ファッション

バーチャルなアパレルサンプルの“本物化”を強力プッシュ、スタイレムが服地の高画質画像のデータベースを外部提供

 服地卸最大手のスタイレム瀧定大阪(以下、スタイレム)は来春をメドに、アパレルの3Dグラフィックに使用可能なテキスタイルの高画質データの外部提供を開始する。大手商社や一部のデザイナーブランド、D2Cブランドはアパレル3DCADソフトの「CLO3D」などで作成し、ECサイトなどに掲載し、先行受注などに活用したり、ODM(相手先ブランドの企画生産)などを行う事が増えている。ただ、3DCADソフトで作成したバーチャルウエアは、テキスタイルのテクスチャー(表情)表現力に弱く、本物のウエアと見劣りするという弱点があった。スタイレムが提供するテキスタイルの高画質データを使用すれば、本物そっくりのウエアのバーチャルサンプルを作成できる上、画像は同社がフィジカルに在庫するテキスタイルと連動しており、バーチャルサンプルと同じアイテムをリアルに生産できることになる。

 スタイレムは、トレンドに左右されるリスクの高い婦人服地をあらかじめストックして販売するビジネスモデルが特徴。1年前から5000品番、色柄などを含めると10万SKUに及ぶテキスタイルを、テキスタイル専用のスキャン機「エックステックス(xTex)」で取り込み、「CLO3D」や「ブラウズウエア」などの3DCADソフトで使えるようにデータベース化してきた。10月にはスタートアップ企業のグッドバイブスオンリー(GVO)と資本提携し、同社が来春スタートするアパレル専用の3Dグラフィックプラットフォームと連携することを発表している。スタイレムの谷田修一専務は「当社が画像を外部に提供することで、バーチャルサンプルを使ったODMがより普及することになる。すでに大手の繊維商社数社とも水面下で連携を進めている。ただ、外部へのデータ提供は大手企業だけとは考えていない。資本力が豊富でない中小規模の企画会社やファッションブランドでも、3DCADを使ったバーチャルサンプルを作成し、当社のテキスタイルデータと合成すれば、ODMやECを通じた先行受注などにも活用できる」と語る。

 定番素材だけでなく、トレンド性の強いテキスタイルを、同社レベルで幅広く在庫して販売する企業は世界的にも珍しい。3Dのバーチャルサンプルとの連携で、バーチャルサンプルを軸にした新しいアパレルビジネスが日本で一気に加速する可能性がある。

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