ファーストリテイリングの2021年8月期連結業績(国際会計基準)は、売上高にあたる売上収益が前期比6.2%増の2兆1329億円、営業利益が同66.7%増の2490億円、純利益が同88.0%増の1698億円だった。国内ユニクロは6月以降、コロナの再拡大や天候不順に苦しんだが、通期では利益が過去最高を記録。また、中国本土や香港、台湾などで構成するグレーターチャイナでは、売上収益、利益共に過去最高となった。
「(コロナの感染状況が各国で異なる中で、一国だけでなく)グローバルで商売をしてきたことが生かされた」と柳井正会長兼社長。22年8月期は売上収益が同3.1%増の2兆2000億円、営業利益は同8.4%増の2700億円の見込み。国内ユニクロの収益構造改革や各国のEC強化、欧州を中心とした積極出店(23年8月期以降)に向けた準備などに力を入れる。
国内ユニクロ事業の21年8月期は、既存店売上高が同3.6%増。6月以降は値引きによる在庫処理を余儀なくされたが、それまでは値引きは抑制でき、EC関連の物流費効率化なども進んで利益面に貢献した。ただし、22年8月期は国内ユニクロ事業は「減収減益で業績は一時的に低迷する」(岡崎健取締役グループ上席執行役員CFO)想定。「事業構造改革の年」と位置づけ、客の声を起点とする企画・生産・販売の仕組み作り(=有明プロジェクト)をいっそう徹底し、品番の絞り込みや在庫の適正化を進める。
海外ユニクロはグレーターチャイナの好調に加え、北米の赤字幅が「大幅に縮小」。今後は「黒字体質へ転換できる」と期待する。不採算店の閉鎖などが進んだ効果によるもの。欧州も同様に、コロナ禍によって収益構造の変革が進み、「大幅増収、黒字を達成」した。
今年9月には仏・パリのリヴォリ通りに出店し、11月には北京・三里屯、22年春には英ロンドンのリージェントストリートの店舗を移転増床オープンするなど、各国で新店出店やスクラップ&ビルドを進めている。23年8月期以降、特に欧州で積極出店を目指しており、今期はその準備に充てる。
21年8月期はグローバルな店舗展開が業績に貢献したが、今後はユニクロだけでないブランドの多軸化や、収益の柱の多様化もポイントの一つ。ただし、ユニクロに続くジーユー事業の21年8月期は売上収益が同1.4%増の2494億円、営業利益が同7.6%減の201億円と奮わず。22年8月期も生産遅延の影響などで「若干の減収、営業利益は前年並み」を見込む。一方で、21年8月期に黒字化したセオリー事業は、価格見直しなどで22年8月期は「大幅な増収増益」を見込む。