナーの開催、ライセンス事業の開始と、表舞台に躍り出ている。
また、デザイナーが生地・繊維メーカーとコラボするケースも増えている。昨年は、「リーバイス」とウールマークが提携し、繊維にメリノウールと綿を用いた501の新作を発表した。「ディーゼル」のアーティスティック・ディレクター、ニコラ・フォルミケッティはコレクションにインビスタ社の商標、クールマックス技術を導入しジャージーのようなストレッチを実現した「ジョグ ジーンズ」を発売している。「セブン フォー オール マンカインド」は、「シャネル」も商品に用いるツイードを生産する生地メーカー、マリア・ケント社と3シーズンにわたりコラボした。次のコラボ相手はレースメーカーのソルティス社だ。
多くの消費者にとって、ジーンズを選ぶ基準は今でもフィット感だが、最近では生地に対する意識が高まっているようだ。ブランド側も、消費者にテキスタイルの素晴らしさを伝える努力を続けている。ニューヨークのデニムブランド「スリーバイワン」の、ニューヨーク・ソーホーの店舗では、来客は80種のセルヴィッジデニムのサンプルを自由に手に取ることができる。同ブランドのデザイナーでもあるスコット・モリスン社長は、「消費者にわかるのはリカバリーやストレッチの具合、クオリティが高いかなど、はいてみた時の感覚だが、最近では見た目が良いのは素材が良いからということを理解し始めている」と話す。
また、カナダの「シルバー ジーンズ」では、自社のすべての生地に名前をつけるとともに、柔らかさとストレッチ性の度合別に仕分けを始め、消費者が好みによって様々なテキスタイルを選ぶことのできる環境を整えた。