企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回は決算書ではなく、経産省による報告書のデータから、市場動向を読み解く。(この記事はWWDジャパン2021年10月11日号からの抜粋です)
今回は経産省が7月30日に発表した電子商取引(Eコマース)に関する報告書のデータから、実店舗およびECの市場規模の変化についての気付きをお話しします。
まず最初に2020年の物販系分野のBtoCのEC市場規模は、前年比21.7%増の12兆2333億円でした。この大幅な伸びの要因の1つは、外出自粛で旅行やチケット販売を含むサービス系分野(同36.5%減の4兆5832億円)や外食需要が大きく落ち込んだ分が、巣ごもり対応の物販市場に流入した結果と考えられます。
では、その物販の中身を見てみましょう(上表)。衣類、服飾雑貨は同16.3%増の2兆2203億円。市場規模は19年では最大でした。しか
し、20年は家電に抜かれ、食品や生活雑貨に迫られていますね。こうした消費者の購買行動の変化を示す統計データは、アパレルだけでなく、その周辺マーケットも知ることができます。
また、このEC化率から計算していくと、実店舗の動きも知ることができます。EC売り上げを構成比で割れば、ECを含むマーケット全体が出ます。そこからEC売り上げを引けば、ほぼ店舗売り上げと言ってよい金額が算出できるわけです。
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