毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2021年10月11日号からの抜粋です)
村上:6月のメンズ・コレクションのあたりから、デザイナーの「希望を語りたい!」というムードを感じていて。だから今シーズンは、希望や未来の表現に敏感になろうと話していた。実際フタを開けてみたら、ニューヨークは思わず笑みがあふれるくらい“希望”一色だったね。
藪野:確かにそうでしたね(笑)。僕がミラノとパリの取材で体感したのは「世界が再び動き出した」ということ。もはや、新しい時代が訪れていると感じました。
村上:うんうん。特に印象に残ったのは?
藪野:パリ最終日の「AZファクトリー(AZ FACTORY)」は、“LOVE BRINGS LOVE(愛が愛を呼ぶ)”というタイトル通り、アルベール・エルバス(Alber Elbaz)への愛を実感しました。コロナで亡くなったエルバスのために名だたるデザイナーが連帯して作り上げたコレクションを皆が見守るという、まさに今季を象徴するイベントでした。
村上:僕がデジタル取材で“今”を感じたのは、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」の「ザ・シンプソンズ(THE SIMPSONS)」とのコラボ動画。あのアニメの世界観の中で「こういう風にファッションが消費されたらいいのに」という夢と、ファッションを生活者のために民主化する「バレンシアガ」の想いがちゃんと表現されていて、すごく良くできていた。字幕付きで、発音も聞き取りやすかったので、英語の勉強にも最適(笑)。
藪野:「バレンシアガ」は、「上映会」と題したパリの劇場でのイベントも、さすがデムナ・ヴァザリア(DEMNA GVASALIA)というアイデアでした。ゲストがレッドカーペットで撮影されている中にモデルが混じっていたり、会場内のスクリーンに流れるその様子が実はショーだったり。9月のメットガラでも衣装が話題を集めていましたし、実はあれも壮大なプロジェクトの一部だったのでは?と考えましたね。
村上:今シーズンのパリはデジタル発表もありつつ、東京で発表したり、パリコレには戻ってこなかったり、2022年春夏じゃないブランドもあったり、一番バリエーションに富んでいたと思う。正直これでいいし、これが一番楽しいのかも。
藪野:僕も今回のパリは、久々に人と会って話し合ったり、コレクションについて深く考えたりする余裕もあってヘルシーだと思いました。これもリアルの醍醐味だったと思います。