ファッション

「コーチ」がカバンの大量廃棄疑惑でTikTokで炎上 ことの真相は?

 10月9日、破損した状態で廃棄された「コーチ(COACH)」のアイテムを写した動画がティックトック(TikTok)に投稿され、サステナビリティの観点から同ブランドに説明を求める声が集まっている。

 発端となった動画は、ニューヨークを拠点とする自称“ゴミ収集”インフルエンサーで廃棄問題コンサルタントのアナ・サックス(Anna Sacks)が投稿したもの。サックスはテキサス州のダンプスターダイバー(ごみを漁る人)から廃棄された「コーチ」のバッグなどを買い取り、動画の中で「同ブランドが運営する「“サステナブルな修理サービス”に持っていってみようと思う」と話す。商品の破損部分を見せながら、「大きなナイフで切ったような、この傷が見えますか?これは『コーチ』の方針で、わざと使えないようにするために売れなかったアイテムにダメージを加えています。そうすることで、偶然壊れてしまった商品のように扱い、税金同様に損金処理ができるんです」と説明する。

 「コーチ」は以前から提供している修理サービスや、4月に開始した「リラブドプログラム((Re)Loved Program)」を通して、商品を長く使えるようなサービスの提供に力を入れている。同プログラムでは、使用済みの「コーチ」のバッグを持ち込むと、修理やリメイク加工をし、店頭で再販売することで製品の循環性を高めている。このように製品に“第二の人生”を与えることに力を入れているブランドが、動画で見られるように廃棄しているとしたら、それは矛盾した行為なのではないかという批判のコメントが寄せられている。

 米「WWD」の電話インタビューに応えたジュン・シルバースタイン(Joon Silverstein)サステナビリティ・デジタル部門グローバルヘッドは、「当社は廃棄物の削減をとても重要な取り組みと捉えている。商品の破損や欠陥については、さまざまな方面に気を配りながら取り組んでいたので、今こういった投稿が表に出たことはとても残念だ。『リラブド プログラム』はお客さまからもいい反応がある。発売するたびに数日のうちに完売するほどだ。われわれはどんな状態のアイテムであっても、リサイクルや修理に真剣に取り組んでいる」とコメント。

 コロンビア大学のサステナビリティ学部の調査によると、売れ残った衣服やバッグの85%以上は最終的に埋立地で処分されているという。「コーチ」も顧客とともに「この現状を変えていきたい」という。ブランドはレザーアイテムの保証制度や顧客向けの循環型経済促進プログラムなどはあるが、現状は埋め立てを伴う廃棄問題は依然として残っている。

 「コーチ」を含む多くのブランドは埋め立てへのゼロ・トレランス(小さな問題も見逃さない)方針は掲げていない。一方で、サックスが言うような「大規模で“意図的”な破損は行っていない」と主張する。シルバースタイン=グローバルヘッドは「店舗で破損された製品の量は、グローバルな売り上げの1%未満に相当する。すでに実店舗の40%以上では、このような破損行為は廃止している」と話す。

 ティックトックで今回の動画が拡散されたことから分かるのは、リサイクルや修理のニーズの高さや、より良い企業体制を望む生活者の声だ。意識が高まっている消費者の間では、廃棄物の量ではなく、そもそも廃棄物が存在するという事実が懸念されており、より良いアプローチが求められている。「スワロフスキー(SWAROVSKI)」や「バーバリー(BURBERRY)」などの在庫問題の解消に取り組むことで知られるデザイナーのパトリック・マクダウェル(Patrick McDowell)は、「この問題はファッション業界の過剰生産問題を広く考え直すきっかけになるだろう」と観察。

 ブルックリンを拠点とし“ゼロ廃棄”を掲げるブランドを運営するダニエル・シルバースタイン(Daniel Silverstein)もまた「大手上場企業の多くにとって、利益の追求は必須だ。アパレル商品やアクセサリーで利益を立てているので、モノを出さないのは難しい。それでも、廃棄の削減に取り組み、消費者との関係性を再構築することは重要だ」と語った。

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