セイコーウオッチ傘下の最上位ブランド「グランドセイコー(GRAND SEIKO)」は、2022年3月30日から4月5日の予定でスイスで行われる世界最大の時計見本市「ウオッチ&ワンダー ジュネーブ(WATCHES & WONDERS GENEVA)」に初めて出展する。同見本市にはコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)やLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)、ケリング(KERING)傘下の40以上のブランドが参加する
セイコーウオッチ広報によると、「参加は見本市側からのオファーによるもの」だという。それを裏付ける数字がある。スイス時計協会が発表した20年の輸出額ランキングで中国に続く巨大市場であるアメリカにおいて、「グランドセイコー」は「ロレックス(ROLEX)」「オメガ(OMEGA)」に次ぐ第3位の人気を博しているという。現地での中心価格帯は、日本と同程度の5000~7000ドル(約56万〜78万円)だ。
なお、21年4月にセイコーウオッチの社長に就任した内藤昭男氏は、16年から20年までセイコーアメリカの社長を務め、「グランドセイコー」のアメリカでの成功をけん引した人物だ。その内藤社長が次のターゲットとしているのが、時計の聖地スイスを含むヨーロッパというわけだ。足掛かりとして、宝飾・時計の名門ブランドが集うパリのヴァンドーム広場に直営店をオープンしたのは20年のこと。
すでにヨーロッパの時計コレクターやジャーナリストは「グランドセイコー」の価値を認めているが、アメリカのような知名度はまだない。「ウオッチ&ワンダー ジュネーブ」への出展は、これを打破しようとする明確な意思表示だ。コロナ禍の20年に発表した最新型ムーブメント“9SA5”が業界内で高い評価を得ており、同見本市であらためての披露となる予定だ。
「グランドセイコー」の初代モデルが誕生したのは1960年。2010年には、本格的に世界戦略をスタートした。そして、17年にセイコーウオッチは「グランドセイコー」を独立ブランド化する。
一方で、こんな歴史も紹介しておきたい。セイコーウオッチは1960年代、世界各地に現地法人を設立し、海外展開を積極的に行った。79年には、薄型ムーブメントで知られたスイスの時計ブランド「ジャン・ラサール(JEAN LASSALE)」の販売部門を買収。85年からは国内でも販売した。しかし2000年前後に清算した経緯もあり、ヨーロッパでのビジネスはまだ小さい。